「君の膵臓をたべたい」住野よる

 総合病院の待合室で「共病文庫」と名付けられた日記を見つけて、つい読んでしまった「彼」。
 そこには、高校のクラスメイトの女の子の、家族だけしか知らない“秘密”が綴られていた。
 しかし、それをきっかけに、ふたりは親しくなる。
 クラス随一の地味で根暗な少年と、明朗快活で容姿端麗、クラス一の人気者の少女。
 正反対な種類の人間であると自他共に認めるふたりの、暖かくて切ない触れ合いを描いた、傑作青春小説。
 
 なんとも切ない。
 正直云って、「彼」と同じところで私も泣きました。255ページです。
 普通、こらえきれんでしょ。これはたまらんな、飲みにでもいこかと思いました。
 でも読み終わったところで、少しだけ顔を空に向かって上げることができる、前に向いて進みたくなる、そんな小説ですね。
 どこか救われたような感じも残っています。
 桜良のポジティブな考え方に感銘したからでしょうね。
 彼女の日記のタイトルは、闘病日記ではなく共病文庫であり、その理由は「不治の病に冒された自分の運命を恨まない」から。
 出会いは偶然でも運命でもなく、今まで自分がしてきた選択の結果であるという考え方も大好きです。
 これは「彼」が共病文庫を読んでしまったのは偶然ではない、という想いも込めれているのでしょう。
 前向きだなぁ。
 彼女のポジティブシンキングのおかげで、「彼」も救われたし、また読者も救われたのではないですか。
 体はなくなっても思いはずっと続いていくのです、人と触れ合ってその思いはリンクしていくのですから。
 生きているということは、誰かと心を通わせること。その通りだよね。
 あなたは誰かと心を通わせる生活ができていますでしょうか・・・私はどうかなあ。
 
 それにしても、いい意味で軽くて、味わいのある物語でしたねえ。
 「セカチュー」と似ているようで似ている箇所は実は一箇所しかありませんから。
 物語としてあっちが上かもしれませんが、読んでプラスになるのはこっちです。
 登場人物と同じくらいの高校生が読んで、感受できたならば、すごい勉強になると思います。
 もちろん、オッサンオバハン老若男女、誰でも選ばずに何かを感じ取ることができる小説です。
 今、25万部売れてるそうです。不思議ではありませんね。

 大事なんですよう、男子にとって女子の友達は。
 共学ならば、よほどのことがないかぎり、知らず知らず相性が合って異性の友人ができると思います。
 もちろん、なれるタイプとなれないタイプがありますがね。
 男子の周辺3メートルに近づいただけで風呂場で百回くらい体をこすって消毒する女子もいますからね、中には。
 でもこの小説で桜良が言っているのは、「なれるタイプになろうよ」ということだと思います。
 鼻毛が10センチ伸びてるとか、風呂に半月入ってないとか、そういうんじゃないかぎり誰でも不思議とできるものです。
 そしてこれがまた、この異性の友人というのが、後々の人生にすごく効いてくるときがあるんですよ。
 たとえば男同士だと年取るにつれ、何らかの損益計算がついて回りますからね。
 古くて長い異性の友人にはあんがい、そんな憂き世を超越したところがあって、思わぬ時に力になってくれたりします。
 ただし、好きになっちゃダメですよ。ある意味、恋人よりも重要な存在ですから、感情や性欲で壊しちゃあいけません。
 この小説でよかったことは、彼らが彼氏彼女ではなかったことです。ならなかったことです。
 桜良にとっては彼だからよかったのであり、直樹にとっては桜良以外ではあり得なかったことです。
 これは恋人同士ではできなかったことでした。それ以上に、大切で貴重な関係でした。
 だから、この気持は、彼の中で永遠に続いていくのです。
 すなわち、彼女が生きているということなんですね。
 最後になりましたが、桜良さんに「良い言葉、ありがとう」と言いたいです。


 
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「下山事件 暗殺者たちの夏」柴田哲孝

 昭和24年(1949)7月6日未明。
 足立区五反野の国鉄常磐線の下り線路上で、人間のものと思われる肉塊が散乱しているのが発見された。
 後にこれが、前日の午前中から行方不明になっていた下山定則初代国鉄総裁の轢死体であることが判明。
 いわゆる、昭和史最大の謎といわれる“下山事件”である。
 事件が起きた時、国鉄は運輸省から独立し、日本国有鉄道公社として生まれ変わったばかりだった。
 無理に担がれる形で運輸省事務次官から初代国鉄総裁に就任してわずか1ヶ月の下山は、9万5千人規模の大リストラの渦中にあり、過激な左派労組との交渉の矢面に立っていた。
 こうした世相の中での下山総裁の衝撃的な死は、事件当初から様々な憶測を呼んだ。
 人員整理を苦にした自殺だったのか、もしくは何者かによる他殺だったのか――
 戦後復興期の日本の闇に巣くう魑魅魍魎の暗躍を真実に基いて炙りだした迫真の昭和ミステリー。
 戦前は世界を震撼させたゾルゲ事件を暴き、戦後は検事総長としてロッキード事件を指揮した日本検察史上最強の検察官・布施健でさえ、「他殺に間違いなし」と確信していながら、一敗地に塗れた謎の事件の真相とは!?

 作者の柴田哲孝さんは、10年前に「下山事件 最後の証言」というノンフィクションを著しています。
 私、これを忘れてたんだなあ。
 本作を読み始めて、そういえばテレビで観た覚えがあって、調べてみると同じ作者だったという。
 作者の祖父の23回忌に、祖父の妹である大叔母が突然、「下山事件をやったのは、もしかしたら兄さんかもしれない」と言い出したのです。それがきっかけで、作者は下山事件という迷宮に迷い込むことになりました。
 そして、事件から約60年経って、謎の真相に限りなく迫ることができたのですね。
 本作は、事実以外描けないノンフィクション本を土台に、その間隙を想像で肉付けした、フィクションです。
 ですが、作者自身も言っているように、極めて真実に近いフィクションになっています。
 下山事件に深く関わったかもしれない作者の祖父は、本作で柴田豊というキャラクターで登場し、昭和史の深い闇に眠った真実を掘り起こすきっかけとなった大叔母は、柴田未子という名で登場しています。
 「下山事件 最後の証言」を読んでいない私は、どこがどうフィクションなのか細かいところがわからず、読む順番を間違えたかなとも思いましたが、読み終えた今は、これからフィクションのほうをを読んでみるのもまた面白いかなと感じています。

 まあしかし、怖いね。怖い。
 陰謀は怖い。
 最強の検察官布施健と解剖の権威である東大の古畑種基博士が「死後轢断で他殺」と断言しているにもかかわらず、警察捜査に強力な圧力がかかって、事件が有耶無耶になってしまうのですから。
 列車に轢かれた下山総裁の遺体には、血がほとんど残っていませんでした。
 彼は自殺と見せかけるために線路に置かれただけで、そのときには脇の下から血を抜く拷問によってすでに死んでいたのです。満州式の拷問。殺ったのは大陸系の殺し屋です。
 しかしその背後には、満州の特務機関を母体とする謎の商社とそれと結託するGHQ内部の謀略部門がありました。
 鉄道と電力の復興をめぐる利権に食い込んでいた彼らは、国鉄内汚職を暴き、大リストラをしながら膨大な予算を必要とする電化に乗り気でない“真人間”の下山総裁に業を煮やしていたのです。
 時勢柄、大リストラで敵対する非合法活動も辞さない共産党系の労組に疑いがかかることも考慮にいれ、なおかつ自殺にみせかける用意周到な計画でもって、目の上のたんこぶを亡きものにしたのです。

 結局、あの戦争だって私たちはその責任の所在を軍部に向けがちですが、こうした軍属の軍需産業ですか、日米を問わず戦争で金儲けしていた連中ですね、そうした連中の利権のせいでもあったのではないですか。満鉄しかり。
 右翼、左翼、元中野学校出身の特務機関員、GHQ、大陸浪人、在日朝鮮人。
 様々な思惑が入り乱れているようで、結局はカネでしょ。
 しかしまあ、事件に関わった朝鮮人の李中換を取り調べた文書が紛失し、事件から30年後の1979年になぜか米国立公文書館で出てきたというのが、この事件の本当の黒幕が誰かということを一番暗示している出来事ではないかと思いますが、どうでしょうか。戦争をやるなら絶対に負けちゃだめだと改めて思いました。やりたい放題やられて、哀れです。


 
 
 

「空母『飛鷹』海戦記」志柿謙吉

 副題は空母「飛鷹」副長の見たマリアナ沖決戦。
 著者は、厳しい指導で知られた元兵学校教官の志柿謙吉大佐(終戦時)。海兵50期。
 内容は、第一部と第二部に分かれており、第一部は著者が先任参謀を務めた第24海軍特別根拠地隊(本部アンボン。バリ島などのある小スンダ列島から蘭領ニューギニアまでをい管轄する)の奮闘の模様を、第二部は副長として乗り組んだ空母「飛鷹」で迎えたマリアナ沖海戦の死闘の模様が収められています。
 当初こそ「なんだ、飛鷹の話だけじゃないのか」と少しガッカリしましたが、なかなか、この第一部も面白い。
 館山と横須賀の海軍砲術学校で教官をしていた著者は、陸戦訓練中にいきなり転勤が発令され南方の前線へ。
 昭和17年2月5日のことでした。
 アンボンの第24特別根拠地隊に着任した著者は、参謀職だけでなく民政部長も兼ねていたので、原住民の宣撫工作やオランダ軍の壊していったインフラ再整備、島嶼の残敵掃討など忙しい日々を送ります。
 オランダ軍に虐げられていたジャワやニューギニアの旧王族との折衝の話もあり興味深かったです。
 なかでも一番印象に残ったのは、アンボンの現地で造船所をしていたオンキーホンという凄腕の溶接職人の話。
 中国人の彼はヨーロッパで造船技術を留学習得した一流の技師であり、著者は彼を日本軍に協力させることに成功します。
 軍備の貧弱な根拠地隊が鹵獲したイギリス製40ミリ機銃を、日本の優秀な海軍工廠の技師が揃った工作船に見せて同じものを作ってもらおうとすると「半年かかる」とすげなく言われたのですが、オンキーホンはわずか半月で作製し、試射も上々であったそうです。
 この機銃は見事、オーストラリアから空襲にきたハドソン爆撃機を撃ち落としました。

 昭和18年8月18日に護衛空母「雲鷹」副長に着任した著者は、わずか2ヶ月で今度は「飛鷹」の副長へ異動。
 飛鷹は世界一周航路用の豪華客船「出雲丸」を土台にした改造空母です。
 なんと飛鷹、燃料満載時あるいは未載時は右舷に7度傾斜するようになっていました。
 新たに副長となった著者はこれが許せず、工廠と粘り強く交渉してバラストを積み込み、傾斜を3度に減じることに成功します。なぜ7度の傾斜を軍令部が放っておいたかというと、中型とはいえ特設空母である飛鷹が燃料を満載して遠方に出撃することを当初は想定していなかったのですね。ところが日本の正規空母がどんどんいなくなって飛鷹や隼鷹などの改造空母が第一線の機動部隊母艦になってしまいましたから。
 他にも飛鷹のトイレは構造上たまに水が逆噴射し、ウンコをしながら全身が水浸しになってしまうときがありました。
 これも著者が、改善しています。
 副長という仕事は大変です。艦長の陰日向に、時には柔らかく時には強面で事に当たらなければなりません。
 この点空母は特に難しく、というのは毛色のかわった飛行科がいるためで、いわばお山の大将であり、これはなかなか統御しにくく他科との折り合いも悪いので、副長として留意しなければならない問題でした。
 わかるような気がするなあ。
 艦の副長の書いた本を読んだのは、これが初めてだと思いますが、色々違う視点からの考察が鑑みれて勉強になりました。

