「量子論から解き明かす『心の世界』と『あの世』」岸根卓郎

 著者は京都大学の名誉教授。
 現代科学の最先端をいく最も高度で“ホット”な量子論を介し、非科学的として排除されてきた見えない心の世界(あの世)を、科学しようと試みたのが、本書です。
 量子論は現在の地球科学をリードするミクロの物理学であり、携帯電話やGPS、パソコン、MRIから超伝導リニアモーターカーにまで理論が応用されており、現在開発されている量子コンピュータに至っては、完成すると今のスーパーコンピュータでは1000億年かかると云われる一万桁の因数分解が、わずか数時間でこなせるようになると云われています。
 間違いなく、世界は変わるでしょうね。
 そして、量子論は、最先端科学で私たちの生活を左右するだけでなく、私たちの心の分野である哲学や宗教の領域にまで踏み込もうとしているのです。本書で扱われている、見えない世界の解明も、量子論があるからこそ挑戦ができるのですね。
 ただ、偉そうなことは言えないのですが、非常に優しく丁寧に書かれていますが、最低限の物理学の知識は必要かと思います。
 それでも、ニュートン力学とアインシュタインと素粒子物理学の初歩くらいわかっていれば、あるいは、本書を読むことによって、これまで見ていたこの世の景色が180度変わって見えるようになるやもしれません。
 私は、オカルトを信用しません。
 しかし、本書に書かれていることは、ある程度、腑に落ちます。
 これは私の脳の容量不足で、電子の共存性や量子テレポーテーションなどわからないところがあるからであり、量子論の体系がおおまかに飲み込めるならば、著者の考え、心の世界の存在に心酔するやもしれませんね。
 本当に面白い本です。
 ただ、補論として巻末に載せられている量子論とタイムトラベルの話題については、前にあった超光速ニュートリノの話題が大きく扱われているので、残念ながら賞味期限が過ぎていると思われます。

 で。
 量子論で、著者はどうやって“見えない世界”を解明しようとしたのか。
 量子論によると、電子は波動性と粒子性の二面性を持つことになっています。
 電子は常に波なのですが、実験者が観測することによって、粒子になります。
 つまり、観測されるまで、電子という存在は実はどこにあるのかわからないのですね。
 有名なシュレディンガーの猫という思考実験があって、毒ガスを放つ放射性物質と一緒に箱のなかにネコを入れると、そのネコは生きているのか死んでいるのか、実験者が箱を開けるまでわからないというのがありました。
 これは、箱を開ける前に結果(ネコの生死)がわかっているのではなく、箱を開けて初めて、事象の結果がでる、すなわち電子が波から点になるのと同じように、目に見える形になるというのです。
 箱を開けるまで、箱の中のネコは生きている状態と死んでいる状態が重なりあってそこにあるのです。
 そんなバカなと思われるかもしれませんが、絶対的存在はこの世にないと量子論で証明されています。
 たとえば、月だって、私たちが見るからそこに存在しているのであって、見なければそこにあるかどうかわかりません。
 人間が見た瞬間に、波の状態が収縮して粒子になり、見える現実の月になるのです。
 これを波束の収縮性と云います。
 月だって人間だって、無数の電子から成り立っているわけです。
 著者はここに注目し、波動性(見えない世界)と粒子性(見える世界)の関係性を考察しています。
 月を見るのは、人間の心です。つまり、この世は私たちの意識(心)とは無関係に形成されているわけではなく、私たち人間の心そのものがこの世を創り出しているというのですね。
 宇宙の万物や宇宙で起こる様々な出来事は、すべて潜在的に存在していて、私たち人間がそれを観察しないうちは実質的な存在ではないが、観察すると実質的な存在となるのです。
 これが実際の電子の実測から実証された、量子論の波束の収縮性、醍醐味。
 「神様はサイコロ遊びをしない」とアインシュタインは怒りましたが、ボーアだったっけ? 「なