「天皇陵」矢澤高太郎

 日本という国は、自国がいつ、誰によって、どのように築いた国家であるのか判然としない世界でも稀有な国です。
 だからといって、わからないで済むでしょうか。
 韓国の学者には「古代日本の文化は、ほとんど朝鮮半島に由来している」と言われる始末です。
 アホも休み休み言えよ、と思いますが、こちらには確たる反論の証拠がありません。
 なぜなら、記録がないからです。日本の古墳時代のリアルタイムな記録は中国に頼っています。
 「日本の王様がこんなん土産にくれたよ」みたいな感じのね。
 実際には、いつも支那にいじめられていた弱小朝鮮ですが、日本の友邦であった百済が滅亡したときに優れた技師たちが日本に逃れて住み着き、我が国の文化に多大な影響を残したのは事実です。
 古墳時代終末期の石棺には、そうした技師たちによるであろう複雑な細工が施されたものもありますからね。
 また高松塚古墳の壁画に見られた星宿図は、古代中国思想の影響をモロに受けています。
 だからといって、我々は中国や朝鮮に教えを受けたからこそ文明開化した野蛮人だったのでしょうか。
 それを違うと証明するために、古代日本はこのような優れた独自の文化を持った独立した文明であったことを証明しなければなりません。日本民族は、多少隣人の影響を受けたものの独立した文明であるということを世界に知らしめなければならない。
 そのためには、世界最大の帝王墓である仁徳天皇陵をはじめ、宮内庁によって考古学者からも一般人からも封印された、いわばタイムカプセルともういうべき古墳時代の陵墓を徹底的に調査研究すべきである。
 日本の古代の大王の墓あばき。これは是か非か?

 著者は元読売新聞文化部の記者だった矢澤高太郎氏。
 前作「天皇陵の謎」の発展版です。続編と云ってもいい。先に向こうを読んでおいたほうがいいでしょう。
 相変わらず舌鋒は鋭いですな(笑)
 今回は宮内庁を頑迷固陋とこき下ろすだけですまず、文化庁にまで怒りの矛先は向かいます。
 でもあの謎の文書はびっくりしましたね。陵墓参考地のやつ。
 陵墓参考地とは、被葬者は不明ながら天皇または皇族の墳墓の可能性が高いとして、宮内庁が禁断の聖域に指定し管理している古墳のことで、全国に46箇所あります。これを実は昭和30年代に宮内庁が必死に真の被葬者を特定しようとしていたことが明らかになったのです。
 どういうことかといいますと、砕いて説明しますとね、古墳時代の天皇陵にこの天皇が埋葬されているとした宮内庁の治定は、9割方間違っているのです。あの有名な仁徳天皇陵だって本当に埋葬されているのは誰だかわからないのです。
 現代の考古学は、埋葬品や墳墓などから製作年代を20年単位で特定できると言われています。
 すると、畿内あちこちにある天皇陵の推定製作年代が、埋葬されている天皇の崩御年代とズレがあることがわかりました。
 数百年も違う場合も多々有ります。ですから、表向きは☆☆天皇陵となっていても、実際にはたぶん違うのです。
 どうしてこうなったのか、それは天皇陵の大部分は江戸時代元禄期の陵墓研究を経て、勤王思想の盛り上がった幕末、あるいは明治政府に引き継がれて決定されたものなのです。古事記や日本書紀、延喜式などの古文書を元に熱心に研究議論がなされたわけですが、当時には考古学の専門家はいませんし技術もありません。
 それは仕方ない。ならば、間違いを正せばいいと思いませんか。
 ところが全国の陵墓を管理する宮内庁は、一貫して「墓誌が出ないかぎりは治定変更などあり得ない」と言い続けているのですね。つまり現代の科学では辻褄が合わないと判明したにもかかわらず明治に決定されたことで合っていると。それが、前記の怪文書によって、実は宮内庁も内心おかしいと思っていることが明らかになったのです。
 当たり前だわね。
 被葬者だって、偽の名前を付けられて嬉しいわけがないでしょうよ。

 じゃあ掘れ。掘って本当の被葬者を突き止めて、日本の古代を明らかにせよ。
 かというと、そうじゃないと著者は言います。私もそう思う。
 この辺は説明が難しいね、読めば理解できると思いますが・・・
 世界最大の帝王墓である仁徳天皇陵を含む大阪の陵墓群をユネスコの世界遺産登録にという動きもありますが、現状では難しいでしょう。登録すれば調査発掘して中を明らかにし、被葬者を特定しなければならないであろうからです。
 ある意味、宮内庁は妄言を吐いているようでいて、日本の矜持を守っているのかもしれませんね。
 実際、日本が敗戦して直後、進駐してきたアメリカの調査団が天皇陵を発掘しようとしたことがあったのですよ。
 このときは一部の良心的な考古学者によって、我が国の大王墓が暴かれることを逃れたのです。
 エジプトのピラミッドなんてよく外国人に発掘させるものだと思いますけど、あれは宗教が当時と違ってしまっているからなんでしょうかねえ。

 ですが、天皇陵についてとてもスルーできないとんでもない間違いがひとつあります。
 それは、明治天皇の陵墓の形を決定するときにモデルにした、天智天皇の陵墓の形が間違っていたこと。
 天智天皇の陵墓は7世紀中葉の天皇家伝統の八角形でしたが、これを誤認し円墳としてしまいました。
 円墳は基本的に皇族ではない豪族の墓の形です。
 昭和63年にやっと宮内庁はその間違いに気づきましたが、大正、昭和天皇にも本来なら天皇家として間違った形である明治天皇の上円下方墳が踏襲され、今後も改善される可能性はないと見られています。


 
 

 
 
 

 
 
 
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