「羅生門・鼻・芋粥・偸盗」芥川龍之介

 無性に芥川が読みたくなった、と云えば私に似合わぬ高尚な様子ですが、本当のことなので仕方ありません。
 たまには、こういうときもあるのです。
 久しぶりに、学校の国語の教科書を読んだような気になりましたが、感じが違うのが面白いところです。
 この岩波文庫には、作者が得意とする王朝物(平安時代の日本に題材をとった作品)が4篇収められていますが、どれもとても読みやすいですね。
 いずれも大正4年から6年にかけて、彼の名前が売れてきた時代に重なる作品群です。
 「偸盗」は初めて読みましたが、なかなか迫力があって、大正時代の小説とは思えないくらい、平成の時代小説と言っても通用するんじゃないかと思いました。ちょっとグロいですが、オチもスッキリしていていいです。
 「芋粥」は、今回一番読み返したかった作品。
 芋粥とはどんな食べ物だったのかを検討するためでしたが、考えたらジャガイモもサツマイモもあるわけないんですよね。
 山の芋とは、山芋のことだろうね。山芋のお粥って変じゃありませんか?とろろごはんでもないし。
 でも、宇治拾遺物語に「利仁芋粥の事」という記述があるのだから、そういう食べ物があったことは間違いありません。
 山芋を米の中に混ぜて、甘葛(あまずら。甘茶蔓みたいなものだろう)で煮たもの。甘い、山芋入のお粥だろうと思われます。
 これが、平安期の当時ではご馳走だったそうです。
 「羅生門」「鼻」については、今更どうこうもありませんが、「羅生門」は黒澤明の映画のイメージが強いですね。崩れかかった楼門のスチールがなんとも言えません。都を南北に貫く朱雀大路に連なる平安京の正門なのですが、都に災いが続いて、すっかりさびれてしまっていたのです。奈良の平城宮址を知っている方ならばわかると思いますが、ただの関所や門を想像するのではなく、人が登れる階段を持った小さな城という認識で読んだほうがわかりやすいと思います。
 「鼻」はそうだな、ある意味一番教科書向けというか教訓めいた話であると思うのですが、手塚治虫のお茶の水博士よりも大きな鼻を持った僧侶が、鼻が小さくなる方法として、鼻を湯で茹でて弟子に足で踏ませると毛穴から油がギュッギュと出てきて鼻が小さくなったというのが、なんとも絵空事ばかりではないような気がして、ひょっとしたらそんな病気が本当にあったのではないかというような気にさせられましたね、少々。

「羅生門」
 地震などの災いが続く京の都。平安京の正門である羅生門もすっかり寂れている。ここに、ひとりの下人がやってきた。彼は、主人から暇を出されて途方に暮れている。ちょっとした雨宿りのつもりであったが、何やら階上で気配がする。下人が登ってみると、ひとりの老婆が、女の屍体から髪の毛を抜いていた。かつらにするのだという。

「鼻」
 池の尾(宇治)の僧侶である禅智内供の“鼻”は有名である。なんと上唇から顎にまで鼻が垂れ下がっているのだ。彼はずっとこの鼻で苦慮してきた。といってもどうにもならない。しかし老年になって、どうやら本当に鼻を小さくする方法があるらしいと聞き及び、思い切ってそれを実行したのだが・・・

「芋粥」
 藤原基経に仕える侍に五位という者がおり、40歳を過ぎていたが何をやってもぱっとせず、周囲からは軽んじられて、京童たちかたも赤鼻と呼ばれてバカにされていた。彼の唯一の欲望は、彼の身分では一年に一回味わえるだけの芋粥を飽きるほど食してみたいということだった。するとある日の集まりでこれを伝え聞いた藤原利仁が、五位に芋粥を飽きるほど食わせてやろうと企んだのである。日を改め、恐縮しながらも芋粥食いたさに利仁についてきた五位であるが、行けども行けども利仁は馬の歩みを止めようとはしない。そのうちに京の都どころか、山賊の跋扈する越前への山道へと出てしまう。

「偸盗」
 沙金は年の頃25,6、洛中を騒がせる盗人の頭であり、極めて美しく淫乱な女夜叉である。偶然に彼女の集団に取り込まれ、仕方なく悪事を働くようになった太郎と次郎の兄弟は、同じように沙金に惚れて恋敵になった。太郎は疱瘡を患った隻眼の醜男であり、弟の次郎は見目整った美男である。ある日、沙金は押し込み強盗に見せかけてしつこい太郎を抹殺することを次郎に持ちかける。次郎は一瞬たじろぎながらも、沙金欲しさに目が眩んで実の兄の殺害の企てに首肯してしまう。
 ところが、当日の押し込みで思わぬことが勃発するのであった。
 殺害を目論まれていたのは、太郎だけではなく、次郎自身でもあったのだ。恐るべき沙金・・・

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