「福島原発メルトダウン」広瀬隆

2011年3月11日午後2時46分のことでした。
宮城県牡鹿半島東南東130キロ、太平洋プレートを震源とする巨大地震が発生、それに伴う強い揺れと大津波が東北地方から関東一円を襲い、東日本大震災となって福島第一原子力発電所で「メルトダウン」という深刻な大事故を引き起こしたのです。
「メルトダウン」とは、炉心のウラン燃料が灼熱状態になって溶け落ちることです。覆われている圧力容器や格納容器を溶かして外部に超高濃度の放射性物質をまき散らすのですね。
本書は途中の筆者の言によれば2011年4月27日頃の執筆だそうです。今よりちょうど2カ月前ですね。
そしていま、浜岡原発の停止等、ここに書かれている内容に現実が沿いだしているような印象を受けました。
相当思い切った内容の本ですが、これが事実だとするととんでもないことです。でもその可能性が高いんでしょうね……
メディアリテラシーと言いますが、我々はあまりにも原子力に対して無知に過ぎましたね。
事故直後のメディアの報道をただ見て聴くしかなかった、それを判断するものを何一つ持っていませんでした。
本書の筆者である広瀬隆は昨年「原子炉時限爆弾」という本でこの事態を予言していたらしいです。
そういう本をひとつでも読んでいれば、あのときテレビの前で
「ああ、このハゲカツラ嘘ばっかり言ってやがる」とか「バカ東○電力は何か隠してやがる」とか思考できたかもわかりません。
福島第一原発一号機が1971年に運転開始した40歳の老朽機であること、東電にエンジニアはいないこと(私たちがパソコンを使いながら修理を自分で出来ないのと一緒)など知るよしもなかったですね。
もしも本書に書かれているとおりマグニチュードの改ざんという話も本当なら、これはもう腹の立つどころの話ではありません。そして、体内被曝の恐ろしさ。これはもう、なんとも言いようがないです。パニックになるのを防ぐというのと、真実を隠すということは根本的に違いますよ。著者の考えのまとめは
①30歳以下の人は、福島原発より約250キロメートルを最低限の退避圏として出来るだけ恒久的に移住を考える。
②退避する人々の受け入れ態勢を政府がしっかり考え、国民規模の協力のもと東京電力がそれに専心する
③食品汚染の測定は長期にわたって続け、そのデータを嘘なく公表し、危険性を国民に告知する。
④30歳を超えた人は危険性を自ら判断し人生を選択できるようにしたうえで、農家と漁業者を守るため、放射能汚染食品を食べる。汚染水も飲む。政府は「ただちに健康に影響はない」と言い続ける。
とにかく、毎日の放出される量ではなく、最初の日から累積された絶対量、体内蓄積はもっとも恐ろしいです。
日本全国には現在、54基の原子炉があります。
そして、日本は巨大地震の激動期に入ったと思わざるをえません。
筆者の言う通りなら、IPP(独立系発電事業者)のフル活用、電力の完全自由化と送電線の分離、推定埋蔵量が急激に増えている天然ガスの活用などにより、原子力発電の穴は十分に埋まるらしいです。これからも巨大地震がこれら原発を直撃する可能性は非常に高く、いま日本人は短いタイムリミットで重大な決断を迫られようとしているのです。

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「宇宙の未解明問題」リチャード・ハモンド

プロットは素晴らしいんですけど、いかんせん難しすぎました、私には
章立て見てください。
第1章「加速する宇宙」宇宙が膨張している、しかも加速度的に!
第2章「暗黒物質の正体」まあ、これは熱い話題ですね
第3章「宇宙線の謎」これも考えれば考えるほど不思議
第4章「無限量の不思議」理解不可
第5章「ヒッグス粒子は存在するか」存在しないほうが面白いと思います
第6章「量子重力の難題」これが一番おもしろい
第7章「ワームホールは存在するか」答えになってないです
第8章「ひも理論の予言」リサランドールを思い出しました
第9章「宇宙の起源」期待して読みましたが……
第10章「ミステリーノ」著者の造語。小ネタですが、これを章立てしてくれてもよかった。パイオニアとか。

