「地に巣くう」あさのあつこ

 弥勒シリーズ第6作「地に巣くう」を読みました。
 小説宝石連載時にタイトルは「地虫鳴く」でしたが、変更になりました。
 同名の小説が木内昇の新選組物(傑作!)にあったことが、関係したのかもしれませんね。

 あらすじ。
 木暮信次郎が、弥勒寺橋の近くで襲われ、腹を刺された。
 刺したのは、老いた小男で、同心の信次郎を木暮と確かめた上での凶行であった。
 命に別条はなかったものの、市中見廻りの同心が路上で町方に刺されたことは、明らかな失態である。
 切腹こそ免れたものの、信次郎は謹慎になった。
 普段の信次郎なら、老いた小男に刺されるようなヘマは犯さない。
 彼は、両国の両替商大橋屋の内儀お美代の間男とのこじれ話を収めてやった礼に、料亭でお美代から酒肴の接待を受けていた。そのときに、どうやらしびれ薬を盛られたらしい。 
 後日、信次郎を襲った老人は、水死体となって川ぬ浮かんだ。他殺である。
 この老人は名を徳助といい、遠島から20年ぶりに江戸に帰ったところであった。
 徳助を島送りにしたのは、信次郎の父で10年前に心の臓の病で急死した右衛門である。
 伊佐治が仏のようだったと称えた先代同心の右衛門は、その裏で20年経っても消えぬ恨みを受けていたのだ。
 さらに、大橋屋が火付けで全焼し、お美代と亭主の実三郎が焼け死んだ。
 複雑怪奇な事件の真相は、20年前の隠された深い闇へと遡る・・・

 はい。
 第一作目で、信次郎の父右衛門は表向きの死因は心臓発作ですが、ちょっと頭がおかしくなった剣の達人の同僚に殺されたんじゃなかったでしたっけ、私の記憶違いですか。
 まあいい、そういうことならそれはそれで。
 このシリーズ、面白いことは面白いのですが、そろそろ、信次郎と清之助の、なんていうの、腹の探り合いじゃなくてなんかこう、感情のもつれ合いっての、なんだか鬱陶しくなってきました。
 もう飽きたよね、実はホモかおまえらっての。
 くどいよ、ネチネチと。
 作者が女性だからでしょうか、このこだわりようだけは、私には理解できません。
 これがなければ、ずいぶんとスッキリして、もっと楽しいのになあ。
 ふたりが互いにどうしてそれだけ執着するのか、まったくわかりません。
 清之助はまあ、売出し中の江戸で評判の青年実業家じゃないですか、でも、信次郎はただの同心でしょ。
 たぶん、釣り合わないんですよね。
 北南町奉行所に与力40数騎、同心260名ですから、おそらく今で言う警視庁の警部クラスだと思うのですが、同心は同心で出世しませんからね。中村主水だって同心でしょ。五十俵二人扶持くらいの薄給じゃないですか。
 もちろん、清之助はただの商人ではなく、凄惨な過去を持つ人斬りなわけですが、それでも信次郎はただの同心だから、やはり関係はいびつに見えてしまいますな、そのへんがこちらとしてはしっくりこないところです。
 いっそ清之助が幕府の大目付の委託をうけた隠密とかだと、ぐっと面白くなったかもしれません。
 でもそうなると、伊佐治親分の居場所がないか。
 それはちょっとね。このシリーズの主人公は信次郎、清之助、伊佐治のトロイカに見えて、実は伊佐治ですからねえ。

 ま、能書きはおいといて、斬り合いの描写は、ものすごく巧いです。
 たまさかにしかないんですけどね、このシリーズにおける斬り合いの描写でハズレはありません。
 今回は特に好き。斬ったあと、刺客の袖で血を拭う、鞘に刀を納めると、かしゃりと小さな声をたててそれで目が覚めた、なんて、一流の時代アクション作家でもなかなか書けないと思いますね。
 瞬間の切り取りが巧いんだと思います。
 このわずか5ページくらいですか、これだけで読む価値がありました。


 
 
 
 
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