「日本核武装」高嶋哲夫

 中国軍部の暴走が止まらない。
 日本に背を向けたアメリカを尻目に、ついに中国軍の“日本侵攻”がはじまる!
 現実的に迫る国家危機、改めて日本の防衛を問う超弩級のクライシスサスペンス。

 この物語はフィクションです。
 でも、フィクションには思えません。あまりにも生々しい。
 いよいよ世界はきな臭く、日本もまた危うい時代に差し掛かっていることは事実なのですから。

 あらすじ。
 防衛省技術研究本部の技官が交通事故を起こして意識不明の重体となった。
 彼は警察病院へと担ぎ込まれ、病室には厳重な警戒体制がとられた。
 なぜなら、彼は持っていてはならないものを持っていたからである。
 それは、非核三原則を堅持する日本にはあってはならないもの。
 「日本国における特殊爆弾製造および工程表」というレポート。特殊爆弾とは核爆弾のことである。
 いったい、誰が彼にこのようなレポートの作成を命じたのか?
 米国留学から帰国したばかりの防衛省キャリア、国際政治分析官の真名瀬純は、上司であり将来の事務次官候補とも目されている防衛政策局次長の小野寺から、この事件の徹底的な調査を命じられる。
 その結果浮かび上がったのは、ヤマト計画・・・核爆弾のパーツを製造できる企業や工場、莫大な資金や科学者、技術者を提供している軍需産業、それを指揮する自衛隊の元統合幕僚長、核爆弾製造に陰ながら協力する政官財の要人の存在だった。
 そして、あとはプルトニウムか濃縮ウランを充填するだけとなった完成間近の核爆弾。
 核爆弾の徹底的な消去および記録の抹消を命じられた真名瀬。
 しかしその頃、尖閣諸島周辺ではついに日中軍事衝突の危機が訪れる。

 はい。どうなんでしょうねえ。
 核爆弾とは、通常爆弾の火薬の部分を濃縮ウランやプルトニウムなど核分裂物質に置き換えたものです。
 通常、ふたつに分けた核物質を火薬によって高速で合体させ爆発させます。
 この核反応を制御して熱として取り出すのが原子力発電であり、一瞬のうち爆発させるのが核爆弾です。
 原理は簡単ですが、実際に作り出すとなると、最新の科学技術と大規模な工場施設、実験が必要です。
 さらには、濃縮ウランやプルトニウムはIAEA(国際原子力機関)によってグラム単位まで管理されています。
 日本は55基の原発と250ヶ所の査察対象施設を持つ世界最大の非核兵器国であり、常時20名以上の査察官がおり、IAEA全予算の4割が対日査察に使用されているそうです。
 技術的には日本が核爆弾を製造することは可能でしょうが、核物質を自由に扱うことはできません。
 さらに、日本が核兵器保有国となるには、様々な条約からの脱退を回避することはできません。
 NPT(核拡散防止条約)、CTBT(包括的核実験禁止条約)、そして何よりIAEAから脱退しなければなりません。
 この時点で、日本は拠り所である国際的な信用を一切失ってしまうでしょう。

 だからといって、戦争抑止力となる核兵器を永久に持たなくていいとは限りません。
 世界情勢は動いていますからね。
 核兵器があるおかげで戦争にならなくてすむのならば、持つべきでしょう。
 でも日本が核保有を公表すれば、世界に誇るそのアイデンティティを失ってしまいます。
 思うにイスラエル方式がいいと思います。
 表向きには持っていないことになっていますが、世界の誰もが持っていると疑っている国です。
 北朝鮮のように、不完全なものなのにいかにも持っているように思わせる空威張りとは逆です。
 その気になれば、日本は即日に核兵器を使用できる、こう思わせることも必要だと思わせる国が近所にあります。


 
 

 
 
 
 
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「ジウⅢ 新世界秩序」誉田哲也

 長引く不況を脱してみても、一向に状況は好転しない。
 気づくと目の前には、格差社会なんていう新たな泥沼が広がっている。
 上と下、自分がどっちにいるかって考えたら、それは間違いなく下。
 上の方では、既存の社会の枠組みを巧みに利用する連中が蜜を吸い上げて、
 これでもか、これでもかと、這い上がってくる連中を叩いて弱体化させている。
 そりゃ、いっぺん何もかもぶち壊してやろうかって、誰だって思いますよ。
 これは政治じゃない。社会そのものをひっくり返す運動なんだ。
 喧嘩上等、シャブ容認。
 経済も支配も、法律も学歴も、いっぺん全部なかったことにして、ゼロから始めよう。
 何もかもチャラにして、新しい世界の秩序を作ろう。


