「スキン・コレクター」ジェフリー・ディーヴァー

 皮膚。
 皮膚は細菌の侵入を防ぎ、過剰な熱や冷たさをいち早く警告すると同時に、それらから持ち主を守る。
 伝染病や外敵もはねのける。生命の維持に不可欠な物質、水を保持している。
 生きるのに必要な光を吸収し、ビタミンDを生成することまでやってのける。
 見上げた働き者ではないか。
 そして、それはビリーのキャンパスでもある。ビリーはその皮膚に魅了されている。
 ビリーは誰かの皮膚に自らの作品を刻む。


 えー、車椅子の天才科学捜査官リンカーン・ライムシリーズ第11作目ですね。
 スキン・コレクター。いかにも、おどろおどろしい。どうせ被害者は皮膚を剥がされたり・・・(´-﹏-`;)
 とかするのかなあ、と思いきや、タトゥーを彫られるのです。
 ただし、タトゥーマシンのインクの代わりに毒物を体に刻み込まれるという・・・
 しかもその毒物はシクトキシンや濃縮ニコチンなど致死性の猛毒ばかり。
 そして、リンカーン・ライムシリーズの第一作は「ボーン・コレクター」という作品でしたが、本作の真犯人ですね、ここでは「未詳」という言い方をされていますが、彼はひょっとしたら10年前にニューヨークを震撼させた猟奇殺人鬼ボーン・コレクターに心酔しているかもしれないという設定。
 なぜそんなことがわかったかというと、どうやら未詳はボーン・コレクター事件を書いたルポタージュを熟読していたようなのです。つまり、リンカーン・ライムの科学捜査の手法を研究しており、ほとんど現場に証拠を残しません。
 誠に厄介な強敵。
 なぜ、この「未詳」は他人に毒物入りのタトゥーを彫って死に至らしめるのか?
 実は彼は、そのタトゥーにメッセージを残していました。
 そこから浮かび上がる、彼の真の目的とは・・・
 「改造計画」(モディフィケーション)によって、ニューヨーク壊滅!?

 表向きはこんなところですが、実は裏、裏、裏とあって、終盤のどんでん返しもただ裏返るだけでなく七転八倒ですから、もう、あらすじなんていう生易しいものは語っておれません。
 「ああ、これで解決かあ」と思いきや、左手に残された残ページのボリュームが半端なく、予断を許さないという。
 あとの数十ページで何が起きるのか? 乞うご期待ですよ。
 まあ、だいぶこの作家のやり方にも慣れつつあるので、このまま終わらんだろとは予想がつき、ビリーの正体も疑わしい人物の範疇内であったにせよ、とっておきをだしてきましたから、それがね、想定外。
 とっておきの想定外。そう、リンカーン・ライムの生涯の敵「ウォッチメイカー」ですよ。
 ウォッチメイカーことリチャード・ローガンは死にました。
 本書の冒頭で触れられていますが、収監されている刑務所内で心臓発作を起こし、あっけなく亡くなりました。
 ライムは謎を残したまま逝ったウォッチメイカーの背後関係を追うため、葬式にプラスキーを潜入捜査官として派遣します。
 当初、本筋であるスキンコレクターの話とは、別枠で進んでいくかと思われたこの「おとり捜査」ですが、違いました。
 さらにはロン・セリットーが捜査していたメトロポリタン美術館潜入事件や、「ボーン・コレクター」事件の背後関係までが、一気に絡んでくるのです。
 パム・ウィロビーも19歳の女子学生となって、久々に登場。大危機に陥ります。
 しかしまあ、ということはアメリア・サックスは、もう30代後半なのかな?
 前作「ゴースト・スナイパー」のラストで、苦しんでいた関節痛の手術を終えたアメリアは動き軽快で、頼もしいです。
 
 面白かったですが、期待しすぎたからでしょうか、思ったより中途半端な物語でした。
 どちらかというと、楽しかったのは「アクション」でしたね。
 タトゥーの謎解きとか、ミステリー部分の出来は平凡であったように思います。
 チャールズ・ヴェスパシアン・ヘイルを脱獄させたことだけしか、意味がなかったような気がしました。
 展開の仕方も、マンネリしつつあります。


 
 
 
 

 
 
 
 
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「ゴースト・スナイパー」ジェフリー・ディーヴァー

 「スキンコレクター」が評判がよかったので読もうと思ったんですが、一作飛んでいることに気づきました。
 それほど、私にとってリンカーン・ライムシリーズ、ジェフリー・ディーヴァーは久しぶりだったということです。
 もうひとつの西海岸のほう、誰だっけキャサリン・ダンスだっけ? あっちも一作か二作飛んでいます。
 それでも西海岸のほうは登場人物がほぼ記憶から去っていますが、ライムのほうはほとんど覚えています。
 それだけ、身にしみているといいますか、脳に刻まれるほど作品の衝撃が大きいということです。
 まあ、だいぶマンネリだとは思うし、展開も慣れてきたんですけどね。
 それでも面白い。ですから「スキンコレクター」はやく読みたかったのですが、その前に、ライムシリーズ第十作である本作「ゴースト・スナイパー」を読まねばなりませんでした。
 シリーズを飛ばすわけにはいかないでしょ、やはり。
 しかし、半ば義務のように読み始めた本作ですが、期待が薄かったぶん、逆に面白かったように思います。
 テーマもタイムリーといいますか、時事的でしたし、思いつかないアイディアが下敷きにありましたね。
 最近の殺人は、現場に人がいなくてもできるんですからね。
 もちろん人にやらすのではありません、直接己の意志で銃弾を撃ち込むのです。
 今回のサブジェクトはそれです。

 簡単にあらすじ。
 ニューヨーク市警やFBIの捜査コンサルタントをしている四肢麻痺の科学捜査官リンカーン・ライム。
 今回は彼のもとに“極秘”でふたりの人物が訪れた。
 ひとりはニューヨーク市警特捜部部長のビル・マイヤーズ、もうひとりはニューヨーク州地方検事補の女性検事であるナンス・ローレル。
 ライムの協力を仰ぐべくふたりが持ち込んだ事件は、中米バハマの高級リゾートホテルでアメリカ市民が射殺された事件だった。被害者のアメリカン人男性は反米活動家で、バハマ警察は麻薬カルテルの仕業と見解を発表している。
 しかし、ナンス・ローレルはまったく違った見方をしていた。
 この反米活動家は、9・11同時多発テロのあとに主に標的殺害を目的として設立されたNIOS(国家諜報運用局)に暗殺されたというのだ。しかも、反米活動家の行動は平和的なものでテロなどに関与していたはずがなく、何らかの情報の齟齬あるいは恣意的な殺人であり、NIOSの勇み足である可能性が高い。NIOS長官のシュリーヴ・メツガーはたびたび癇癪を起こす問題のある人物だ。ローレルは、この事件をテロ抑止という国家保安活動ではなく、連邦政府高官による殺人事件とみて捜査を始めたのだ。
 実は、ローレルはNIOSの内部告発者がリークした特殊任務命令書(殺人許可書)を持っていた。
 漏れれば確実に潰される、だから、極秘に彼女はライムのラボ兼自宅にやってきたのだ。
 2千メートルの距離の銃撃を成功させた凄腕のスナイパー。
 殺人の他にも誘拐や贈賄など過激な作戦活動を行うNIOSの実態を明らかにした告発者。
 闇に潜む彼らの正体とは?
 そして、捜査の前には、様々な障害と妨害が現れる。
 事件に関与する証人が次々に殺され、やがてはサックスやローレル自身も命を狙われる・・・
 シリーズ初の海外出張となったリンカーン・ライムは、複雑で危険な事件の真相を暴くことができるのか。

 現場がバハマ(フロリダとキューバとの間にある島国)ですから、現場鑑識ができません。
 しかも、王立バハマ警察はろくに仕事しない。
 どうするのかと思って読んでたら、ライムが車椅子に乗って直にバハマに行ってしまいました(笑)
 まあ、死にかけるんですけどね。
 プラスキーが、もうルーキーなんて呼ばせないという活躍を作品通して見せていました。
 彼はいつのまにか、このシリーズに欠かせない存在になりましたね。
 「スキンコレクター」の前座のつもりで読みましたが、なかなか。
 少なくとも前作の「バーニング・ワイヤー」よりは面白かったと思います。
 考えてみれば、高度な無人偵察機でなくとも、ドローンで殺人ができるんですからね。
 アリバイが有耶無耶になる社会が到来しているのです。
 ドローンで遠隔操作しながら銃撃したら、どうやって捕まえるのでしょうか。恐ろしいです。


 
 
 

