「あの日」小保方晴子

 「私は不注意で、勉強不足であったけれども悪意を持って図表を作ったわけではありません」

 一片の邪心もなかった、と本書では言い切られています。
 一連の事件はテレビや報道で観ていましたし、小保方さんがその取材の姿勢を痛烈に批判している毎日新聞記者の須田桃子さんの本「捏造の科学者 STAP細胞事件」も読んでいましたから、私は本書を読まないわけにはいきません。
 むしろ、待っていました。
 言われっぱなしではいけないし、一連のSTAP細胞事件は理研CDBの笹井副センター長の自殺といい、謎が多すぎます。
 一体、あの日に何が起きていたのか?
 脚光を一身に浴びた記者会見から数日にして、彼女は日本中から大バッシングを浴びせられる立場に堕ちます。
 その裏側には、何があったのでしょうか。はたしてSTAP細胞事件の真実とは・・・

 お昼のテレビで芥川賞作家の羽田圭介が本書のことを「面白くない」と言っているのを観ましたが、本当に全部読んだのかよと思いました。そりゃ確かに100ページまでの専門技術的なことの羅列は苦痛でしたけどね。
 いよいよ騒動が始まる100ページ過ぎてからは、けっこう熱心に読めました。
 私の覚えている限りでは、一連の出来事とその動きとの辻褄は合っていたように思います。
 つまり本書で、小保方さんが切々と訴えられていることと事件は符号しているように見えます。
 もちろん、本書がすべて真実であるとはわかりません。
 一片の邪心もないと言いながら、すべて計算し尽くしたサイコパスかもしれません。
 しかしまあ、傍から見ていて、おかしいようなことの多い事件でしたからね。
 真相が永遠に藪というよりは、こういうものが出てよかったと思いますよ。
 伏魔殿のような世界ですからね、科学の世界は。

 結論からいきましょう。
 私が読み解いたところでは、本書で小保方さんが訴えていた一番肝心な部分は、STAP細胞の研究を主導していたのは、彼女が筆頭著者となってNatureに提出した論文のシニアオーサーであり、クローン研究の第一人者である若山照彦さんであったということ。彼女は、若山先生が理研にいた頃の若山研究室のポスドクであり、若山先生に言われたまま実験と論文を作成していたとのことです。ですから、彼女は逆に検証が不十分なまま論文を提出することに異議を感じていたというのですね。
 彼女曰く、STAP細胞ができたと言っていたのは、他ならぬ若山先生だそうです。
 彼女はSTAP細胞を完成させる実技的な技術はなく、まして実験に使用されたマウスは、若山先生が系統を管理して小保方さんに渡されたものであって、彼女はマウスにいっさいタッチしてないそうです。
 それなのに、騒動になって若山先生はいっさいの責任を彼女に押し付けて、まったく何も知らなかった傍観者のようなふりをして世論の裏側に逃げたと。まるで被害者であるかのように。
 つまり、彼女に言わせれば、STAPが偽物だというのは、若山先生が作った細胞を若山先生自身が調べて「おかしい」と言ったのです。
 いつのまにか、ハシゴを外された小保方さんが研究をすべてやっていたようにバッシングの矢面にされてしまったというのです。
 ちなみに、ハーバート大のバカンティ教授は、以前小保方さんが研究室に所属していた関係で論文の名を連ねる形になっているだけで、実質的な研究には参加していません。サッカー選手に例えれば、小保方さんはハーバートから理研にレンタルされているような関係でした。バカンティ教授が論文撤回を最後まで渋ったのは、一応論文に名を連ねているために、日本と違ってアメリカでは論文撤回などの傷が経歴につくと失職する恐れがあるからとのことでした。
 笹井副センター長の自殺の件ですが、この騒動を利用して理研内部で力の強かった笹井さんを貶めようとする勢力があったそうです。その政治的な陰謀に巻き込まれて、とことん苛められてしまったことが原因ではないかというふうにとれる書き方だったと思います。笹井さんは、若山先生のために論文を書いていた小保方さんの論文の書き方をNatureに掲載されるように指導しただけです。
 そして小保方さんの早稲田の博士論文捏造の件。
 これは、論文を提出する最終期限日に製本がずれ込んだために、実際に審査されたものではなく、慌てて間違って最終バージョンではない推敲の形のものを製本に回してしまったということです。
 謝罪記者会見のとき言った、STAP細胞を200回作ったという件。本当は違うことを言ったのですが、メディアに編集でそういう誤解を生む発言にされてしまったとのことでした。
 これどうだったかなあ。私、生でテレビ観ていたような気がするのですが、鼻の穴しか見ていませんでしたから、ちょっとわからないね。編集だったのかなあ。本書で小保方さんの言うことで一番怪しかったのはここだと思いますが、前後と整合性はありました。STAP細胞を作るには、若山先生がいなければできないということですね。
 
 まあ、他にも色々あるので気になれば読んでみてください。
 私は、はっきり言って、それが本当にせよ嘘にせよ、一連のすべてをやれるような能力のある人間そして科学者では、小保方晴子という人間はないと思いました。
 この人、ドジだし、頭が悪いと思う。こういう大それた騒動の中心人物にはなれないと思います。
 生け贄にされたという話のほうが通りやすいと思うね。
 それでも29歳という若さで理研CDBの研究室主催者までなったのは、運が良かった割合が大きいのではないでしょうか。
 でもえてしてこういう人が、ノーベル賞なんかと紙一重なのかもしれないねえ。
 そんなもんかもしれませんね。
 甘いかもしれませんが、私は、限りなく灰色に近い“白”だと思います。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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