「偽書『東日流外三郡誌』事件」斉藤光政

 グリコ森永事件や幼女連続誘拐殺人事件で筆跡鑑定をしたことがある大学教授はこう締めくくった。
 「『東日流外三郡誌』の作者は、自分が書いたものが全国規模で報道されることを喜んでいたのでしょう。たとえ、地元の青森県では疑いの目で見られていても、中央で知られればそれでいいと考えているのかもしれません。
 その意味では、『東日流外三郡誌』問題は単なる偽書事件ではなく、愉快犯による劇場犯罪のような要素を多分に持った問題だといえます」

 詐欺師による、サギ史。
 戦後最大の偽書事件といわれる、東日流外三郡誌(つがるそとさんぐんし)事件の顛末と真相。
 著者は、この事件を地元青森の最前線で追い続けた、東奥日報編集委員の斉藤光政さん。
 読めば納得。いい仕事です。

 古代の津軽地方に大和朝廷と対立する王国があったと書いている「東日流外三郡誌」は、中世津軽の豪族である安東一族にかかわる歴史と伝承を、江戸時代にかけて収集し、編集したという体裁をとっています。
 それを、明治時代に曽祖父にあたる人物が模写したものが、戦後間もなく茅葺屋根の天井裏から落ちてきたと、発見者である和田喜八郎は言っています。ちなみに、原本は和田喜八郎の死後も行方は知れません。
 家で発見されたのは外三郡誌だけではなく、千巻もの「和田家文書」と呼ばれる古文書が出てきたそうです。
 これが公に日の目を見たのは、1975年の青森県市浦村史の資料編として刊行されたとき。
 ほんとバカだな、青森の自治体は。偽書の区別もつかず税金使って村史として世に出したとか、もうアフォかと。
 以来、古代史ブームに乗っかって、日本中に拡散しました。
 ムーにも載ってましたよ。ちゃんと読んでいませんが、目にした覚えはありますね。
 それどころか、コロンビア大学や海外の研究機関に所蔵されるまでになってしまいました。
 
 真贋論争が巻き起こったのは、1992年のことです。
 大分の研究者が、外三郡誌の発見者である和田喜八郎の刊行物に、無断で写真を使用されたと訴訟を起こしてから。
 裁判所は真偽を調査することはありませんでしたが、これが契機となって、筆跡や紙質が調べられることになりました。
 その結果、執筆者は発見者の和田喜八郎で、煤を使って古く見せかけた障子紙に筆ペンで書かれていることが明らかになりました。使用されている言語も現代のものが混じっており、とても明治時代に模写されたものではなく、現代に製作されたものであると推測されるに至ったのです。
 内容は、既成の歴史書や論文から史談や伝承を集めて、これに筆を加えてまとめた創作物であり、なかには出典を明示された箇所も多々あります。
 しかし、真書派と呼ばれる根強い外三郡誌ファンは、それでもめげずに、本書刊行時点(2006年)でもこの五流の偽書を信じ切っているという、もうなんか、新興宗教のような事態になっていたわけですな。
 常に最前線でこの事件を追ってきた著者も、だいぶ口撃されたそうです。
 
 もうほんと、読むのがバカらしくて途中でやめようと思いました。
 偽書作るんだったら、そう簡単にバレるような仕事せずにもっとちゃんとやれよ。
 これくらいのもんで騙されるほうも悪い。レベル低いわ。この件は、作った方より騙されるほうが罪が重いように感じました。外国の偽造絵画の来歴なんて本物より精巧に作られているんですからね。
 でも目を開かされるところも多々ありましたね。
 津軽地方の寒村の村おこしの面もあったという観点には、私も寒村に住んでおりますので、正直、気持ちはわかります。
 この手があったかとも思う。ネス湖のネッシーもそうだろうし。
 実は本書を読むまで真相を知らなかったのですが、同じ青森の戸来村でキリストの墓があったという伝承があったでしょ。
 あれも、1935年に村おこし的なものと新興宗教が絡んで作られたものだそうで、それ以前は戸来村にはキリストのキの字もなかったそうです。
 面白いのは、和田家文書には戸来村にキリストの墓があるという記述があるんですよね。
 おまえ江戸時代だったろうと(笑)


 
 
 
 
 
 
 
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「震度7 何が生死を分けたのか」NHKスペシャル取材班

 1995年(平成7年)1月17日午前5時46分、淡路島付近を震源とする阪神・淡路大震災が発生しました。
 震度7。全壊、全焼した家屋は11万棟、関連死を含む犠牲者6434人。
 現代の都市をあっという間に壊滅させた、あの21年前の出来事は忘れることはできません。
 本書は、2016年1月17日に放送されたNHKスペシャル「震度7 何が生死を分けたのか ~埋もれた21年目の真実~」の取材チームによる、書き下ろしのノンフィクションです。
 21年間埋もれたままだった震災当時のアナログデータ、たとえば医師による死体検案書、消防署の活動記録、震災直後の航空写真などを、最新の分析技術で統計化することによって、新たな視点から震災を振り返っています。
 その結果、浮かび上がった疑問点は3つ。
 発生から1時間までに亡くなった方々の意外な死因、発生から数時間後に起こった時間差火災の正体、そして救助隊の行く手を阻んだ渋滞の先頭ではいったい何が起こっていたのか?

