「日本海防艦戦史」木俣滋郎

 地味な割には苦労ばかりの商船護衛。
 “陽の当たらぬ海軍”、縁の下の力持ちだった海防艦の戦記をまとめたものが本書。
 まあ、マニアックといいますか、好きな人以外には何が面白いのかわからないような本でしたね。
 著者の木俣滋郎は戦史研究家で、私は初めて読みましたが、ちょっと文章にクセがあります。

 海防艦という艦種は、だいたい艦隊駆逐艦の3分の1程度の大きさの、航洋性のある輸送船団護衛艦です。
 敵艦隊との交戦を任務としたものではなく、あくまでもその敵は商船を狙う潜水艦でした。
 昭和20年の終戦時までに、建造中の19隻を含めて189隻の海防艦が造られました。
 戦時中78隻が沈没。損傷のため行動不能になったままなのが16隻。戦後海難(掃海中など)で7隻が沈没。
 頭数は駆逐艦並みに造られた海防艦ですが、その大部分は昭和19年になってからの就役です。
 アメリカの主に潜水艦による海上交通線破壊によって、こりゃヤバイとなってから慌てて造り始めたのですが、だいぶ遅かったのですね。海防艦は島の名前が艦名になりましたが、数が増えすぎてそのうち番号制になりました。
 開戦時にも実は海防艦はありました。占守、国後、八丈、そして石垣の4隻です。
 しかしこの時は、北洋漁業の警備が目的で造られた艦種でした。ロシアがソ連になってからオホーツク海で操業する日本漁船が、ソ連の砲艦にいじめられていたのです。当時の日本は今の日本ではなく強面ですから、こんなときは駆逐艦が急行すると、ソ連の砲艦はおっかなびっくり逃げていたのです。今では信じられないことですがね。
 ところがロンドン条約によって軍縮が決まり、貴重な駆逐艦を辺鄙な北方で使うのはもったいない、ということになりました。それで海防艦ができたのです。駆逐艦の3分の1程度の大きさ、馬力、20ノットを切る速力。もちろん建造費、維持費の安さも魅力でした。
 ちなみにこの4隻は小さくても菊の御紋章をつけた立派な軍艦であり、北洋ですれ違った駆逐艦が小艦艇と舐めて「挨拶は?」と信号を送ったところ、海防艦が軍艦(駆逐艦は軍艦ではない)で艦長は駆逐艦の艦長より上位である中佐であることがわかり、慌てて駆逐艦の艦長が内火艇で謝りにいったという実話も残っているそうです。
 その海防艦が、戦況の変化によって大量に建造されることになったわけです。菊の御紋はなくなりました。
 沿岸用の警備艦は駆潜艇や掃海艇がありますが、航洋性はない。かといって速度の遅い輸送船に高速の駆逐艦を使うのはもったいない、そこで燃費も良い海防艦の出番となったわけですね。
 艦長には、神戸と東京にあった高等商船学校を卒業して商船の船長や一等運転士の経験のある者が就きました。兵学校出では間に合わないわけです。操船の腕は抜群ですが、編隊航行や戦闘には素人だった商船乗り。それを新造艦が竣工するたびに、九州の佐伯にあった特設対潜訓練部隊で2週間程度の猛訓練を施して戦場に送り込んでいました。本当ならもっと訓練時間は欲しかったところですが、戦況が許さなかったのですね。
 結局、海防艦は戦時中、アメリカの潜水艦を8隻沈めています。
 これを多いと見るか、たったこれだけ? と見るかは分かれるところでしょう。
 本書では、その多い? 少ない? 撃沈の場面が報告されています。これは確かに読む価値がありました。
 たとえば、第1次ソロモン海戦の成功で意気揚々と帰ってきた重巡加古を地獄に突き落としたS44を、北方水域で撃沈したのは海防艦「石垣」です。これが海防艦による初の潜水艦撃沈でした。昭和18年10月8日です。
 そして、海防艦「22号」は、駆逐艦雷、水無月など日本艦艇16隻を撃沈した米潜水艦のエース格「ハーダー」を、昭和19年8月24日、マニラ沖で撃沈。
 昭和19年11月7日には、マニラ湾で、海防艦「千振」と「19号」が駆逐艦霰など日本艦艇10隻を沈めた米潜「グローラー」を撃沈。昭和19年11月11日、海防艦「4号」は八丈島北方で、伊168などを撃沈した米潜水艦「スキャンプ」を撃沈しました。
 戦闘機の撃墜マークならぬ、“撃沈マーク”を艦橋に描いた海防艦もありました。

