「百年文庫 婚」久米正雄/ジョイス/ラードナー

 ポプラ社百年文庫ナンバー52のテーマは『婚』。
 ズバリ結婚、ですな。
 婚は恋でも愛でもありません、あくまでも“婚”です。
 さぞかし趣のある作品が選ばれたかと思いきや、なんだこりゃばかり。
 しかも、このテーマで夏目漱石の娘さんに失恋したことが有名な久米正雄を選ぶとは何たる皮肉、選考者の性格の悪さが偲ばれます。絶対、わざと選んでるからね。
 もうシリーズ百作のうち折り返し地点を過ぎたわけですが、今回が一番底が浅かった。
 いつもはね、首をかしげるくらい深い場合があるのですけどね、今回の三作は表面だけだね。
 もちろん、それだけ結婚というのは表と違う裏の顔があるのだよ、と言われればそうなんですけども。

「求婚者の話」久米正雄(1891~1952)
 頃は明治。法科大学生の鈴木八太郎は、如何にして空拳でもってこの人生で功をなすべきか大陸に渡ろうかと下宿で考えている時、ふと窓の下を見ると、洋傘(パラソル)をさした見目麗しい娘が歩いているのを見た。とたんに八太郎恋に落ちて、「これは愚図々々しとれん、早くあのひとを嫁にもらわなければ」と、今で言うストーカーまがいにお嬢さんのあとを追いかけた。
 お嬢さんは立派な屋敷に帰り着き、たちまち八太郎は決心をし、邸宅に乗り込み、父上と談判した。
 必ず功を立てて還ってくるので、そのときは娘さんをください、と。
 父上は仰天したが、八太郎を気に入った風で、娘(時子)も反対をしなかったので、この申し出は受け入れられた。
 八太郎は大陸にわたって鉱脈を探検していたが、やがてこの地に金属商の少ないことを見抜き、日本の鉱山会社の支店を上海に開業、波に乗った。そして約束通り、ひと目で見初めた時子を迎えに上がったのである。

「下宿屋」ジョイス(1882~1941)
 舞台はアイルランドの首都ダブリン。
 肉屋の娘だったムーニー夫人は、店の大番頭の男と結婚したが、父が亡くなってから夫は堕落し、子供を連れて別居した。そして肉屋の儲けで下宿屋を開いた。
 娘のポリーが19歳になったとき、下宿している30代半ばの男と深い仲になったことがわかった。
 ムーニー夫人は、娘の失った体面を取り戻すには、“結婚”こそがただひとつの償いであると考えるが・・・

「アリバイ・アイク」ラードナー(1885~1933)
 作者は全米に名を馳せたスポーツ記者だったらしい。
 大リーグを舞台にしたコメディ。筋に関係ないですが、チーム名は残念ながらわかりません。
 今ではリーグが異なるボストンやシンシナティに遠征に行っているということは、時代が古いせいでしょう。
 主人公は、フランク・X・ファレル。あだ名は「アリバイ(言い訳・アイク」。野球選手になって3年目。
 オープン戦で活躍し、大リーグ定着へのチャンスを掴みかけている。
 この男、何かをたずねられると何か言い訳せずにはいられないタチで、それはホームランを打ってもエラーをしても同じことで、野球だけには限らない。メシを食ってもギャンブルをしても必ず何かの言い訳をして、意味のない嘘をつく。
 こんなアイクだが、監督の奥さんの妹が好きになってしまう。
 しかし、言い訳をしながらチームメイトに気持ちを明かさないために、なかなかうまくいかない。
 はたして恋の行方は・・・?

 今ふと思ったんですが、久米正雄の「求婚者の話」のオチはなんだろうね。
 ひょっとしたらこの話は、婚がテーマというよりも、人の功はその人次第という訓話なのかな。
 最後断るところが、後味が良くない気がします。