・『意外な死因』
 震災当日に亡くなった方の総数は5036人。そのうちの3842人の方々が地震発生直後に亡くなられていますが、うち60%にあたる2116人の方の死因は建物に押しつぶされたことによる圧死ではなく、「窒息死」でした。
 なぜか? 鼻や口が塞がれる気道閉塞性窒息ではなく、外傷性窒息というもので、柱などの重量物が胸や腹に載り横隔膜や肺の動きが止められて呼吸ができなくなったのです。
 遺体を検案した医師によると、骨も折れていないし臓器損傷もない方がほとんどで、指でぎゅっとつまんで押さえるとそこが白くなるのと同じ原理で、窒息で亡くなった方の遺体には白く変色した部分が胴に帯状にあったそうです。

・『遅れた火災の正体』
 発生1時間後、当日亡くなった3842人のうち、窒息死を免れてこのときまで生き残っていた方は900人いました。
 しかし、ここで不可思議な火災が発生するのです。
 地震当日の火災は205件で、兵庫県全体で1年間の火災発生件数は1800件ですから、いかに火災が集中して起きたかがわかります。しかし205件のうち、地震直後に起きたのは113件で、残りの92件は時間差で発生したのです。
 何が原因だったのか? その正体は通電火災でした。
 これは停電していた電気が復旧するとともに電気製品から発火する現象のことです。
 たとえば地震で倒れていた電気ストーブが、条件が重なることによって停電の復旧によって再び通電し、周辺の可燃物に着火してしまったのです。

・『渋滞によって助けられた命が失われた』
 地震発生から5時間。窒息死や遅れた火災を免れ、当日亡くなった方にうち500人近くが生存していました。
 このとき、兵庫県からの要請を受け、各地から180もの消防隊が被災地に向かっていました。
 しかし、彼らは活動すべき被災地になかなか入ることが出来ませんでした。
 大渋滞によって行く手を阻まれてしまったのです。
 本書には三重県の消防隊の方の証言が載せられていますが、8キロ進むのに3時間かかったそうです。
 このために、助かったかもしれない命が失われることになりました。
 渋滞の原因はなんだったのか? 渋滞の先頭では何が起こっていたのか?
 航空写真を分析して導き出された答え、それは道(夙川橋)に30センチの段差ができたため、車が歩道を徐行しながら通行していたためでした。
 安否確認の車が多かったことも一因です。今のように災害伝言ダイヤルなどありませんから、家族や友人の安否を心配するあまり、人々は車を出してしまったのです。
 気持ちは痛いほどわかりますが、結局、それは救助隊の足を引っ張ってしまいました。
 
 本書が教えてくれるもの、それは次の大地震から身を守るためのメッセージです。
 亡くなった方々が、生きている我々に残してくれたものと捉えることもできます。
 本当に、1ページ1ページが重かったです。
 ハードもソフトも備えること、これが大事です。
 頭のなかでシュミレーション。家具の固定化や食料の準備。
 私は消防団やってますからねー、ジャッキみたいな道具がたくさん必要だなと思いました。
 ジャッキみたいなのは、ないなあ、うちは。ゴムボートはあるけど。


 

 
 
 
 

「秘密解除 ロッキード事件」奥山俊宏

 今から40年前に発覚したロッキード事件。
 時の総理大臣・田中角栄が米国の諜報機関CIA(中央情報局)と密接な繋がりのある軍需メーカーから5億円の賄賂を受け取ったとされるこの事件は、1976年に発覚し、戦後最大の疑獄と言われています。
 本書は、2009年から7年かけて、著者が米国の国公立図書館や各大統領図書館(米国では各大統領に関係する書類の図書館が建つ)などで粘り強く発掘した新たな文書をもとに、新たな視点(主にアメリカ)からこの事件を見直したものです。