 ジウシリーズ完結? 編となる第三弾。
 前作「ジウⅡ 警視庁特殊急襲部隊」で衝撃的なラストとなった、城西信用金庫西大井支店爆破事件からの続きです。
 あの事件の死傷者は24人。人質はもちろん、実行犯の元自衛隊員、そして多くの警察官が命を落としました。
 なかでも、現場に突入したSAT(警視庁特殊急襲部隊)の被害は著しく、一個班が壊滅してしまいました。
 東に嘘を言って、謎の電話に頼まれたとおり、伊崎基子を迎えに行った門倉美咲。
 基子は数日無断欠勤をしていました。この間に拉致されて、宇田川舞や木原毅を殺したのですね。
 怪我の癒えた基子は、壊滅したSATを立て直すべく、新たに制圧一班の班長となって実戦に復帰します。
 突出した実戦能力を持つ基子の下には、優秀すぎる5名の隊員が付きました。
 そして、これは新世界秩序という、キーワードをついに実行に移す序章となりました。
 なんの序章か?
 狂気の王子ジウを戴き、ミヤジの提唱する“新世界”構築のために、彼らが仕組んだ壮大な計画。
 それは、現役日本国総理大臣の拉致、そして歌舞伎町に出入りできる道路のすべてを封鎖、無法地帯化し、治外法権を認めさせること――
 新宿東口での選挙演説を襲撃した暴徒によって引き起こされたパニックに乗じ、本来なら警備の要となるべき基子率いるSAT第一班は、大沼堅次郎総理大臣の拉致に成功、警察との死力を尽くした戦いの幕が開くのです。
 
 これで終わりなの?
 最後にミヤジが、「次につながる確かな手応えを感じた」「ミヤジタダオは決して私一人ではない」と言ったことは、一応、やる気になったら続きも考えてみる、ということなんでしょうか。
 ふーん。まあ、面白かったけどね。あんまりアクションシーンの書き方が巧いとは思えませんが。
 「ンググァ!」っていつも鉄砲に撃たれる人がこう叫ぶのですが、なんか違う気がする。
 ストーリー的には、やたらと作者に踊らされたような気がします。結局、三作とも小説のジャンルが異なるくらいの、それぞれに違うテイストがありました。たとえば一作目と本作を比べると、同じ続き物であるとはにわかに信じられません。こんなに無茶苦茶になるのか、という感じで。
 ジョーカーですか、警察内部の協力者。まさかあの方だたっとは、誰もわからないよね、マイナー過ぎて(笑)
 普通に考えれば太田警備部長、大穴で西脇刑事部長、だと思って読んでましたけどね。
 橘SAT隊長もなんだか怪しかった。回収されてない伏線と思うんですけど、彼が基子に「この旗はバタバタうるさい」って言ったの、結局なんだったんですかね? あれがずっと頭に残っていたために、余計なことを考えちゃいました。結局説明なしだなんて反則ですよねえ。
 まあ、雨宮関連が清々しかったので、良しとしますか。
 記憶が鮮明なうちに、最近刊行された、姫川玲子シリーズとジウサーガのコラボを読みたいと思っています。

「ゼロの激震」安生正

 2020年代の日本は、12年かけて核融合に匹敵する半永久的な発電システムを完成させた。
 海上の巨大要塞・浦安人工島に設置された東京湾第一発電所である。
 人類史上初めてマントル層へ到達した、深さ50キロに及ぶ世界最深の立坑が売りのこのシステムを、“バベルシステム”という。立坑内部は直径の異なる2種類の鋼管がパイプオルガンのように隙間なく設置され、ボイラーとなる。
 そのまわりをリング状に取り囲んで直径40メートルの鞘管が12本配置され、海水が外側の鞘管を通って、海面から48キロの深さまで落下し、そこで中央のボイラー部へ放流される。放流量は毎秒5万トン。
 ボイラー内の海水は瞬間的に地熱で気化され、その水蒸気圧で蒸気タービンをまわす巨大な地熱発電所となる。
 (まあ簡単に言えば、焼け石に水をかけてジュッとなった熱気を利用するのですね)
 浦安人工島だけで発電量は2千万キロワット。原発20基分の発電量に相当する。
 プロジェクト成功のニュースは世界中を駆け巡り、究極の自然エネルギーが誕生したと日本の技術力が称賛された。
 バベルシステムが普及すれば、世界の発電市場を独占することさえ可能になるのだ。
 だがしかし。
 これをもって日本人は、いや、人類は自然への挑戦を成功させたと言えるのだろうか。
 地球が誕生して46億年。
 その間、5度の大量絶滅が発生し、3度の全球凍結が起こった。
 その多くは地球が内に秘めた怒りの爆発だ。
 地球表面の大陸地殻の厚さは30キロから40キロ。それにたいして地球の半径は6400キロもある。
 気の遠くなる時の流れの中で、神が創りあげた地質構造のバランスを人類が崩した時、何が起こるのか。
 その答えはまだ、地底深くにある。