「世界の終わりの七日間」ベン・H・ウィンタース

 なるほど、こうなるか。
 100%小惑星が地球に衝突することが確定した世界で、事件を捜査する男を描いた「最後の刑事」シリーズ第三弾。
 最終作です。
 なんとも味のある締め方。これ以上はないだろうな。
 読みにくいし、具体的な事件もあまり興味惹かれず、それほど面白くはなかったと思うこのシリーズなのですが、どうして最後まで読んだかというと、「結局、地球はどうなるのか、隕石は衝突するのか」という最大の謎に引っ張られてきたわけです。
 ですから、この終わり方に肩透かしを食らったように感じても不思議ではないのですが、余韻に浸ってよく考えてみると、これ以外ではしっくりこないということがわかります。ほんの少しですが、ヒントも書かれているように思いますしね。
 よかったんじゃないかな。シリーズ全体の雰囲気が最後の最後まで統一されています。
 最後良ければすべてよし、ですよ。
 もちろん、ヘンリーにとっては何もかも最悪となったわけですが・・・
 最愛のものを失い、これだけ怪我をしてボロボロになり、彼にいったい何が残っているというのですか。
 静かに、燃え尽きさせてあげたいと思いました。

 あらすじ。
 一作目の「地上最後の刑事」が小惑星衝突まで約半年前、二作目の「カウントダウン・シティ」が約2ヶ月前、そして本作では、タイトル通り1週間前となっています。
 直径6・5キロの小惑星2011GV通称マイアは、1週間後の10月3日に、インドネシア付近に落ちます。
 このショックを生き抜いても、かつての恐竜が絶滅したように、いずれ気候の激変によって人類も滅亡すると云われています。
 あらゆるインフラはストップしました。インターネットも電話も機能していません。
 無秩序に崩壊して無法地帯と化した街。地下に潜る政府。
 人々は「死ぬまでにやりたいことリスト」に従って出ていき、自殺し、誰もこれまでと同じ人間ではいられなくなっています。
 そんな中、事件に対する警察の捜査は行われていません。意味がないからです。
 しかし、どんなときでも事件は起きます。それを生真面目に捜査してきたのが、元刑事の我らがヘンリー・パレス。
 前作のラストで、「警察のいえ」と呼ばれる気の合う警官仲間が集まったマサチューセッツにある隠れ家に避難したヘンリー。しかし、本作の冒頭では、彼はその楽園から出て、1360キロに渡る過酷な自転車旅行をしています。
 犬のフーディーニと、元泥棒のコルテスと一緒に。
 なぜか? それは唯一の肉親である妹のニコを探すためでした。
 ニコは、マイアの地球衝突を回避するという奇想天外な計画をする過激な地下活動グループの一員でした。
 ヘンリーは、彼女の仲間だった女性からニコの潜伏している場所を聞き出すことに成功します。
 そして・・・マコネルの制止も聞かず、はるばる5週間旅をしてオハイオ州までやってきたのです。
 その場所、オハイオ州の小さな警察署には、地下に何らかの施設を作った跡がありました。
 ニコはそこに潜伏しているのか、はたして兄妹は再会できるのでしょうか・・・
 ヘンリーの最後の闘い、そして冒険、推理がスタートするのです。

 はい。
 前作、ヘンリーを救いにニコがヘリコプターで来た理由(なぜヘリが動員できたのか)も明らかになります。
 彼らの活動の真相が、すべてわかりますね。悲しいことですが・・・
 それにしても、本作にまでナオミ・エデスの名前が出てきたことに驚きます。
 それほどまでに、一夜だけしか共にしていない女性のことを、ヘンリーは愛していたのですね。
 もちろん、暴走する妹も。
 しかし、思わぬ結果になりました。
 最後に、どうして彼がアーミッシュの一族のもとに戻ったのか。
 もちろん、工作機械を返却することも、フーディーニがいたことも理由にはなるでしょう。
 しかし一番の理由、それは、マイア衝突という確定した未来を、彼らが知らなかったためではないでしょうか。
 何もかもが変わってしまったアメリカで、それまでの世界とまったく変わらない生活を続けていたアーミッシュ。
 そんな彼らのもとで、最後を過ごしたかったのではないでしょうかね。
 続編はないでしょうが、ひとつ、個人的な想像を言わせてもらえれば、ラストのところ、「空中で光った」みたいに書かれていますよね。インドネシアに落ちる隕石がアメリカから見えるのでしょうか。
 比喩じゃなければ、ひょっとすると、人類は何かを撃ったのかもしれません。
 