章題見たら、かなり楽しそうだったんですが、読んでみるとがっかりです。
私の理解不足を差し引いても、著者独特のわき道にそれてほったらかしの筆法、尻切れトンボの結末。
著者の人が良いのは理解できますが、わからないをわからないで済まさず、もっと大胆に自説を展開したほうがよかったのでは。結局、謎を提起したまま答えは100年後に丸投げということでしょう。
とはいえ、それが当たり前なんですけどね。量子の世界と宇宙の世界、ミクロとマクロにおいての重力というものの不安定さ、いまだ見つからぬ神の素粒子、重力波さえ検出されず、ビックバンというおとぎ話、現在の最先端の物理学でもわからないことだらけ、なんですね。本当に、100年後には今の概念は覆されている確率の方が高いのではないか、本書のエピローグで著者が匂わせているのは、まさにそのことです。
一番面白かったのは、重力、グラビトン(グラヴィトン)の話題でしょうか。
著者のリチャード・ハモンドは理論物理学者ですが、重力、量子力学が専門であるようです。
だからでしょうか、第6章の「量子重力の難題」が一番、わかりやすかったと思います。
たしかに、「重力」という力は謎なんです。いまでこそ大天体の世界で重力は威力を発揮していますが、ビックバン当初の量子世界ではその存在は無きに等しいですからね。4つの力の統一は今の我々の認知世界においては無理なんでしょうか。グラビトンという重力子はいまだ発見されていません。
そして、著者はアメリカの学者であるからでしょうか、フランスとスイスの国境で展開されているLHC(大型ハドロンコライダー)にはまったく触れられていません。これは少し残念でしたね。
ただし、大げさにいえば今の現段階の物理学の認識において、くだけていえば人類を取り巻く宇宙という空間において、これだけ「わからない」ことがあるということを知るにはうってつけの本だと思います。
そして巻末の著者の問いかけ、「さて、読者のみなさんはどう思われるだろうか?」に従えばいいのです。
世界的な物理学者も、天才数学学者も、算数さえ怪しいこの私も、すべて人間にとって宇宙への距離は等しいのですから。
その見上げる星空の向こうに、きっと誰も見たことのない答えが眠っているのです。
それを想像できるだけでも幸せでしょう、私はそう思います。

「εに誓って」森博嗣

εは赤ちゃんの口みたいですが、イプシロンと読むギリシャ文字です。
Gシリーズ第四弾は「ε(イプシロン)に誓って」。
φ(ファイ)、θ(シータ)、τ(タウ)と順番通り読んでいますと、本作においてεが出てきても、なんだかよくわからないままに、わかったような気になるのが不思議です。
そう、このGシリーズは今のところまだよくわからないのです。
きっと作者も核心は掴んでいるのでしょうが、どうストーリーを創って読者に説明するべきか、その手段がまだよくわかってないんじゃないでしょうか。
真賀田四季はこのシリーズの黒幕ですが、森博嗣の目指すところは、それより高いかもしれません。
我々3次元+時間社会の住人には4次元の世界が理解できませんが、ひょっとすると、読者を導きたい場所は、3次元を超えた、異次元の世界、価値観であるのかもしれません。

冒頭、いきなり加部谷恵美と山咲早月のデート現場目撃かと思われましたが、表向きは違ったようですね。
恵美さんはもう十分、キャラが立ちました。輪郭もしっかりとしています。
山吹は恵美ほどではないですが、まあ例えるならお好み焼きに練り込まれている山芋レベルに隠れた自己主張をしているかに見えます。
Gシリーズ全体のミステリーからは、この二人は独立しています。
いまのところ、あくまでこの二人は一作品ごとのミステリーの立役者ですね。
ギリシャ文字に隠されたシリーズの謎を追っているのは赤柳初郎であり、理解できるのは海月及介です。
「ある一人の天才がいて、その人物が自分の考えるとおりに歴史を動かそうとしている。それが、その人物にとっての理想の形なのかもしれない」。
今回も一見バスの入れ替わりミステリーですが、生と死の入れ替わりでもあります。
柴田久美の座席を基準として前と後ろでは世界が違うのですからね。
書くほうも難しいでしょうが、読む側も難しい、なんともどこが基準であるのか、価値観がふわりと宙に浮くような不思議な展開になってきましたね。四季は象徴なのでしょうか、記号でしょうか。

「魔界転生」山田風太郎

素晴らしいですよ。
1967年の作品で、原題は「おぼろ忍法帖」という何故だかぱっとしない題名でしたが、「魔界転生」として生まれ変わり、映画にもなり(映画は原作改悪でした。小説にとても及びません)、2011年現在でも雑誌劇画のシナリオとしてじゅうぶん通用する内容だと思います。単純に、面白いですからね。そして、本作に限らず、山田風太郎の時代伝奇作品に発想を刺激されたり影響された作品は現代でもたくさんあると思いますね。