 
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「クラウドガール」金原ひとみ

 知らなかったんですが、去年、朝日新聞で金原ひとみと綿矢りさが小説を同時連載していたそうです。
 2004年にふたりが芥川賞をW受賞してから、はや13年。
 二度と交わることはなかろうと思っていたふたりの天才女流作家の点と線が、再び相まみえることになりました。
 これについては、朝日新聞GJというほかない。後はまったく駄目だけど。
 私も、芥川賞を受賞した数多の小説家のなかで、このふたりは飛び抜けて特別だと思っています。
 きっと同時連載を企画した方は、同じような想いを持っていたんだと思いました。
 で、私がそのことを知ったのは、ネットのニュースでふたりの対談の記事を見たから。
 作品のネタバレがありそうな内容だったので、表面だけなぞりましたが、デビュー時からふたりの作品を数多く読んできた私には、感無量でした。このふたりがほのぼの語り合うなんてねえ。写真もあったし。金原ひとみは相変わらず正体不明の美しさがありましたし、不世出の美少女作家綿矢りさはおばちゃんになってましたが、相変わらず透明感があって可愛い。
 金原ひとみには9歳と5歳の子供さんがいて、綿矢りさもまた子育て中だそうです。
 綿矢さんはともかく、金原ひとみがお母さんをするとはとても信じられません。
 いや、それどころかこの人が小説を書いているという自体がもう信じられない。
 女流小説家って、どっちかといればダボッとしたファッションでぼさっとした雰囲気でまったりお茶してそうなんですが、金原ひとみはまったく違う。クロームハーツとか着そう。クロームハーツの革ジャン着てバーボンとかラッパ飲みしそう。そんでわけもわからず腹立って小説書いてたノパソとか殴ってぶっ壊しそう。
 だって「蛇にピアス」を書く人だからね。何でもありですよもう。
 というわけで、先に金原ひとみの作品「クラウドガール」を読んでみることにしました。
 もちろん、後日、綿矢さんのも読んでみます。

 簡単に構成。
 6年前に両親が離婚し、2年前には作家だった母親が急死して、姉妹ふたりで暮らしている、姉で20歳の大学生・中城理有と、妹で16歳の高校生・中城杏の物語。
 性格がまったく違う、姉と妹。
 モデルのような派手な外見の杏は、自分勝手でわがままで何もかも姉頼み、学校もろくに行かず不毛な恋愛ばかりしている。対して姉の理有は一見地味、精神を半ば病んでいた母にかわって長らく家事一切を取り仕切っており、実務的で合理性重視なリアリスト。恋愛に対しては臆病。
 このふたりの日常、というか、マレーシアに半年留学していた理有が日本に還ってきてから、杏の彼氏の晴臣や理有が新しく知り合ったカフェのバリスタをしている光也、表参道の美容室の店長の広岡らを交えながら、刻々と変化していく杏と理有の姉妹の関係性を問うヒューマンドラマ。

 変わった人間だった中城エリカという母親の死を通しての、サイコサスペンスとしても読める。
 基本的には、新聞連載ということもあってか、金原ひとみにしては抑え気味。アブノーマル感なし。
 この小説に何か物足りなさを覚えた方は、たぶん、いつものこの作家の過激さがなかったせいでしょう。
 逆にはじめてこの人の小説を読んだ方には、じゅうぶん刺激的だったかもしれませんね。
 おそらくいつもの金原ひとみであったならば、理有は広岡に犯されていただろうと思います。
 新宿で焼き鳥食っただけで終わるわけねえじゃん、金原ひとみの小説が。
 まあそれはおいといて、新聞連載で抑えられたせいかどうかわかりませんが、もうひとつテーマといいますか結局何を書きたかったのがボヤケてしまった、真相がどうだったのかわからなくなったという点も浮き彫りとなりました。
 いつもならば、そんなことを過激さで吹き飛ばせるのですが、そうもいきません。
 まあ、これは仕方ないかな。
 で、母親であるユリカの死の真相なんですが、195ページでしたか、ドキッとしましたねえ、ミステリアスで。
 私も読後にもう一度、関連した箇所をパラパラ読み返してみたのですが、理有が言っていることが正しいと思います。
 もっとも、作者曰く正解はないらしいですけども、「クラウドガール」というタイトルは、突然雲のようなものに覆われてパニック障害を引き起こす杏のことにほかなりません。ということは、杏は雲の中から妄想を引き出した、という見解でいいのではないでしょうか。理有の父とのスカイプはクラウドではありません。わかりながらやっていたことです。


 
 
 
 
 