 商船団護衛に伴う対潜戦闘。確かにこれが海防艦の主任務ですが、これだけではありませんでした。
 受け身の対潜だけでなく、数隻でチームを組んだ海防隊による積極的対潜掃討作戦、そして機雷掃海、機雷敷設など、使い回しのよい海防艦はまさに縁の下の力持ち的な雑役をこなしたのです。
 それは戦争が終ってからも続きました。
 生き残った海防艦のうち61隻が特別輸送艦として日本人の戦後引き揚げに尽力したのをはじめ、豊後水道や対馬海峡に日本軍が敷設した5万5347個にもおよぶ93式繋留・触発機雷の掃海には21隻があたりました。
 そして昭和22年、すべての戦後業務を終えた75隻の海防艦は特別保管艦として次の運命を待ちました。
 戦時賠償として、67隻がアメリカ、イギリス、ソ連、中国に引き取られたのです。防波堤になった艦もあります。
 アメリカやイギリスは「海防艦に価値なし」と大半はスクラップにされましたが、ドイツに軍艦をたくさん沈められたソ連やろくな海軍のない中国には喜ばれました。なかには中国に引き取られた海防艦「隠岐」のように、昭和57年時点で現役という艦もあるのです。
 日本には、「竹生」「生名」「鵜来」「新南」「志賀」の5隻が残りました。
 これらは後に海上保安庁の巡視船として、昭和37年から42年に解役されるまで日本の海を再び守ることになったのです。

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「百年文庫 駅」ヨーゼフ・ロート/戸板康二/プーシキン

 百年文庫ナンバー37は『駅』。
 収められた3篇の「駅」に関する物語の面白さはまずまず。
 中でも、演劇評論家から推理小説家になって直木賞を受賞した戸板康二の作品「グリーン車の子供」は、新幹線の車内と演劇界という無機質と有機質が融合されたような、一風変わった仕立てのミステリー小説で、古い作品とはいえその新鮮さに驚きながら興味深く読むことができました。
 戸板康二は、かの江戸川乱歩から「探偵小説は小説家志望青年よりも、かえって多方面で一家をなした人が、余技として書いた場合に成功率が多い」と白羽の矢を立てられたそうです。
 これを読んで、なるほどと思いましたわ。
 最近だと、お医者さんの書くミステリーが専門性が高くて人気ですよね。
 専門性という意味からはずれますが、東野圭吾や森博嗣は理系の人間だし。
 他にもたとえば、考古学者とか気象学者、宇宙飛行士、潜水艦乗組員、漁師さんなんかがミステリーを書かれると、小説というものの幅が広がって面白くなると思います、私は。
 その仕事をしている人でなくてはできない発想って必ずありますよね。

「駅長ファルメライアー」ヨーゼフ・ロースト(1894~1939)
 ウィーンから2時間とかからぬちっぽけな駅で、1908年から駅長をしていたアーダム・ファルメライアーの奇妙な運命。
 双子の女の子の父親であり、律儀な官吏であったファルメライアーの身に何が起こったのか。
 それは、1914年3月のある日の惨事に端を発する。駅で急行列車が待機中の貨物列車と衝突したのだ。
 混乱する事故現場で、ファルメライアーは担架に乗せられたひとりの異郷の女性に目を奪われた。
 彼女はロシアの伯爵夫人であり、夫の待つイタリアのメラーノまで行く途中だった。
 怪我の癒えた彼女はしばらくして旅立っていったが、ファルメライアーは彼女を忘れることができなかった。
 やがてヨーロッパを戦火が襲う。第一次世界大戦の勃発だ。軍事総動員令で軍務についたファルメライアーは勇敢な兵士となった。、ロシア語を勉強し、ロシア方面に配属にされた彼が追う影は・・・

「グリーン車の子供」戸板康二(1915~1993)
 老優の中村雅楽に付き合って大阪まで付いてきた竹野は、神経痛で7年間舞台から遠ざかっていた80歳の彼が、復帰の話を持ちかけられて悩んでいると聞いて驚愕する。ぜひとも我楽の舞台をもう一度見てみたい。しかし我楽は、一緒になる7歳の子役の男の子が気に食わないという。
 結論が出ないまま、東京に帰る新幹線「こだま」に乗り込んだふたり。なぜか大阪の支配人の用意した席は別々だった。新大阪で我楽の横にはお人形のようなおとなしい女の子が座り、竹野の横には京都から和服を着た40歳くらいの女性が乗り込んでくる。
 名作です。1976年日本推理作家協会賞受賞作(短編部門)。
 どうしてオモチャに関心を示したのか。なるほどね・・・


