「電王」高嶋哲夫

 あらすじ。
 小学校4年生でプロ棋士への登竜門・奨励会に入会したふたりの天才少年。
 相場俊之と取海創。
 かたや企業を経営する資産家の御曹司、かたや極貧の母子家庭に育った野生児。
 環境は違えども、同じ学校で出会ったふたりは共にプロ棋士を目指す一心同体の親友だった。
 しかし、12歳のとき、プロとなる4段への昇格をかけて戦った一戦を最後に、彼らは袂を分かつ。
 それから20年。その間、連絡することもなかったふたり。
 大学の情報工学科の教授となった相場は、人工知能の研究で世界の第一人者となった。
 一方、取海は七冠に二度も輝くなど、名実ともに日本棋界を背負って立つ最強の棋士となった。
 そして今、ふたりは将棋ソフト対人間と形を変え、20年の時を超えて宿命の対決に臨む。

 はい。
 あくまでも将棋がテーマなのですが、棋譜はいっさい出てこず、日進月歩の人工知能を取り巻く世界情勢や主人公であるふたりの人間の生き方を主要な背景としているので、将棋小説とは言えないと思います。
 私の個人的な感想によるジャンル付では、社会小説かなと思う。
 人間に挑戦する人工知能の話題については、かなりリアルと云いますか、今の感じそのままですしね。
 優秀な将棋ソフトとプロ棋士が戦う電王戦FINALも実際に行われていますから。
 作者が巻末で参考文献に挙げている「ルポ電王戦」は私も読んでいます。
 もう今度が最後だったかな。
 チェスや囲碁は最強クラスの人間とコンピュータが戦いましたが、結局、将棋は名人クラスがソフトと戦うことを拒みました。
 今となっては、別にコンピュータに負けることは恥でもなんでもないと思います。
 数十年前では有りえませんでしたが、コンピュータの計算速度とプログラム技術、人工知能の考え方自体も加速度的に発展していますから。ディープラーニングというのですか、コンピュータが経験を積んで賢くなっていくのですね。
 もう勝てないですよ。負けて当たり前だと思います。
 実際、ここ数年で、若手のプロ棋士はコンピュータに勝てなくなりました。
 前ならばコンピュータが混乱するような、将棋の定石からはあり得ない一手をあたかもコンピュータウイルスのように使用する作戦が功を奏したのですが、今ではそれも通用しなくなっています。
 逆に言えば、将棋を始めチェスや囲碁への挑戦が、人工知能の進歩を促したと言えるのではないですか。
 人間を上回るものを作ろうと、エンジニアたちは切磋琢磨したのですから。
 それが盤上を飛び越えて、私たちの実社会に役立つような応用の仕方が生まれるのであれば、とても有意義なことです。本作にあったように、難病患者を救う人工知能の研究とかですね。

 ラストも余韻が残って良かったです。
 あれでよかったと思います。
 私は相場が勝ったと思う。
 どちらが勝ってもふたりでソバを食べに行ったでしょうから、ハッピーエンド。
 将棋については、私は素人同然なのですが、小難しい棋譜があっても大概の人にはわかりません。イミフです。
 同級生に県チャンピオンクラスの奴がいたのですが、うんこが人間になったみたいな性格でしてね。
 とても教えてもらおうという気にはなりませんでした。
 でも穴熊とか中飛車とか三間飛車とか、そんなとこまではわかりますよ。
 本作を読んで今更でしょうが、ちょっと吃驚したのは、数学と将棋の深い関係性でしょうか。
 やはり天才のスポーツだなあと思いますね。
 最近までは、コンピュータが人間に最後まで勝てないのは囲碁だと言われていたように思うのですが、あっという間でした。感情がないほうが最後には勝つのが自然だと思います。麻雀とか特にそう思います。
 ですから、相場に一票。取海の感情の起伏の激しさはフラグ的に書かれていると思いますから。


 
 
 
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