「彼女のいない飛行機」ミシェル・ビュッシ

 悲惨な飛行機事故でたったひとり、生き残った女の子。
 彼女はいったい何者だったのか?


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   1980年12月22日深夜。
   トルコ航空イスタンブール発パリ行きエアバス5403便が、
   フランススイス国境の山岳地帯に墜落した。
   乗客乗員169名のうち168名は、墜落時の衝撃と火災で死亡。
   ただひとり、生後数ヶ月のフランス人の女の子だけが生き残った。
   奇跡的に機外に放り出されて、捜索隊に発見されたのだ。
   しかし。「奇跡の子」として全国から注目された彼女の身元は、
   一向に明らかにされなかった。
   なぜなら、飛行機には同じ年格好の赤ん坊がふたり乗っていたのだ。
   リズ・ローズとエミリー。
   彼女のどちらかが生きていれば、どちらかが死んでいる。
   彼女はリズなのか、エミリーなのか、それとも・・・
   

 
 分厚いよう、600ページ強ある文庫本なんて久しぶりに読んだ。
 フレンチミステリーですね。
 けっこう、仕掛け感のある作りで、展開がアクティブ、退屈させません。
 何が一番効いたといいますか、最後まで引っ張ってくれる原動力となったのは、この事故を18年間追っていて謎が解けなかった私立探偵がいるのですね。この探偵の日記というか、捜査資料に沿って物語が進んでいくのですが、冒頭の導入で、厭世観で自殺しかけていたこの探偵が、この世の見納めで飛行機事故当時の新聞の一面を見て、「そうか! わかった! やっと事件の謎が解けた!」となるのですよ。そして、事故当時の新聞を読んでもわからなかった、18年後の今見たからこそわかったんだ、と書かれているのです。
 何が、事故を報じた新聞に載っていたのか?
 想像するに、おそらく飛行機事故で助かった赤ん坊の救出写真に何か写り込んでいたのでしょうね。
 そしてそれが、この身元不明の赤ん坊がリズだったのか、エミリーだったのか判断できる確かな証拠となったのでしょう。
 でも、なぜ18年後に見たからわかったの? 逆に言えばそれまでは見てもわからなかったのはなぜ?
 ところが、この探偵の家に別の登場人物が行くと、探偵はすでに殺されていました。
 一番肝心なところを告げないまま、彼は永遠に口を閉ざしてしまったのです。
 こう書かれると、無性に気になって読んでしまうというのが人情ですわ。
 さずが、海外のエンタメは導入がうまいですなあ。
 まあ、多少勘が良ければピンときますけどね、問題の赤ん坊も18歳になっているんですから。
 それでも、この導入にラストまで引っ張られたのは確かであり、これがあったからこそ楽しめたのです。

 一方、ちょっとおかしなところもありました。
 赤ん坊の服の謎です。トルコのグランドバザールで売られていた服を着ていたはずなんですが、最後の所、そうはなっていなかったように思います。なぜトルコで売られていた安物の服を着ていたのかが、謎が謎を呼ぶ重要な伏線であったはずです。
 いつのまにか、忘れ去られていましたね。
 リズはそんな安物を着るはずないし、エミリーはフランスから服を持って行ったはずでした。
 ワンピースになっていましたね。違いましたでしょう?
 もうひとつ細かいところですが、フランスの実業界の大物であるカルヴィル家の一人息子が、この時代にトルコ航空で故郷まで帰るとは思えません。共同運行している時代ならいざしらず、問答無用でフランスのフラッグキャリアであるエールフランスに乗るんじゃないですかね。
 まあ楽しかったけど、ちょっと残念。そんな感じでした。


 
 
 
 

              
    




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