 はい。
 「生存者ゼロ」で、このミスをとった安生正の最新作です。パニックサスペンス巨編。
 正直言っていいですか?
 つまんね。
 \(^o^)/
 うーん・・・
 難しいところですね、読む人にとってはたまらなく面白いかもしれませんが、かなり専門的な用語や知識開示が多くて、映画みたいに見てわからないからね、小説だから想像しなくちゃいけないんだけど、少なくとも私の脳の能力は超えています。
 作者が一所懸命に説明してくれる端々から想像できません。右から左、馬耳東風。
 たとえば発電所の建設風景とか、地震のメカニズムとかですね。インフラの壊れようとか。
 作者の安生正は建設会社の役員であったと思うので、土木システムはお手の物かもしれませんが、ちょっと私はついていけませんでした。少しだけなら読み飛ばしますが、ずっとこの調子ですからね。
 でも、この精密さが、この作品の売りでもあって、これがなくなればまったく味がなくなるんですよね、この小説。
 この、作者の懸命な説明ぶりが、この小説の骨子なのです。
 だから難しい。それが私にとっては仇となりましたが、人によれば苦もなく読めて面白いかもしれません。
 面白いと言っちゃいけないか。
 今時、不謹慎な小説でもあります。
 ただ、過失とはいえ人災だからね。
 聞いたことはありますけどね、二酸化炭素を地中深くに封印して閉じ込めるというのは。
 その結果、マントルが溶解してマグマになる可能性が本当にあるのかどうか、私にはまったくわかりません。
 そういや、人類は深海や宇宙については積極的ですが、地球内部についてはまったく手付かずであるということを、最近このブログで書いた覚えがありますね、何の本だったかあれ。
 とにかく、地球内部というのはまだまだ謎ですからね。
 
 イエローストーン国立公園の話は本当なのでしょうか。
 本当だったら怖いねえ。巻末の大量の参考文献を見れば、おそらくマジなんだろなあ。
 この物語で起きるパニックと似たようなことに、どうやらイエローストーン国立公園の地底がなっているらしい。
 超巨大なマグマ溜まりの存在が確認され、それが噴火爆発したときには人類存続の危機になると予想されているそうです。
 噴火の周期は60万年で、すでに最後の噴火から64万年経っているそうですが・・・
 この前の昭和の東南海地震に誘発されて起こった三河地震(数千人が死亡)は1万年に1回の断層が動いたらしいですが、数百年に1回ならまだしも万年単位になってくると、もうなんだか、どうしようもない気がします。
 それでも地球の46億年の歴史からしてみると、瞬きですからねえ。
 約2千万年前は、東日本と西日本だって離れていたそうですから、また離れないとも限りません。
 おそらく早い時期に、もっと安定した空間に移住しないと、人類は必ず滅亡すると思いますねえ。


 
 
 
 
 
 
 