 もう事件から40年も経つので、事件関係者の多くは死亡し、秘密が解除された文書も多いそうです。
 それでも、事件発覚の核心となった米上院のチャーチ委員会の資料がすべて開示されるのは、あと10年かかります。
 何が書いてあるんですか。
 名前が伏せられたままの、カネをもらった6人の日本政府高官ですか。
 まあ、興味がまったくないとは言い切れませんが、6人で10万ドルでしょ。
 田中角栄への180万ドル(5億円)と比べたらねえ、屁のさきっぽみたいなもんですよ。
 事件単体の謎解きとして見ると、その6人の名前ですね、そこに自民党幹事長だった中曽根さんが含まれているかどうかとか(おそらくないような気がする)、1972年8月31日のハワイでの日米首脳会談でニクソン大統領が田中角栄に直接ロッキードをセールスしたのかどうかとか、そんなへんしか興味は残っていないでしょうね。
 むしろこの事件の真相を探るということは、本書の意図もおそらくそうですが、現在にまで至る戦後日本外交史、日米関係史の隠された闇の一端を垣間見ることによって、戦後70年の日本の真の姿を俯瞰することにあるんじゃないでしょうか。
 そういう意味で本書を読むと、ちょっと難解な本ですが、とても有意義で面白いかと思います。
 田中角栄の後の首相である三木武夫さんが、まさか政界刷新を考えていたなんて夢にも思いませんでした。
 私もそうですが、今では多くの方がこの事件をリアルタイムで知らないでしょうけどね、ロッキード事件という名前くらいは聞いたことあるんじゃないかと思うんです。
 これを機会に、今の日本の姿が出来上がったわけを考えてみるのもいいかもしれません。
 思いの外、今よりも戦後30年しか経っていない時のほうが、アメリカの言いなりじゃなくて丁々発止のやり取りをしていることがわかるかと思います。
 田中角栄なんて、中国との国交正常化をアメリカと歩みを同じくせずに6年も先立って成し遂げましたからね。
 今じゃ考えられないと思うんだよなあ。実際、アメリカは失望していたらしいですから。
 日本を主軸の基地にして、アメリカは台湾(日本もアメリカも中国の正統政府は台湾だけであるとして国交を結んでいた)、フィリピン、韓国などの国防を担っていたのですから。それが日本は台湾と断交して敵であった中国と国交を結んだのですからね。
 かといって、アメリカの虎の尾を踏んだばっかりに、田中角栄が罠にハマってロッキード事件が起きた、というのとは違います。
 確かに本書を読む限り、アメリカ、特に大統領補佐官で後に国務長官になるキッシンジャーは蛇蝎のごとく田中角栄を嫌っていました。福田赳夫とか大平正芳が好きだったんだね、アメリカは。
 といっても計算してこんな大仕掛けが、そんな器用なことがアメリカにできるはずがないと思うんですよね。
 ロッキード事件自体の発覚からして、ニクソンが失脚したウォーター・ゲート事件の副産物ですから。
 ウォーター・ゲート事件がなければ、どうなっていたかわかりません。きっと歴史は変わっていたでしょう。

 もっとも、アメリカという国自体が一枚岩ではありませんが・・・
 日本から見るアメリカの本体は、やはりCIAなのかなあ。
 気色悪いんだけど、最悪の流れにはならなかったと言うべきでしょうか。
 これを読むと国益って何なんだろうと思います。
 結局は、戦前の日本もそうですが、セクショナルインタレスト(組織的利害)なんじゃないですか。
 もっとも、100%無私で国益を考えるというのも、なんだか人間臭くない。
 1970年で日本の対米貿易黒字が12億ドルだったのが、翌年には32億ドルもの黒字になった、これはとてつもない貿易不均衡だから、是正のために、日本よ、アメリカの飛行機を買ってくれ、そうかわかった、国産のほうがいいけど買ったる。これは別に悪いことではないと思いますよ、私は。5億円はまずいけどビール券くらいなら許容範囲じゃないですか。
 田中角栄と三木武夫を足して二で割ったような首相が日本の指導者であったならば、40年後の今日は、違った日本が見れたかもしれませんね。



 

 
 
 

 
 
 
 