「駅長」プーシキン(1799~1837)
 19世紀初頭ロシア。駅と駅は汽車ではなく、馬で結ばれている。
 レールは駅馬路、運転士は御者。そして駅長は十四等官という低い階級だった。当然、苦労も多い。
 1816年の5月、語り手はある駅でそこの駅長とその娘ドゥーニャに出会い、楽しいひとときを過ごした。
 それから3,4年後、再び語り手が駅を訪れたとき、かつては元気だった駅長のシメオン・ヴイリンが、弱々しい老人に変わってしまっていた。聞けば3年前、騎兵隊の士官がヴィーニャを見初めて仮病まで使い、奪い取るように連れ去ってしまったのだという。駅長は諦めずにふたりの行方をたどり、ペテルブルグに向かうのだが・・・
 今から200年くらい前の小説です。
 インフラは大きく変わりましたが、変わらないのは人間です。これは200年後も同じことでしょう。



 
 

「感染遊戯」誉田哲也

 姫川玲子シリーズ第5弾。
 主人公が姫川ではないのでスピンオフという扱われ方をされていますが、私はそう思いません。
 正統な、シリーズに連なる作品であると思いました。
 特に、最後の作品で大団円を迎えたのを読んで、なおさらそう思いましたね。
 まあアクの強いキャラクター、特に勝俣なんて私は大嫌いなんですけど、もうすでにこのシリーズは姫川玲子というヒロインの活躍だけを描く箱庭的世界を超えてしまっていますから。
 極端な言い方をすれば、姫川が殉職しても作品は続きがあるような気がします。

 玲子の天敵・勝俣健作が主人公の「感染遊戯」で始まり、短編集「シンメトリー」で不気味な登場をした元刑事・倉田修二を描く「連鎖誘導」、そして姫川班解体後の葉山則之が絡む「沈黙怨嗟」、ここまでは異なる3つの物語(テーマは腐った官僚)かと思っていたものが、ラストの「推定有罪」で一気に融合します。
 もちろん、勝俣健作、倉田修二、葉山則之が一堂に会し、あくまでも姫川玲子は脇役です。
 ちなみに、前作「インビジブルレイン」で所轄署に異動になった姫川ですが、ここでは本部の殺人犯十一係に返り咲いています。ということは、私はまだ読んでいませんが、次作の「ブルーマーダー」は所轄での姫川の活躍を描くはずですから、時系列では本作より前ということになるかと思いますね。

「感染遊戯」
 別れた女房の理不尽な金の請求にもめげず、今日も靴底をすり減らす悪徳刑事の勝俣健作。
 彼は「三軒茶屋会社役員刺殺事件」の特別捜査本部を訪れ、所属する姫川玲子に意味深な物言いをする。
 それは、15年前。勝俣が公安に移る前に捜査一課の刑事だった時代。同じ世田谷区内で、東大卒25歳の大手製薬会社社員が自宅玄関で刺殺された事件があった。捜査は難航するが、やがてひとりの老人男性が出頭し、事件は解決したかに見えた。老人は犯行を自供したものの、それ以外は完全に黙秘したまま送検された。
 やがてこの老人は獄中で生を終えるが、この事件の裏には、免疫不全症の一人娘の自殺、そして薬害感染症問題が絡んでいたのである。

「連鎖誘導」
 警視庁捜査一課九係警部補だった倉田修二の人生を変えたのは、8年前のたった一本の電話である。
 18歳になった大学一年生の息子・英樹が、交際中の女性を殺害した容疑で神奈川県警に逮捕されたのである。
 人を殺したら、償いは命でしか、いや命でもできない。できないが、それでも命を差し出すしかない。そう思って刑事として生きてきた倉田にとって、息子のやったことは許せるものではなかった。
 倉田はそのとき「麻布十番路上殺傷事件」の捜査本部にいた。34歳のOLが刺殺され、45歳の外務省職員の男性が重傷を負った事件である。この事件は倉田にとって、警察官人生最後のヤマになるだろう。
 そして、深い、あまりにも深い闇を覗きみることになるのである。後の彼の人生のような・・・