 昭和19年6月、最後の日米機動部隊の激突となったマリアナ沖海戦で日本は惨敗、飛鷹も撃沈されます。
 当初から司令部のとったアウトレンジ作戦に、「そんな弱腰で勝てるか」と著者は反対しており、艦長(横井俊之大佐)を説得して作戦変更を具申していました。しかし、小沢治三郎中将は「今回はこのまま行かせてくれ」と受け付けませんでした。
 著者曰く、艦隊司令部の先任参謀であり著者と兵学校の同期である大前敏一大佐は、兵学校の席次こそ2番で恩賜の短剣組でしたが、私心が勝っている人物であり、その立てる作戦を著者ら彼を知る幕僚は危うんでいました。
 結果、まあ、アメリカのVT信管のせいもありますが、惨敗。
 しかも、急に敵機動部隊を捕捉して作戦行動に移ったため、飛鷹は自差の修正ができませんでした。
 自差の修正は磁気のある艦内ではなく、陸地でやらなければ正確にはできません。
 このため、せっかく満を持して攻撃に飛び立った飛鷹航空隊は、自差が狂っていたために、目指す敵機動部隊にはほとんどが辿りつけなかったそうです。こんな話、初めて聞いたね。
 さらに、翔鶴と大鳳が沈み、いったん艦隊は北上に退避しかけたのですが、くだんの大前参謀が「このままではいかん。もう一度攻撃したらどうか」と提案し、作戦は継続されることになったのです。
 これが飛鷹の明暗を分けました。
 たちまち敵航空隊の雷爆撃に襲われ、傷ついたところを潜水艦にとどめを刺されました。
 当事者らしく、このときの描写は生々しいです。
 不幸中の幸いは、駆逐艦「満潮」(艦長田中知生少佐・海兵57)が、ただ一隻残ってずっと飛鷹の生存者を救助してくれたことです。このために死を覚悟して艦内に残った艦長以下、飛鷹の乗員は3分の2が助かったのです。
 しかしながら、死力を尽くして戦った飛鷹の生存乗組員たちは、転属先が決まるまで、著者も含め、呉の三ツ子島に隔離されてしまいます。軍令部の敗戦隠蔽体質ですね。ミッドウェー開戦の惨敗後にもありました。
 何を今更、敗戦隠蔽なのかと。
 この後、著者はフィリピン方面の最前線へと送られるのですが、その模様は「回想レイテ作戦」という著書になっているようです。ぜひとも読んでみようと思っています。


 
 

「すぐそばにある『貧困』大西連

 「貧困問題」と聞くと、自分とは関係のない、どこか遠い世界の話だと思う方も多いでしょう。
 でも、いまや日本人の6人に1人が相対的貧困状態にあるとされ、僕たちと貧困を隔てる壁は、限りなく薄く、もろく、そして見えづらくなっています。


 相対的貧困とは、その国で生活している人のなかで、どのくらいの人口が平均と相対的に貧困状態にあるかという指標で、国民所得の順番の真ん中の値の半分に満たない人の割合を指すそうです(所得平均ではない)。
 2012年の場合、真ん中の方の所得は244万円だったので、その半分にあたる122万円以下の方が「相対的貧困」とされ、人口比では16・1%いたそうです。
 多いのか、少ないのか、ちょっと私にはわかりません。
 しかしこの数値は、OECD諸国(経済協力開発機構)の中では上から6番目(1位はイスラエル)という高位なのです。
 実に6人に1人。しかも近年は増加傾向にあるようです。
 厚労省のホームレス概数調査にしても、ホームレスの人の数はグラフ上では年々減少していますが、これは国が定義するホームレス状態であって、近年注目されているところのネットカフェ難民や派遣切りによる放浪、24時間ファーストフード店の利用など、時代的に多様になっているホームレス状態を表したものではありません。
 生活保護の受給者は約217万人もいます。60人に1人の割合です。
 確実に、日本人の格差は広がり、ドロップアウトした人には底なしの貧困の穴が、大きな口を開けて待っているのです。
 そして、私にもあなたにも、近い将来どころかひょっとしたら明日にでも、その大きな黒い穴に落ちる可能性はあるのです。