「黒薔薇 刑事課強行犯係・神木恭子」二上剛

 第2回本格ミステリーベテラン新人発掘プロジェクトの受賞作です。
 作者は、元大阪府警所轄署の暴力犯担当刑事。
 1949年生まれということは・・・現在60歳代後半でしょうか。
 こういう経歴が目を引いて読んでみようと思ったわけですが、いやあ、読んでビックリ。
 まったく思ってたのと違いました。
 なんと云いますか、元刑事の作者ですからね、警察小説でも人情モノかと思ってたんですよ。
 私の知っている大阪府警の年配の本職の方とかは、鉄砲を撃ちまくる刑事ドラマや映画は嫌いでしたからね。
 冒頭を読むかぎりでは、新米の女性刑事が先輩のオッサン刑事に蔑視されながらも、やがて事件の捜査を通して理解しあい、苦労しながらも事件を解決して大団円めでたしめでたし、というようなハートフルなものかと思いましたが、まるで錯覚でした。
 どう錯覚だったかというと、これ、大阪府警が舞台ではあるのですが。あくまでもただの舞台であり、本作の本性はまるまる犯罪小説です。警察小説なんてとんでもない、根からの悪漢犯罪サスペンスなんですわ。
 悪徳警官が後から後から出て来る。よくまあ、こういうものを書いたなあと。
 巻末で解説の島田荘司さんが、エリートという天衣をまとって東からやってきたキャリア警察官と、ドン底から這い上がる大阪のノンキャリアとの対立の構図を軸とする物語、と書かれておられますが、とてもそんな生易しい構図ではありません。
 だいいち、人が死にすぎますよね。取調中に死んだりするし。
 大阪府警の職員は1万人くらいいるのでしょうか、そのなかでキャリア警察官は10人程度だと思われます。
 キャリアに対してどうこうよりも、この小説には警察に対する憎しみが感じられるような気がしますが、どうでしょうか。

 あらすじ、といっても書きようがない。
 新人にしては面白すぎる作品ですが、この小説の欠点のひとつは筋が複雑すぎることです。
 的が絞れないのですね。
 私も後から思い出してみても、まったく筋が思い浮かびません。
 むしろ、映画にしたほうがいいんじゃないかと思います。
 主人公は、大阪府警長田署の刑事課強行犯係に配属されたばかりの新人女性刑事、神木恭子24歳。
 大部屋のむさ苦しいオッサン刑事にいびられて、もう刑事なんて嫌で嫌で仕方ない。
 折原という30代なかばのゴリラのような主任刑事とコンビを組んでいるのですが、鼻くそが飛んできたりもします。
 交番勤務のほうがよほど楽しかったと思う神木恭子の転機は、3ヶ月前に起きた清掃人材派遣会社社長殺人事件の捜査。恭子は、長田署に身内のトラブルの相談に足繁くやってきていたアル中の老人を構ううちに、この老人の孫娘を連れて逃げた遠縁の男が社長殺人事件に関わっていたことを突き止めるのです。
 まさに、大手柄。さすがの強行犯係のオッサン刑事たちも、恭子を見る目が変わりました。
 しかし、これは複雑怪奇非道な物語の序章にしか過ぎませんでした。
 なんとアル中の老人の家の床下からは、大人3人嬰児4人計7人ぶんの人間の骨が発見されることになるのです。
 いったい、何が起きたのか。殺されたのは誰なのか。
 事件の行方は、元警察官でアルコールに溺れて死んだ恭子の父や、社長殺人事件の捜査本部を指揮していたキャリア警察官の瀬名靖史刑事部長、さらには彼の80歳の父親でいまだに大阪府警に影響を及ぼす“裏警察のボス”と言われる人物まで巻き込み、闇に紛れた秘密を巡って人知れぬ暗闘が繰り広げられることになるのです・・・

 タイトルは「黒薔薇」ですが、これは改題で本当は「砂地に降る雨」というものでした。
 ひょっとしたら、作者が当初描いていた内容とは違ったものになっているかもしれません。
 急遽、焦点を茂美と恭子に当てた、そんな不自然な雰囲気が残っているような気がするからです。
 だいいち、24歳の女性刑事の冒頭とラストでの人格的な変貌ぶりがすごすぎる、という問題があります。
 これはあまりにもやり過ぎではないかと思います。
 そのせいでキャラが死んでしまったのが出てきました。折原とか、弁護士の要とか。
 折原は後半でまったく存在感がなくなりました。義男の足を撃ち抜くまでは、いぶし銀の活躍だったのに。
 人権派の要弁護士は、本当のモデルがいたのだろうと思わせるくらい生々しいキャラクターでしたが、こちらは完全に途中でフェイドアウトしてしまいましたね。どちらも不自然です。おそらくはプロットの変更があったのだと思います。
 面白いことは間違いないのですが、義男が死ぬまでと瀬名親子と恭子の暗闘ではまったく話の雰囲気が違います。私は、義男が死ぬまでが断然面白かったと思いました。後がワーワーし過ぎましたね。


 
 
 