「オールド・テロリスト」村上龍

 どうだかねえ。
 日本をリセットするべく老人の集団が連続テロを起こすというようなお話ですが、イマイチ読みにくいですね。
 経済力もなくなり、国際的にもだんだん相手にされなくなって煮詰まってしまった日本をぶっ壊すという発想は、漫画的にわからないでもないですが、もっとスラっと読める軽い感じにしてほしかったですわ。
 この作者の「半島を出よ」は文句なく面白かったですが、同じクライシス系でもあんな感じではないなあ。
 第一、主人公のセキグチという、54歳のフリーライターにまったく共感できません。
 それが、一番本作を読みにくくしている理由。
 ま、人によっては、こういう感じがいいのかもわかりませんがね、
 だから、本作が面白いかどうかは、一にセキグチという男をどう捉えるかにかかっていると思います。
 なんせ、この中年男はヤワすぎますよ。
 仕事がなくなり、妻子に逃げられて、ホームレス同然の生活をしていることはいいんですが、精神安定剤をボリボリかじっては、小便を漏らすんだから。よく嘔吐しますしね。
 だから、連続テロという緊迫感がなくなる。
 もちろん、本当にテロに遭遇して恐ろしい光景を目にすれば、誰もがそうなるかもしれませんが、これは小説でしょ。
 次の展開が気になって読み飛ばすくらいの勢いがなければ、こういうのは面白いとは言えないんじゃいですか。
 肝心なところで、このセキグチの大仰なヘタレ具合が挟まれるので、ガッカリしてしまいます。
 これがあるから、他の薄っぺらいパニック系サスペンスと差別化できているのはわかるんですがね。
 なんせ560ページのボリュームですから、いい加減、うっとうしかったですよ。
 老人たちがどうしてこのヘタレに日本リセットという壮大な計画の取材を任せたのか、最後まで納得できませんでした。

 とはいえ、物語の骨子には共感できる部分も多かったのは事実ですが、その前に少し導入。
 2018年の日本が舞台。
 世相は暗い。7年前の大震災後、日本は強烈なスタグフレーションに見舞われ、円は一時期暴落してその影響はまだ続いている。財政はほとんど破綻し、アメリカをはじめ周辺の各国から無視されていて、再編を繰り返す政党と政治家は無能で、政治への信頼のかけらもない。だが、衰退と没落に気づこうとしないのか、あるいは国民が怒りを忘れたせいか、デモさえ起こらない。ストライキもない。1億総現実逃避状態である。
 そんなときに、事件が起こった。
 NHKの西口玄関で、死者10名を超す爆破テロが発生。
 続いて、大田区の商店街で、草刈機による自転車襲撃事件が発生。
 いずれの現場にもフリーライターのセキグチがいて事件に巻き込まれたが、彼がいたことは偶然ではなかった。
 そして彼は知っていた。事件の裏に、正体不明の老人の集団がいることを。
 老人たちはネットワークを作っていた。アル・カーイダ型の、細分化されたアメーバのような各細胞が自立している組織である。彼らは、すっかりダメになってしまった日本を焼け野原にしてもう一度リセットするという動機で、魂の抜け殻のような若者たちをデコイ(身代わり)にして、大規模テロを画策していた。
 混乱は、歌舞伎町の映画館でイペリットガスと可燃物を併用した大爆発で千人を超す死傷者を出し、最高潮に達する。
 しかし、恐怖はこれで終わらなかった。
 老人たちは、第二次世界大戦後の満州から鹵獲したドイツ製88高射砲で、原発を狙っていたのである。
 謎の老人たちの行方に迫るうちに知り合った、不思議美女・カツラギとともに、セキグチは日本をぶっ壊すというシンパシーと、罪もない多くの人間が死んでいくという怒りの板挟みで苦しみながら、なすすべもなく怒涛のような物語の核心に巻き込まれていく・・・

 実際に、作者は日本に現存するドイツ製の88高射砲の実物を見たそうです。
 普通なら、溶接するところを、リベットで止めてあるのですね。
 ドイツ製というのは、本当に優秀です。これは、私も常々、そう思っています。
 バランスがとれているんです。イタリアでも日本でも、ドイツまではいきません。
 職人の国というのは戦争は弱いんです。兵器は多少荒っぽくても量産型でなければなりません。
 日本には優秀な職人はいましたが、工業力がありませんでした。ドイツは両方ありました。
 もちろん、88高射砲で原発が破壊できるのかどうかは知りませんけどね。
 あと、共感できた部分として、日本人の服従型奴隷根性みたいな話がありましたが、これもその通りかと。
 生き方を選べるなんて人は本当はごく少数しかいないんですよね。
 大多数は、自由であるような気になっているだけで、奴隷のように実は選択権がないという日本の若者。
 思うような生き方ができないことを直視すれば辛いので、見ないようにしている。その結果、魂が抜けてしまう。
 まあ、仕方ないね。
 こういう国だよね、今は。仕方ない。あと100年は我慢ですね。
 暴力の解決ではね、絶対に反動がきますよ。


 
 
 
 
 
 
 
 
 