物語の背景は寛永15年(1638年)の島原の乱の終結から正保2,3年(1645年)頃、第3代将軍徳川家光の時代です。
キリシタン大名小西行長の遺臣である森宗意軒は秘蔵の洋書などを解読し「忍法魔界転生」をあみだします。
忍法魔界転生とは、誰にでも作用されるものではなく、死に瀕している豪傑、しかもその当事者である豪傑が現世に強い不満、後悔を持っている場合にのみ有効であり、死の間際、想い女と交接すると、一か月後、その女体を突き破り、甦るのです。ただし、あたかも魔界の住人が如く、その甦ったモノは、生前の倫理観など毛ほどもなく、肉欲に徹し、なんびとを殺すことも厭いません。
森宗意軒によって魔界転生した者は、四国丸亀の剣士・田宮坊太郎、柳生流の達人・荒木又衛門、島原の乱を主導した妖童・天草四朗、奈良宝蔵院流槍術の武僧・宝蔵院胤舜、尾張柳生の祖・柳生如雲斎利厳、そして江戸柳生の巨魁にして十兵衛の実父である・柳生但馬守宗矩、言わずとしれた伝説の剣聖・宮本武蔵……の泣く子も黙る7人。
さらに、江戸でこれを助ける軍学者・由比正雪、十兵衛を魔界に誘う3人の妖しきキリシタン美女、紀州根来寺の忍法僧などが暗躍し、背後には紀州五十五万石の親藩大名徳川頼宣が天下を手中にすべくひかえています。
対するは、隻眼の剣侠・柳生十兵衛三厳。イメージでいえば、千葉真一です(笑)。映画「魔界転生」も、テレビ時代劇「柳生十兵衛あばれ旅」も主演は千葉真一です。
ですが、小説の十兵衛は、ユーモラスなところがあるので、若干イメージはずれると思います。
とにかく、魔界からよみがえった剣豪たちに挑むべく、十兵衛と柳生十人衆、お縫、お雛、おひろ、弥太郎の「紀州路あばれ旅」が始まるのです。
意外に、戦いの主な舞台ともなる熊野道や紀州の景勝も詳しく書き込まれています。もちろん、柳生の里も。
本作に限らず、山田風太郎の伝奇ものが読み継がれ、骨格がしっかりしている理由として、はちゃめちゃな伝奇性以外の部分のリアリティがあると思うのです。
森宗意軒というマイナーですが徳川に恨みを持っていたと思われる人物の登用や、柳生一族の微妙な力関係、城郭の建造物の名称にみえるその時代考証の知識の豊富さがあるからこそ、物語が面白いのでしょう。
ピカソだって精緻な肖像画を描いていたように、「基本」の部分が確立されているからこそ、50年後の世界でも楽しく読めるエンターテインメントを残せた、と思うのですね。そのへんが山田風太郎の偉大さではないでしょうか。

「往復書簡」湊かなえ

久しぶりに読みました、湊かなえのミステリー集です。
90ページ弱の読み応えのある短編が三つで構成されています。
「十年後の卒業文集」と「ニ十年後の宿題」は雑誌に掲載されたもので、高校教師である大場敦史が共通の登場人物として繋がっています。物語的には完全に独立しているのですけどね。
最後の「十五年後の補習」は、いかにもとってつけたような題名ですが、その通り本作のための書き下ろしです。
三作全部にに共通しているのは、手紙による応答形式であること。ですから「往復書簡」なんですね。
そして、それぞれ十年前、ニ十年前、十五年前に起こった過去の事件、事故を振り返る、という形です。
その過去の事件事故の謎、真相が手紙のやりとりを通して明らかになっていくのです。
しかしまあ今の時代に「手紙」ですよ。それぞれの話はメールや電話でなく、「手紙」であることが不自然でない背景が作者によって創られているのです。

第1話「十年後の卒業文集」
 これは厳密にいえば十年前ではなく五年前に起こった事故の真相が探られる物語です。「月姫伝説」という伝承を話の核とした高校放送部OBの男女7人の人間模様、過ぎ去った青春の日々が赤裸々に告白されていきます。
確かにどこの世にも消息がまったくわからぬ同級生はいるもんですねえ(笑)勝手な噂が飛んだりだとか。
しかし、いくら十年後で女子の姿かたちは変わっても、同じ部活のメンバーが人違いするでしょうか?
そこらへんが少し残念。後味もよくありません。もっと練れば、素晴らしいプロットだけに惜しい作品でした。

第2話「ニ十年後の宿題」
 定年退職した女性教師が病床から教え子の高校教師に頼み事をします。その内容とは、女性教師がかつて担任したクラスの児童男女6人、彼らの消息を調べるというものでした。その児童たちと女性教師、その夫はニ十年前にある水難事故に巻き込まれていたのです。ニ十年前の真相とは……
1回読んで、パラパラと気になるところを読み返してみたんですが、ラストの竹沢先生への手紙の差出人は古岡でしょうね。ですが、「彼女」とは利恵ではないと思います。つまりハッピーエンドだったと思います。どうでしょ?

第3話「十五年後の補習」
 電線も通ってない異国の村で国際ボランティアをしている高校教師と、その帰りを待っている同級生の恋人の文通なのですが、結婚目前だったふたりには十五年前の事件の記憶が塞がっていました。その事件とは、同級生の男子一人が焼死し、実行犯と目された男子一人が自殺するという凄惨なものだったのです。文通の中で徐々に甦っていく記憶。事件の真相とは果たして!?ふたりは「ゼロ」に帰れるのでしょうか……
謎ときやプロットはともかくとして、ラストは、おっと思いました。湊かなえらしくない、清々しさでしたね。

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