 かといって、「格差是正だあ!」とか叫ぶつもりは私にはありませんね。
 人間というのは貧乏から遠ざかろうと頑張って働くものだし、誰もが人よりいい生活をと思いがちな存在です。
 それが人間の本質でもあります。今更敗退した共産主義に繋がるような格差是正は絶対に認められないですね。
 格差があって、当たり前なのです。この今の社会は。
 「格差是正」を叫ぶ政治家ほど、信じられない人間はいませんよ、きっと。
 ただ問題は、どうしても働けない、働きたいんだけど働けなくて食べていけない人をどう社会で助けてあげられるかということなんだと思います。
 これはどうにかしなくてはならないのと違いますか。
 再びその人たちが、日本経済の第一線に返り咲くように、補佐をすることは結局、自分を助けることでもあるのですよ。
 かつて私はこんな話を聞きました。
 南米のある国の大統領が来日したとき、日本のホームレスを見て、驚愕したそうです。
 「日本のホームレスは新聞を読んでいる! 彼らは文字が読めるのか!?」
 海外のホームレスは教育を受けられなかった方が多いため、識字率が低く、新聞なんてとても読めない人が多いのです。
 この大統領は改めて、ホームレスが新聞を読んでいる日本という国のレベルの高さに感心したそうです。

 され、本書の著者の大西連さんは、生活困窮者の相談支援活動を展開する認定NPO法人自立生活サポートセンター「もやい」の理事長をしておられる方。
 理事長といってもまだ若く(1987年生まれ)、ホームレスの方の生活保護受給申請補助やらアパートの保証人やらで、最前線で奮闘しおられるようです。
 なんでも高卒でフリーターをしていたときにバイト先の友人に誘われ、ボランティアでなんとなく参加したのが、この世界に関わることになったきっかけだとか。自然体でいいね。好感がもてます。
 本書も、肩肘張ってない内容で、文体も優しく、読みやすいですね。
 ちょっと内容が薄いようには思いますけどね、忙しいだろうからこんなもんでしょ。
 プライベートな連絡先を教えたばっかりに、夜中に立て続けに連絡をしてくる生活困窮者の女性にブチ切れたりと、人間味があるところもよかったです。
 他にも本書では、彼が出会った、兄貴と縁が切れぬ元ヤクザやら、猫好きなために部屋が借りられないホームレスの話、福祉事務所係員との丁々発止のやり取りなど、フツーに生活していればけっして見えなかった世界の現実が語られております。
 私だっていつ、そっちの立場になるかわかりません。
 本と酒がありさえすればそれでと言っても、本を読むには食事を摂らなければなりません。
 人間息をしていれば、それだけで金がかかるようにできているのですからね。
 この本を読んでわかったこと、それは生活困窮者の多くの方が「不器用」であるという点です。
 この社会で暮らしておられる方なら、頭の隅でもわかるでしょう、この「不器用」の意味を。
 それを歯がゆく思わずに、理解してあげられるかどうか、そして社会にどのように受け入れられるのか、それができれば、この国に移民なんていらないと思うのですよ。
 今日、移民嫌いのイギリスはEUを離脱しましたがね。


 
 
 
 