「沈黙怨嗟」
 本部捜査一課で3年弱勤務した後、姫川班は例の事件で解体した。巡査部長を拝命した葉山則之が北沢署の刑組課強行犯捜査係に配属されて3ヶ月。殺人事件だけを追いかけた本庁時代とはまったく異なる所轄仕事をこなさなければならない。この日、葉山が担当したのは、年寄り同士が暇つぶしに将棋を指しており、一方が待ったをかけたことに腹を立て、もう一方が殴ったという案件。実はこの事件、殴られたほうの年寄りが、年金のゴッドファーザーと言われた元厚生事務次官だったことが明らかになり、葉山は真相を究明するうち、「待った」には深い怒りと悲しみがあったことを知る。

「推定有罪」
 長塚利一とは、冒頭の三軒茶屋会社役員刺殺事件の被害者である。これで、3つの物語が繋がることになる。
 長塚利一は、元厚生省薬事局長。非加熱製剤の危険性を認識していながら回収せず放置、薬害感染事件を引き起こした張本人だった。15年前、ある事件で息子を亡くしている。
 捜査一課殺人犯八係として湾岸署の帳場にいた勝俣は、いきなり杉並署にいって殺人未遂のホシの取り調べを担当してくれとと言われた。この容疑者は、自分が相手を刺す前から血まみれだったというのだ。
 案の定、加納という引きこもりの25歳の男は、2件の殺人事件を自供した。彼が殺したふたりは元官僚であり、加納は怒れる国民の声を代表して腐った官僚どもに正義の鉄槌を喰らわせてやったのだという。
 続発する官僚殺し。しかし、3人目の長塚利一を殺したのは、加納ではない。
 これら一種のテロの、共通点は何か。
 8年前に人生がごく短いうちに反転してしまった倉田修二の黒い希望、そして姫川班の解体から2年半、再び本庁へ這い上がることを無意識に願望する葉山則之、ふたりを自暴自棄の悪徳刑事・勝俣健作が引き寄せ、事件の真相へと迫る・・・

 題材が題材だけに「感染遊戯」というタイトルだけはいただけないと思いましたが、面白かったです。
 倉田の人生ではありませんが、哲学的にも奥深かったと思います。人生とはなんでしょうか。
 倉田の「連鎖誘導」は、ラストの衝撃といい、名作と云ってもいい短編でした。
 復讐は復讐を生む、しかし復讐せずにはいられない。どっちの気持ちも理屈もわかる。
 人を殺したなら、命をもって償わなければならないというのも、いわば正論でしょう。
 しかし、人を殺すといっても、過失致死や動機殺人、無差別殺人などを同列に語れません。
 動機には思い込みや誤解も含まれます(これが怖い)。
 これを書いている私や読んでいるあなたの心にも、いつの日か消しようのない殺意の炎が燃え上がるかもしれません。
 許すことは、恨むことの百倍難しいのです。


 
 
 

「素直に生きる100の講義」森博嗣

 すぐ読める2ページのエッセイが100篇。大人気? 森先生の講義シリーズ第3弾。
 
 エッセイは森博嗣流に云うとエッセィなのですね(*^_^*)
 私はこの方の作品は小説以外読んだことありませんでしたし、それもデビュー作である「すべてがFになる」を10年落ちくらいで読んでからなので、まあそれ以来思い出したように読み続けてはいますが、西之園萌絵や瀬在丸紅子といった魅力あるキャラクターを生み出した作家のおっさんである、という認識しかありませんでした。
 セメントだかコンクリートが専門の大学の先生だった、ということは何かで見て知っていましたけど。
 画像も見たことないので、どんな方であるのかイメージがありません。
 ですからエッセィである本書を読んで初めて、小説生産機ではなくて息をする生物としての森博嗣を認識しました。
 読み始めてすぐ感じたことは、
 この人は変わっている(変人)のではない、ふつうの人よりよく考えているのだ。
 ということです。
 書いてあることの9割は共感できました、私の場合はね。
 「知らされる」のではなくて、ああ、なるほどと「気づかされる」ことがほぼすべてです。
 それは無意識の意識といいますか、私なぞでは言葉を伴って表には出てこない事実を、常に考えている及び考えるセンスがある森博嗣という人間だからこそ、わかりやすい形で具象化している、そしてそれができるのでしょうな。
 まあ、一冊のエッセィを読んだくらいで何がわかるのかと問われるとそれまでですが、タイトルの「素直」を額面通りに受け取って本書を読むと、私はそう感じます。現在はともかく、生きづらかったと思いますよ、この方。それだけ優れているということです。

