第二級活字中毒者の遊読記

酒の肴は一冊の本。旅の友も一冊の本。活字中毒者の書評と読書感想文。

Archive: 2016年04月  2/4

「箸墓古墳」大阪府立弥生文化博物館編

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 とても面白く有意義で、意外に読みやすい本でした。 なんでタイトルの箸墓古墳は奈良県にあるのに、大阪の博物館の本かというと、平成26年3月25日から当の博物館でなされた、5名の講師による連続講演の内容をまとめたものが本書なのです。 5名の考古学者の方々は、敬称略で石野博信(徳島文理大教授)、岸本直文(大阪市立大教授)、福尾正彦(宮内庁書陵部陵墓調査官)、今尾文昭(橿原考研総括研究員)、森岡秀人(日...

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「死闘の水偵隊」安永弘

 「安さん、待つか?」 射出指揮官の掌整備長が大声で叫ぶ。発進したわが機に、上空から襲いかかる敵機の頑丈な頭部が一瞬心をかすめる。迷う間はない。本艦八門の20センチ主砲斉射の爆風に、わが機は主翼をねじって震動する。 飛行機乗りが船の上で死んでたまるかッ。 「出まーす」 絶叫して発艦する。離艦と同時に私は右翼を傾けて低空旋回をしつつ、「平野、いいかッ」と機銃準備を確認した。 ミンドロの島影は多分右斜...

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「羊と鋼の森」宮下奈都

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 僕は何も聞かず、邪魔にならないよう、ただそこに立って見ていた。 通っていた小さな小学校にも、中学校にも、ピアノはあったはずだ。 ここにあるようなグランドピアノではなかったけれど、どんな音が出るのか知っていたし、ピアノに合わせて歌ったことだって何度もあった。 それでも、この大きな黒い楽器を、初めて見た気がした。 そこから生まれる音が肌に触れる感触を知ったのももちろん初めてだった。 森の匂いがした。...

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「弥勒の月」あさのあつこ

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 弥勒シリーズの第一作。 人気時代小説シリーズとあって、期待していたよりも断然面白かったです。 あんがい本格的といいますか、作者には失礼ですが、こういうイメージはまったくありませんでした。 中学校の一学期で「こいつはトロいだろ」と思ってた奴が、百メートル12秒くらいで走ったような衝撃がありました。 これ全部で5作くらいあるんですかね? 楽しみだな。 あらすじ。 舞台は江戸時代の江戸市中に間違いあり...

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「二人ノ世界」松下隆一

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 「あんたらにな、役に立たんどころか人様に迷惑かけて、生きてるもんのつらさがわかるか? 毎日毎日、一日中天井見上げて、飯食わせてもろて、垂れ流して寝るだけの生活や。死ねるもんやったらとっくに死んでるワ」 文句なしにすごい小説。 完璧なまでにストレスのない筆力、よどみがなくて先が読めないプロット、社会性と文学性の高いレベルでの融合。 著者は脚本家で、これが初めての小説とのことですが、これだけのものが...

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