「パナマ文書 『タックスヘイブン狩り』の衝撃が世界と日本を襲う」渡邉哲也

 2016年4月、パナマ文書と呼ばれる機密文書が漏洩し、世界に衝撃を与えました。
 パナマ文書というのは、中米パナマにある「モサック・フォンセカ」という法律事務所によって作成されたもので、この事務所がかかわる1970年代から40年間におよぶ、オフショア(外国人・外国企業など非居住者向けのサービス)金融センターを利用する企業や人の取引情報のことです。データ量は膨大で、2・6テラバイトもあるそうです。
 すっぱ抜いたのはドイツの代表的新聞である「南ドイツ新聞」で、匿名者から入手したとのこと。
 おそらくハッキングじゃないかと云われています。
 なぜこの文書が問題になったかというと、40カ国の元・現職の大統領や首相周辺などをはじめとする世界の大企業や富裕層が、自国に税金を払わずにタックスヘイブン(租税回避地)で、お金をゴニョゴニョしていたということが発覚したからです。
 アイスランドの首相が辞任したり、イギリスのキャメロン元首相が窮地に追い込まれたりしたのは記憶に新しいですね。
 もちろん、表世界の住人だけではなく、裏世界の住人である暴力団やマフィア、テロ集団などもタックスヘイブンを利用した租税回避に関与しているとみて間違いありません。
 なにが凄いかって、たとえばオフショア・タックスヘイブンの筆頭格である英領バージン諸島なんて、2013年の海外直接投資が世界4位の920億ドルもあるのです。アメリカが約1500億ドルで中国が約1200億ドルだから、そんな名前も知られていない小国の突出した異常さがわかるでしょう。920億ドルもの金が流れ込んできてるわけですよ。
 英領バージン諸島という、カリブ海の人口が2万2千人しかいない自治領にですよ?
 どてもフェアなお金の流れとは思えないね。
 国家財政の半分以上は、年間数十万円ほどの設立された法人登録税で賄われているそうです。
 そりゃ莫大な税金を収めるよりかは、雀の涙程度のショバ代をと思うわな。
 でも本当の問題は、会社の設立も銀行口座の開設も、すべて匿名でできてしまうということにあります。ビックリだわ。
 誰が作った会社かわからないのですね。反社会的な人間でも、資金の管理が可能です。
 パナマ文書を流出させたパナマの事務所は、影に隠れた実在する人物からこうした匿名会社や口座を設立する橋渡し的な役割や秘書代行のようなことをしていました。
 その関係を記した何もかもが、ドカーンと漏洩してしまった、パナマ文書事件とはこういうことなのです。

 パナマ文書の件、一回読んでおかなければと思っていてようやく読めました。
 結果、日本のマイナンバー制度との絡みもあって、読んで良かったと思いました。
 租税回避の手法もわかりやすかったです。たとえば、簡単にいうとA社とB社を合併させて、両者の知的財産権を移譲したC社をタックスヘイブンに作ります。A社とB社合わせて100億円の利益があったとすると、C社は知的財産権の使用料として100億円もらうわけです。すると、C社はタックスヘイブンにあるので100億円にかかる税金を払わなくていい、こういうことです。
 みんながこんなことばかりしていたら、ちゃんとした国は回っていかなくなります。
 本来なら活動している国で税金を納めていないのですから、社会保障費だってきっと足りなくなります。
 パナマ文書の公開を機に、いや反民主国家への金融制裁などを見る限りその前から、世界は金融の透明度を高めて収めるべきところにお金を収めるように、金融制度を段々と強化しています。
 日本のマイナンバー制度だってその一環だそうです。
 ひとりひとりにナンバーを振って口座や証券の管理ができれば、一部の東アジア系在日外国人が本名と通名(日本人名)を使い分けて口座開設や就労に悪用していることを防ぐことができます。
 
 悪いことした国や団体に最近では金融制裁が課されます。
 それほどまでに、今の世界で金融の力は大きいのです。爆弾を一発食らうよりも怖いのです。
 グローバリズムしすぎたのですね。垣根を超えて繋がりすぎたのです。
 結果、サブプライムローンのようなことで、全世界の経済が震撼するはめとなります。
 あれなんて金融工学の裏面といいますか、ここにわかりやすく解説されていましたが、色々な債権を詰め込みすぎてわけがわからなくなったのです。悪いリンゴはサブプライムだけだったのに、一緒に箱に入れられた他のいいリンゴとの区別がつかなくなってしまったのです。今の世界経済は実質資金が信用取引など含めると60倍にも膨れ上がって売買されているとのことです。
 例えると、本当ならば1億円しか現金が流通していない経済が60億円もの見えないお金で回っているということです。
 
 他、面白かったというか、一番興味を惹かれたのは、イギリスが中国に接近した理由のとこ。
 大英帝国の復活(笑)。いや、笑い事ではありません。
 アメリカに覇権を奪われたロンドン・シティ(実は自治領だって知らなかった!)が、中国を味方につけてイギリスによる金融支配の復権を目論んでいたとの記事は面白かった。主導者は、財務相だったジョージ・オズボーン。
 だからAIIBにいち早く参加したのか。オズボーンは中国に訪問したときはウイグルにも立ち寄りました。このことはウイグルは中国の一部であるとイギリスが認めたということです。中国は大喜びですよ。
 でも、EU離脱で夢と散りましたね・・・ざまあw