 各編には太字で強調された部分があって、それを中心に私が感銘した箇所を羅列しておきます。
 
 どうして「上手くできません」と言うのだろう。「上手くできない」のではなく「できない」のである。上手くなる方法は、作り続けることである。
 時間がないからやれないのではなく、やれないから時間がないと言うことに気づくべきだ。原因と結果を逆に認識しているのである。
 お金がないから、体力がないから、才能がないから、時間がないから、などの「できない理由」のうち、切実なのは「時間がない」だけ。時間さえあれば、ほかのものはなんとかなる。
 まったく知らない人のブログを読んだりするのが私の趣味のひとつである。そこで見つけた法則だが、日頃から次々と面白いことをしている人は、年末に一年の総まとめをしない。それは、次の年に何をするのか、という方向に既に目が向いているからだろう。
 「森博嗣はオワコンだ」という発言をときどき見かけるのだが、僕もその通りだと思う。というか、それは10年くらい前に感じたことだ。
 「あいつ、歳を取ったな」などと感じるには、「歳を取る」とどう変化するのかを実感している必要がある。つまり「あいつ、歳を取ったな」と感じるのは、自分も歳を取っているのである。
 創意の衰えこそが人間の老化ではないかと感じる。実際にボケてしまったりするのは、これが大きく関係しているように思う。
 子供の頃は国語という教科のない国へ行きたかった。今も同じだ。作家になって沢山の本を書いたけれど、書きたくて書いたわけではない。お金がもらえるから書いているだけだ。ここが肝心である。
 「応援」とは、その選手の結果がどうであれ、絶対に文句を言わない、そういう精神のもののはずだ。負けて帰ってきても、「ありがとう」と感謝が言えるのが、本当の応援というものだろう。応援することで、心が豊かになるのだ。
 綺麗事を言う人は、たいていの場合、自分の家さえ綺麗なら良い、と考えているらしい。だから、発電所や軍隊を県外へ、国外へという主張になる。でも、地球から外に出すことはできないわけだから、トータルとしては意味が無いようにも思える。
 黙っていたほうが良い、という場合は本当はない。ただ、「言い方」に気をつけたほうが良い。

 まだまだあるんですが、キリがありませんから。
 改めて思い起こすと、「気づかされる」だけでなく「知らされた」ようなこともありました。
 たとえば、「応援」のこと。これは地元のJリーグチームの応援をしている私が、まったく思いもしなかった、真実でした。
 何度、ピッチに向かって「金返せ、コラア! 」と怒鳴ったことでしょうか(笑)
 森博嗣は20年ほどオリンピックさえ観ていないほどスポーツに関心がないようなのですが、見事に中心を突いています。スポーツに関するお話は他にも多かったように思いますが、どれも新鮮でしたね。
 もちろん、頭が「?」になったり、共感できない部分もありましたが、総じて勉強になりました。
 ひとつ欲を言えば、STAP細胞事件について何かコメントが欲しかったように思います。
 あのことについて、この方がどう感じているのか考えているのか、それだけは非常に興味があります。
 森先生の100の講義、ためになりました。ありがとうございましたm(__)m


 
 
 
 
 
 
 

「インビジブルレイン」誉田哲也

 姫川玲子シリーズ4作目(長編としては3作目)です。
 本作にして初めて、どうしてこのシリーズがこれほど人気があるのか、本当に思い知らされました。
 もう、前作までとは比べ物にならなかったですね、私にとっては。
 誉田哲也の本はこれまでにもチラホラと読んでいたのですが、こんなに力がある作家だとは思っていませんでした。
 巻末に玲子役の竹内結子との対談が載っているのですが、そこで作者は「姫川玲子は僕の作家としてのキャリアを引っ張ってきてくれた存在」と語っていますが、ほんとうにその通りでしょう、謙遜でもなにでもなく。
 ある意味、姫川玲子は作者である誉田哲也の枠を超えてしまったのですね、つまり作者より大きくなって、逆に作者を引っ張っていくようになった、でも命を吹き込んだのはやはり誉田哲也なわけですよ。
 