「彗星特攻隊」増戸興助

 艦上爆撃機彗星による特攻隊に配属されながら、奇跡的に生き残った操縦員の手記。
 丁寧で非常に読みやすく、事故の責任を逃れるため上司に虚偽の報告をしたことなど(戦後バレてていたことを知る!)が正直に書かれていて好感が持てました。
 また、本書で初めて目にした貴重なエピソードもありました。
 ちょっと驚くようなことも書かれていましたね。
 歴戦のエースパイロットでもなく、私たちと同じような“凡人”の目線で戦っていたことが印象に残りました。
 凄い人だけが死線をくぐり抜けて生き残ったわけではないのです。

 著者の増戸興助さんは福島県出身、第17期海軍乙種飛行予科練習生(1209名、昭和19年2月卒業)。
 台中航空隊で初等飛行訓練を受け、実用機教程は台南空、艦上爆撃機操縦員専修。
 このときの台南空での分隊長が、神風特攻の先駆けとなった敷島隊で有名な関行男大尉でした。
 「ほんとかよ」と思うような珍しい関行男大尉のエピソードがありましたが、後ほど。
 実施部隊は、帝都防衛を任務とする厚木空彗星夜間戦闘機隊に配属されました。
 斜銃で有名な小園安名司令のもと、彗星の後席の後部に20ミリ斜銃を取り付けたのが彗星夜間戦闘機です。
 戦闘機でさえまともに撃ち合っても勝てないB29などの大型爆撃機の腹の下に潜り込んで、急所を突くわけです。
 厚木空にはもちろん月光などの夜間専門戦闘機もありましたが、著者によると偵察機彩雲に斜銃を搭載した改良タイプもあったそうで、実際に著者がテスト飛行したそうです。
 初めて聞いた、彩雲の夜間戦闘機型。なんか強そう。
 昭和19年12月、131空指揮下にある攻撃第3飛行隊急降下爆撃隊に異動、香取基地。
 3月に入り、通常の訓練体制を解かれ、特別攻撃隊として鹿児島の国分基地に移動、菊水作戦に備えました。
 特攻隊としての初出撃は昭和20年4月3日。このときは誘導機でもある1番機(大塚一俊中尉)がエンジン不良による失速で自爆し、帰投。4月6日の2回目に出撃時はグラマンに襲われ、喜界島に不時着陸しました。
 K3(攻撃第3飛行隊)での命令は「敵空母に対しては体当たり攻撃を敢行、その他の艦艇に対しては必中爆撃を主とす」という灰色のものだったそうです。
 3機編成で、1番機は彗星33型に操縦員と偵察員が同乗し、500キロ爆弾を積んで誘導機を務めました。
 編隊を組む2番機と3番機は彗星43型で、爆装は800キロ爆弾、操縦員のみで無線や機銃の装備はありませんでした。
 1番機を誘導機とすれば列機には偵察員は要らないという判断だったことになります。
 そのぶん、もし1番機が落ちれば列機は航法ができませんね。
 どうなんだろう、これはK3に限ったことであったのか、隊幹部の特攻に対する方針は書かれていません。
 「よそは全機とも操縦員と偵察員のコンビで特攻だが、うちはそんな無駄死にはさせん」みたいなことがあったのか不明です。
 いずれにせよ、著者が生き残ったのはK3の方針によるところが大きいのではないでしょうか。
 しかしそれでも、数名いた著者の乙17期の同期生は特攻戦死していますが・・・

 なかなか興味深い話があった本書ですが、一番驚いたのは著者が実用機教程で台南空にいたころの関行男大尉のエピソードでしょうか。なぜか艦爆操縦員である関大尉が零戦の操縦を練習しだした8月のことでした。
 著者の分隊長であった彼は、体育館に約300名の航空隊全搭乗員を集合させ、航空機による艦艇への体当たり攻撃という特攻戦法の必要性を解き、自分の意見に賛同するものは志願書を出せ、と演説したそうです。
 著者ら分隊員は悩み、班長である乙11期の先輩に相談したところ、「お前たちはまだ半人前の練習生だから、志願書提出に及ぶまい」と回答をもらい、結局、志願書を提出しませんでした。
 ところが、これが関大尉の逆鱗に触れたらしいのです。
 分隊の上司である関分隊長の提案に、分隊から賛成者がいなかったことが原因でした。
 関大尉は、分隊の扉を開けるや「いくらお前たちが練習生であっても、軍人としての誇りや意地がないないのか、大馬鹿者」と怒鳴りました。あわてて著者は分隊員と相談して15名の志願書をまとめて関大尉のもとまで持っていったらしいですが・・・
 初めて聞く話で、実際に著者が体験したことなので間違いはないと思われますが、なかば神格化された関行男大尉の人間らしい? 珍しいエピソードでした。