「ゼロの激震」安生正

 2020年代の日本は、12年かけて核融合に匹敵する半永久的な発電システムを完成させた。
 海上の巨大要塞・浦安人工島に設置された東京湾第一発電所である。
 人類史上初めてマントル層へ到達した、深さ50キロに及ぶ世界最深の立坑が売りのこのシステムを、“バベルシステム”という。立坑内部は直径の異なる2種類の鋼管がパイプオルガンのように隙間なく設置され、ボイラーとなる。
 そのまわりをリング状に取り囲んで直径40メートルの鞘管が12本配置され、海水が外側の鞘管を通って、海面から48キロの深さまで落下し、そこで中央のボイラー部へ放流される。放流量は毎秒5万トン。
 ボイラー内の海水は瞬間的に地熱で気化され、その水蒸気圧で蒸気タービンをまわす巨大な地熱発電所となる。
 (まあ簡単に言えば、焼け石に水をかけてジュッとなった熱気を利用するのですね)
 浦安人工島だけで発電量は2千万キロワット。原発20基分の発電量に相当する。
 プロジェクト成功のニュースは世界中を駆け巡り、究極の自然エネルギーが誕生したと日本の技術力が称賛された。
 バベルシステムが普及すれば、世界の発電市場を独占することさえ可能になるのだ。
 だがしかし。
 これをもって日本人は、いや、人類は自然への挑戦を成功させたと言えるのだろうか。
 地球が誕生して46億年。
 その間、5度の大量絶滅が発生し、3度の全球凍結が起こった。
 その多くは地球が内に秘めた怒りの爆発だ。
 地球表面の大陸地殻の厚さは30キロから40キロ。それにたいして地球の半径は6400キロもある。
 気の遠くなる時の流れの中で、神が創りあげた地質構造のバランスを人類が崩した時、何が起こるのか。
 その答えはまだ、地底深くにある。

 はい。
 「生存者ゼロ」で、このミスをとった安生正の最新作です。パニックサスペンス巨編。
 正直言っていいですか?
 つまんね。
 \(^o^)/
 うーん・・・
 難しいところですね、読む人にとってはたまらなく面白いかもしれませんが、かなり専門的な用語や知識開示が多くて、映画みたいに見てわからないからね、小説だから想像しなくちゃいけないんだけど、少なくとも私の脳の能力は超えています。
 作者が一所懸命に説明してくれる端々から想像できません。右から左、馬耳東風。
 たとえば発電所の建設風景とか、地震のメカニズムとかですね。インフラの壊れようとか。
 作者の安生正は建設会社の役員であったと思うので、土木システムはお手の物かもしれませんが、ちょっと私はついていけませんでした。少しだけなら読み飛ばしますが、ずっとこの調子ですからね。
 でも、この精密さが、この作品の売りでもあって、これがなくなればまったく味がなくなるんですよね、この小説。
 この、作者の懸命な説明ぶりが、この小説の骨子なのです。
 だから難しい。それが私にとっては仇となりましたが、人によれば苦もなく読めて面白いかもしれません。
 面白いと言っちゃいけないか。
 今時、不謹慎な小説でもあります。
 ただ、過失とはいえ人災だからね。
 聞いたことはありますけどね、二酸化炭素を地中深くに封印して閉じ込めるというのは。
 その結果、マントルが溶解してマグマになる可能性が本当にあるのかどうか、私にはまったくわかりません。
 そういや、人類は深海や宇宙については積極的ですが、地球内部についてはまったく手付かずであるということを、最近このブログで書いた覚えがありますね、何の本だったかあれ。
 とにかく、地球内部というのはまだまだ謎ですからね。
 
 イエローストーン国立公園の話は本当なのでしょうか。
 本当だったら怖いねえ。巻末の大量の参考文献を見れば、おそらくマジなんだろなあ。
 この物語で起きるパニックと似たようなことに、どうやらイエローストーン国立公園の地底がなっているらしい。
 超巨大なマグマ溜まりの存在が確認され、それが噴火爆発したときには人類存続の危機になると予想されているそうです。
 噴火の周期は60万年で、すでに最後の噴火から64万年経っているそうですが・・・
 この前の昭和の東南海地震に誘発されて起こった三河地震(数千人が死亡)は1万年に1回の断層が動いたらしいですが、数百年に1回ならまだしも万年単位になってくると、もうなんだか、どうしようもない気がします。
 それでも地球の46億年の歴史からしてみると、瞬きですからねえ。
 約2千万年前は、東日本と西日本だって離れていたそうですから、また離れないとも限りません。
 おそらく早い時期に、もっと安定した空間に移住しないと、人類は必ず滅亡すると思いますねえ。


 
 
 
 
 
 
 
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