 まあ、べた褒めなわけですが、それほど面白かったですね今回は。
 そのなかで、特に良かったところを云わせてもらうなら、そりゃもう玲子とマキタの刹那の恋でしょう。
 展開2割、作者の描き方8割、かな。
 正直言って誉田哲也がこんなにラブシーンの描き方が上手だったとは、想像もしていませんでした(*^_^*)
 ほぼふたりとも、一目惚れなわけですよね。玲子もマキタもその筋では一流の存在ですが、一般人とは違います。
 おそらく、お互いに似たもの同士ということを感じ取ったのでしょう。さらに、3歳上ながら部下である菊田巡査部長との関係が進展せずに風化してしまったような印象からすると、31歳になった玲子はなにか大きなものに包まれたかったのではないですか。作者は、この作品を書く前からそれ(玲子の恋愛)を想定していました。だから、牧田を31歳の玲子より歳では一回り上、身長170センチの玲子よりはるかに高い2メートル近い大男にしたのではないでしょうかね。
 まあ、ふたりが出会い、お互いの心が揺れ、駐車場のラブシーンがあり(あれも車の中という設定が抜群だったように思います)、クライマックスの疑心があって、ラストで失うという・・・シーンの描き方、展開、すべてが良かったです。
 実は社会的に敵同士であるという、そういう背徳感がさらに、場面を燃え上がらせました。百点満点でしたね。
 もっかい読みたいくらい。言うことなし。
 なんてね、実はラブシーンは3回ほど繰り返して読んだのですが、これは内緒です。

 あともう一点。今回のエピソードは、これまでの猟奇的殺人事件とは一線を画していました。
 そう、組織的犯罪の本職・ヤクザ屋さんの登場。
 リアル現実では絶対に会いたくない種類の人たちですが、サスペンスでのヤクザの存在感はやはりすごい。
 特にこういう警察モノだと、物語にヤクザが出てくることによって、相当幅が広がるように思います。
 その点で本作を見ていくと、まず最初の殺人事件の被害者が四次団体という末端組織の下っ端とはいえ、暴力団の構成員なわけですよね。このシリーズでは、一貫して国内最大のヤクザ組織は大和会という名称です。
 で、事件があったのは東中野ですから、当然のように中野署に捜査本部が立ちます。
 姫川ら捜査一課十係も参加しますが、彼ら殺人犯捜査係だけではなく、ヤクザが殺されたということで、捜査本部には警視庁の組織犯罪対策部(マル暴)の刑事も加わるわけですよ。
 いや、加わるなんて遠慮したもんじゃない、実質彼らが捜査方針を引っ張るわけですね。
 刑事部捜査課が殺人事件という現場の状況、証拠から事件の概要を俯瞰し、殺人犯の輪郭を定めていくのと違って、組対部は殺された暴力団構成員の縦横の人間関係、属していた組織内外の問題などすべてをヤクザという枠組みの中で事件を捉えようとします。ふたつのイデオロギーが違う組織同士、犯罪へのアプローチがまったく異なるわけです。
 うまく回るはずがありません。
 しかしそれでも、強引に組織犯罪対策部が捜査のイニシアティブをとったのはなぜか。
 最近、なんらかの理由で情報が漏れ、拳銃や薬などガサ入れの失敗が続き、組対部の尻に火がついていたのです。
 捜査本部に入った組対4課には、上層部から「なんとしても刑事部より先にホシを挙げて失点を取り返せ」と言明されていたのでした。だから、今回だけは華を持たせて欲しい、と刑事部側の和田捜査一課長は組対側から頼み込まれていたのです。
 姫川とペアになったのは下井という元捜査一課で現在は所轄の組対課刑事でしたが、いい味だしてました。
 そういう面でも、本作は背景も良かったということです。これまでは捜査課や十係の内部に事情が限られていましたから。物語が広がりました。
 具体的にあらすじは、ここから本部への真犯人を特定するタレ込みがあり、その真犯人とされる人物がなんと9年前に起こった殺人事件の被害者遺族であると共に、その被疑者死亡となった事件が捜査ミスによる冤罪を引き起こしていたのではないか、という深刻な問題が惹起され、警視庁刑事部幹部による“隠蔽”が画策されます。姫川はこれに反する形で単独捜査を行うことになってしまうわけですが・・・
 もう古い作品なので、結果を書いてしまいますが、ラストで十係は解散になってしまいますね。
 しょうがないとはいえ、姫川玲子は、所轄である池袋署刑事課強行犯捜査係担当係長に左遷されてしまいました。
 再び、彼女は霞ヶ関の本部に這い上がることは出来るのでしょうか・・・


 
 
 
 
 
 
 
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