 
 

「コンテクスト・オブ・ザ・デッド」羽田圭介

 生物として、魂の入れ物としての肉体は、まぎれもないオリジナルだ。
 しかしそこに入れられた中身も、オリジナルだといえるか?
 教育や社会的規範、身の回りに無数に飛び交っている文脈を疑うことなく吸収することで、
 中身のようなものが形成されていった。
 つまりそれは、漂っていた無数の文脈を、ただ己の心身に転写しただけではないか。


 どういうジャンルといえばいいのか、ゾンビモノなんですが、単純なエンタメ系ホラーとは云えません。
 作者が作者ですからね、はんかくさい文学性が濃厚に臭う。
 むしろ中間小説といってもいいかもしれません。
 もっとも、今更ゾンビホラーにエンターテインメントとして新しいネタがあるのかというと怪しいですから、本作は、ゾンビを大多数の画一化というメタファーとした文芸作品であるという視点も成り立つでしょう。
 問題は、それがあるばかりに読み物としての面白さを損ねていることです。
 面白けりゃいいんだよじゃだめだと作者も物語のなかでキャラクターに言わせていますが、それは卑怯だとも思う。
 ハッキリ言って本作のようにどっちつかずの中途半端になるよりは、ベタなスプラッターのほうがいいと思います。
 綾辻行人のあれなんだっけ、殺人鬼でしたか? あんなようなのでいいんじゃないですか。
 なかには創作活動に関する面白い表現も目立ち、あとにいくほどゾンビと人間のバトルシーンも慣れたのか描写に迫力が増してくるのですが、しょせん、羽田にはこの辺が限界かなと、作者の事象の地平線を露呈する一作となりました。
 
 簡単にあらすじ。
 大手出版社の文芸部編集者である須賀は、小説家と待ち合わせた場所に向かう途中、渋谷のスクランブル交差点で人だかりを発見、のぞきこんでみるとそこにはゾンビがいた。ゾンビは知らずに通り過ぎようとした女性に噛みついた。
 日本だけではなく世界中に、映画の中だけの存在だったゾンビが大量発生。
 ゾンビ化の原因は不明で、病原菌やウイルスは発見されなかった。
 心停止し、体温が21度ほどまでに下がり、脳幹以外の脳部分は極度に不活性化し、顔は青っぽく、ゆっくりとしか歩けないというのが、これまでにわかっているゾンビの身体的特徴だ。
 ゾンビになった人間は、尻の上に特徴のある斑が現れる。映画のように脳を破壊すると死ぬ。
 問題はゾンビ化するまでのステップで、一度死んでからゾンビとして蘇生する場合、ゾンビに噛まれやがて生きながらにしてゾンビなる場合、火葬され遺体すらこの世に存在しないはずなのにどこからかゾンビとして復活し現れる場合、の3パターンがある。
 物語の主な登場人物は、須賀を含め6人。
 売れない小説家のK、10年前Kと同じ文学新人賞を受賞した美人作家の理江、区の福祉事務所でゾンビ通報ダイヤルを担当している新垣、ゾンビがいないという北海道に一家で疎開する南雲晶、17歳の女子高生で不幸にもゾンビに噛まれてしまった青崎希。彼らは、ゾンビが徘徊する社会をそれぞれの方法で生き抜こうとする。
 はたして、生き残るのは誰か? それとも人類は全滅するのか・・・

 ゾンビ化するパターンなんですが、火葬されて遺体がないのにゾンビとして復活とありますが、あれはそっくりさんのコピーだと思いますね。この小説は、ゾンビは没個性のメタファーとして描かれていますから、そういうことなんじゃないかと。
 ゾンビ小説に神経質な整合性もクソもないかもしれませんが、遺体が無いのにゾンビになるのはやはりおかしいのでね。
 一体目のゾンビがこの世にどうして現れたのか、それはあらゆるゾンビ映画でも最大の謎なんですが、この小説の場合は噛まれないまま大量発生というところでしょうね。
 まあ、好意的な見方をすれば、噛むイコール影響を与えるというメタファー的な読み方もできるわけで。
 直接、影響を与えなくとも(噛まなくとも)、どんどん影響を受けてしまう、受けたがる凡人たち、ということでしょうか。
 あとは・・・
 大御所作家の女性の耳を甘噛みする大先生、あれはモデルがいるような気がするなあ。WJ?


 
 
 
 
 
 
 
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