 
 
 

 
 
 

「なぜ母親は娘を手にかけたのか 居住貧困と銚子市母子心中事件」井上英夫ほか編

 2014年9月24日、千葉県銚子市内の県営住宅で、家賃滞納のため強制退去となったその日、母親(43歳)が無理心中を決意し、中学2年生の娘(13歳)を殺害した。執行官が部屋に入ると、母親の横に絞殺された娘が横たわっており、すぐ異変に気づいたという。母親は娘が活躍した運動会のビデオを観ており、「これを観終わったら死ぬつもりだった」と答えた。
 ヤミ金の返済に追われ、健康保険料も滞納するほどの生活苦で、母親は「家を失ったら生きていけない」と思い詰めた果ての事件であった。行政に相談したが、結果的に生活保護を受けられなかったという。
 母親の事件当時の所持金は2717円で、母親と娘名義び預金口座の残高は合計で1963円だった。

 本書は、この痛ましい事件の原因・背景を糾明して、このような事件の再発防止の方途をさぐることを目的に結成された、「千葉県銚子市・県営住宅追い出し母子心中事件調査団」による、事件周辺の報告および国自治体への提言です。
 ノンフィクション本のようなスタイルではありません。
 どちらかというと、レジュメ片手に様々な研究者が壇上で発表するような形式の、まあいわば“レポート”です。横書きです。
 なぜ母親は娘を殺さなければいけないまでに社会から追い込まれたのか、事件の引き金になった県営住宅からの強制退去という手段は正しかったのか、生活保護を受けられなかったのはどうしてか、などに焦点が当てられています。
 結論は、なるべくしてなった事件ではありません。防げていた、ということです。

 県営住宅の家賃は1ヶ月1万2900円でしたが、これを母親は数ヶ月分滞納していました。
 そのために、千葉県が裁判に訴えて、強制執行という形で追い出すことになったのですが、実は公営住宅には、極めて生活の苦しい世帯を救うための家賃の減免制度があって、この母子は適用されていれば80%の賃料が減免されるはずでした。
 そうすれば、家賃滞納などせずにずべて支払うことができたのですが、県はこの制度を母子に通知していませんでした。
 それどころか、賃料督促の通知から強制退去まで、母親と面談して直に話を聞くことすらありませんでした。
 まったく、血の通わない「はい、バイバイ」という機械的な処理だったのです。
 減免制度はHPなどに開示しているとのことですが、困難な状況に置かれている者ほど情報弱者になりやすいのです。
 賃料取り立て人は、それ専門の民間委託業者なので、そんな制度のことなんて知らないでしょう。
 県ばかりではありません。銚子市は、生活保護の相談にきた母親を追い返していました。
 昨今、悪質なナマポ受給者が増えているので、こうした厳しい「水際作戦」は理解できるのですが、本当に追い詰められている弱者まで切り捨てては話になりません。
 千葉県と銚子市の対応には問題があり、間違いなく、この事件については責任があります。

 しかしですよ、私はこの事件で一番悪いのは、母親が離婚した元夫だと思います。
 亡くなった娘さんの実の父親ですね。
 この男が一番質が悪い。
 離婚の原因は、ギャンブルに入れあげた元夫が消費者金融で作った借金であり、これが結局、回り回って、母親がヤミ金などで金をつまむ原因となりました。あげく、給食センターのパートをしてましたけど、様々な補助を入れても月11万くらいの収入しかなかったために、娘が中学校に入学するにあたり、住宅の家賃の支払いが滞ったのです。
 元夫は、自分が原因である借金で母子を苦しめたばかりでなく、養育費も入れなくなり、ずっと音信も絶っていました。
 千葉県と銚子市も過失があったのは確かですが、こいつが一番悪いです。こいつの責任ですよ。
 
 結果、娘を手にかけた母親自身が刑務所に入ったのは当然ですが、亡くなった娘さんのような犠牲者を二度と出さないためには、役所のマンパワーには限界があるし、働かない奴に無駄な税金を使うなという意見もまた真理なので、地域的な垣根の低い生活相談のボランティアが絶対に必要だと思います、それも、やたら態度だけでかくて滅多に顔も出さないような忙しい弁護士先生なんか要りませんよ、そんなのが絡むから、こういう活動が広く底辺に行き届かないんですよ。
 無理して血の通わない県営住宅なんかに住まなくても、田舎で格安の一軒家でも借りていれば、畑も作れるし、周りに人もいるし、死ぬようなことはなかったと思います。


 
 
 
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