 地球が滅亡すると決まったら、私だったら、どうするだろうねえ。
 生きる努力をすると思います。とにかく、酒と本の確保が大事かな・・・



 
 
 
 

「カウントダウン・シティ」ベン・H・ウィンタース

 前作「地上最後の刑事」の続編で、三部作の二作目になります。
 前作もそうでしたが、本作も“異常な背景”のもとに、捜査的なミステリーが展開することが特徴となっています。
 異常な背景とは、あと数ヶ月で小惑星が地球に衝突し、人類が滅亡することです。
 ほんと、反則みたいな小説でしてね(笑)
 どうせ死ぬことが決まっているのに、殺人や失踪人の捜査が必要なのかという。
 いや、実はそこに、この小説を読ませる力みたいなものがあるのです。
 あくまでも個人的な印象ですが、はっきり言って、前作は眠たかった。
 アメリカで有名な賞をとったといっても、面白いか面白くないかに関係ないからねえ。
 ですから、これが「普通の状態」の小説ならば、続編は読んでいなかったと思います。
 じゃあ、なぜ読んだのか?
 本当に地球に小惑星が衝突するのか、終末が近づくにつれ世界はどうなるのか、それが無性に気になったからです。
 まったく見当がつきません。
 なんだか、すごく感動するような気もしますし。
 ですから、この小説はSF的な背景をとりながらもれっきとしたミステリー小説だと思っていますが、私が惹かれたのは、あくまでも本筋と違うSF的な部分ということになります。
 まあ、どっちが本筋であったのかは、次の最終作で明らかになりますね。

 前作からの引き継ぎと、本作のあらすじ。
 前作の保険会社経理士殺人事件の捜査後、「もはや捜査部門がいらない」と警察を解雇されたヘンリー・パレス。
 そりゃ、そうだわな。
 本作のスタートは7月18日ですが、小惑星マイアが地球に衝突するのが10月3日ですから、80日を切っています。
 人類がおそらく滅亡するのに、事件の捜査など意味がないのは当然でしょう。
 警察は警備部門だけになり、いまやそれさえ、終末を迎えた世の中の社会にはまったく無力に成り果てています。
 大勢の人々が、死ぬまでにやりたいことリストのために出かけていきます。
 通貨に価値はなく、ガソリンも食料品も簡単には手に入らず、麻薬が蔓延し、新種の狂気として新興宗教が爆発的に流行しています。小惑星が落下するとされるアジアからは大勢のボートピープル難民が押し寄せ、ヘンリーの妹のニコのように、反小惑星陰謀運動という、怪しげなコミュニュティの活動に生きがいを求める若者もいるのです。そんな中・・・
 両親を失くしたヘンリーとニコの面倒を見てくれた古い知り合いであるマーサ・ミラノから、ヘンリーは頼まれごとをされました。
 失踪した夫を捜索してほしい、というのです。
 現在の状況では、様々な障害があって行方不明者の捜索など著しく困難であることは当然です。
 なんせ警察が機能していませんからね。
 しかし妻のマーサを置いて出て行ったブレットという元警察官の「失踪の目的」に多少なりとも興味を持ったヘンリーは、できるだけのことはすると、マーサに約束しました。
 本当に変わってるなあ、ヘンリーは。ナオミが死んでしまった心の空白を埋めるためというのもあるのでしょうが・・・
 ヘンリーの懸命の捜索が始まります。
 それはティーンエイジャーが大学を乗っ取ってユートピア共同体を作り上げたニューハンプシャー自由共和国への潜入など、危険な冒険となりましたが、ブレットの所在をつかむことに成功するのです。しかし、単純な失踪者捜索事件は、やがて足元で崩れ、まったく別の方向へと形を失っていくのです。

 ピンときたこと。
 ヘンリーはスーツ姿です。ジャージでもいいよね。あるいは危険だからコンバットスーツとか。
 ネクタイを締めたスーツ姿。これこそ彼の有り様の暗示でしょうね。
 地球の滅亡如何に関係なく、俺の人生は俺の人生だという。
 もっとも、そのネクタイが彼の命を救ったわけですが・・・
 かわいいメンバー追加。
 ビションフリーゼのフーディーニ。とってもかわいいワンちゃん。大活躍しましたし、重苦しい展開の中にあって閑話休題的なオアシスとなりました。
 次作の最終作は、どうやら衝突まであと数日の時点で始まるようです。
 マコネルに助けられて“警察のいえ”という隠れ家的な共同体に逃げ込んだヘンリー。
 ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、あるいは他になにかあるのか、まったく想像がつきません。
 たぶん、最後はニコかなあ。