「土漠の花」月村了衛

 ソマリアでの海賊対処活動を続けている日本の自衛隊。
 実際に海に出て海賊とやり合うのは海自だが、ジブチにある活動拠点の警護と管理は、警衛隊として陸自の空挺部隊が請け負っている。猛訓練を積んだ習志野空挺団だ。
 その日、CRF(有志連合海上部隊)の連絡ヘリが墜落し、警衛隊(空挺)に救助要請が入った。
 場所は、ジブチのエチオピア、ソマリア国境に近い土漠である。
 ソマリア国境地帯は、無政府状態が続き氏族間の抗争が絶えない。ソマリアでは、6つの大きな氏族が無数の小氏族に細かく枝分かれして際限ない内紛を何十年も続けているのである。
 通常ならば、米軍のレンジャーが向かう事態だが、米軍はソマリア最大のイスラム武装勢力アル・シャバブへの掃討作戦で人手が足りず、自衛隊にお鉢が回ってきたのである。
 捜索隊長吉松三尉以下緊急救命陸曹一名を含む12名の空挺隊員が、軽装甲機動車2台、高機動車1台に分乗して現場に向かった。 拠点から約70キロ、岩山に激突したヘリの乗員はすべて死亡していたが、遺体回収のために明朝まで現場で野営することになった。
 そして、事件は起こった。
 深夜、捜索隊の野営地に地元氏族のスルタンの娘を名乗る女性が逃げ込んできた。そして、彼女を追ってきた別氏族の民兵たちが、彼女を匿おうとした捜索隊を問答無用に銃撃してきたのである。虚を突かれた捜索隊員はたちまちのうち吉松隊長以下5名が無惨に射殺された。
 荒涼としたアフリカの土漠で、自衛隊全体にとって間違いなく初めての経験であり、陸上幕僚監部や防衛省ばかりか海外派遣を決めた日本政府にとっても、まったくの想定外の事態が突如、勃発したのだ。
 危機一髪のところで敵民兵を反撃掃討した友永、新開両曹長以下7名の生き残り隊員は、氏族の姫君であるアスキラを連れて拠点に帰り着くばくアフリカの土漠を漂流するが、石油を巡る氏族間の抗争に巻き込まれていく・・・
 砂塵嵐をともなった高温風であるハムシンなどの東アフリカ土漠特有の自然災害、ソマリア民兵による執拗な追跡、そして隊員間の思わぬ不仲。はたして、彼らのうち何人が無事に土漠を抜け出すことができるのか!?

 土漠とは、砂漠ではなくてゴツゴツした岩石が広がる東アフリカ独特の乾燥地帯のことみたいです。
 砂の代わりに、石礫なのでしょう。
 当然ながら、集落やブッシュ以外に身を隠す場所などありません。
 そこで追いつ追われつの戦闘が起きるとどうなるか。
 ソマリアはマジでリアル北斗の拳の無法地帯ですからね。
 自衛隊の活動拠点である隣国ジブチや、1990年代に国際的にほぼ非承認ながら独立した西部のソマリランド(本作の参考文献として高野秀行の書籍あり)は比較的安全ですが、それ以外はいつ殺されてもおかしくありません。
 本作は小説ですけども、あの程度の武装の捜索隊では出動できないでしょう、実際ならね。
 まあしかし、いい意味でエンタメといいますか、自衛隊とソマリア民兵の戦闘という現場のアクションだけでほぼ90%完結している小説ですから、難しいごちゃごちゃしたこと考えないですむのがいいかもしれないですね。
 悪い意味では浅いんですけどね、物語が。首相が真っ青になってひっくり返るとか政治的なものが出てきませんからね。
 最後に少しだけ後始末というか政治的な処理が出てくるんですけど、現実的でブラックでした。
 ひょっとしたら、こんなことが昔にもあって国民に知らされてないだけなんじゃないの? と思えたり・・・まさかね。
 アクションシーンは、この方、前にも思ったことありますが、うまいのかうまくないのかわかりません。
 ひとつだけ良かったところは、RPGという有名な対戦車擲弾砲の後方噴射(バックブラスト)で後ろに迫っていた敵兵が瞬時に焼け死に、弾頭は発射後15メートル以内では爆発しないために前にいた敵兵の頭をもぎ取ったシーン。
 それくらいかな。土漠で元族の自衛隊員がバイクを乗り回すのは陳腐でした。
 あとひとつ。
 自衛隊員は公務員のなかで一番自殺が多いらしいです。
 本作に書かれているようなことが実際にあるのならば、本当にアイデンティティのない職業なんだろうなと思います。
 偶然ですが今日、安保法案が可決されましたね。
 さて、どうなる?


 
 
 
 
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