 
 
 

「地上最後の刑事」ベン・H・ウィンタース

 小惑星の衝突により6ヶ月後に壊滅的被害を受けることが確定している地球を舞台にしたミステリー小説。
 3部作のうちの第1作。
 一風変わっていますが、背景はともかくとして、殺人事件を追う刑事が主役の正統派ミステリーです。
 結果的には、地球の定まった運命は、ミステリーの真相にそれほど関係ありません。

 簡単に展開。
 まず、物語スタート時の地球は、6ヶ月と11日後の10月3日(年は不明)に、直径6・5キロメートルの小惑星の衝突が100%確定しています。ヒロシマ級原爆千個に匹敵する爆発が起きて、マグニチュードで測りきれないような地震を引き起こして、そびえたつほど高い津波が発生します。そのあと、粉塵と暗闇が訪れて、地球全体で気温が20度ほど一気に下がり、人類は全滅すると言われています。
 舞台は、アメリカニューハンプシャー州の中規模都市コンコード。
 例外に漏れず、この街も自殺者が相次いでいます。
 政府は衝突準備安全確保安定法を成立させて、治安の維持に努めていますが、あらゆる種類の麻薬は需要が急激に増加し、死ぬまでにやりたいリストにとりかかるために多くの人々は会社を去っています。おかげで、IT企業や携帯電話会社は保全をする人材が足りず、電波状況は不安定でインターネットはほぼ死んでいます。
 警察も例外ではありません。刑事が辞めてしまって人手が足りないのです。
 本作の主人公であるヘンリー・パレス刑事が、1年数ヶ月の巡査経験を積んだだけで、コンコード警察署犯罪捜査成人犯罪課の刑事に採用されたのも、それが理由でした。
 そして地球の滅亡に関係なく正義感あふれるパレス刑事は、深夜のマクドナルド(本社は倒産しフランチャイズ店が独自に営業)のトイレで首を吊って自殺したと見られる、火災保険会社の保険経理士ピーター・ゼルの死を、他殺の疑いがあると判断して捜査に乗り出すのです。同僚の刑事も、検事も、検視官もやる気のない中・・・
 まさに、地上の最後の刑事のごとく。

 うーん。
 暑いですから、頭がボワーとしてまして、何がなんだかわからないうちに読み終わっていました。
 もちろん、ボワーとしたのは日本の熱気のせいだけではなく、緊張感のあまり感じられない本作の展開にもあると思います。
 3部作だったと読む前から知っていたら、読んでないかもしれないねえ。
 面倒くさいから(笑)
 地球滅亡まであと半年と迫っているのに、殺人事件の捜査なんてどうでもいいと思った、少なくとも私は。
 どうでもよくないと思う人は、これを読んで面白く感じるかもしれませんが。
 だって、サイコパスの大量殺人鬼や過激宗教の黙示録的破壊活動ならともかくですよ、この期に及んでヤク中絡みの犯罪なんて、どうでもいいわ、はっきり言って。
 そりゃ殺された被害者の無念を晴らす思いはもちろんだけどさあ、ほっといても小惑星のマイアがぶち当たって死ぬんだからね。
 ましてや、真犯人が、まあ、もう暑いしネタバレさせてもらうけど、身内なわけでしょ。
 ほっといてやれよ。
 最後まで私は、被害者の部屋に小惑星衝突に関する膨大な資料が残されていたことから、この殺人事件が政府の陰謀に関係しているのではと、筋違いの胸を高鳴らせて読んでましたからね。とんだ見当違いですよ。
 言いつつ、2作目を読んでみようかと、密かに企んでいないわけでもありませんが・・・
 確かに、もっと深まりそうな気配がないでもないです。
 哲学といいますか、人類が滅亡の危機に瀕している中で刑事活動をする理由ですね。
 ゴミ箱に入っていたピーターの記録メディア、あれは事の真相を吐露したものだったのでしょうか。
 結局、どうして殺害現場がマクドのトイレになったのか、ピーターの絶望とシンクロできたのか、私のこの暑さでとろけた脳細胞ではハッキリとしないままでした。


 
 

 
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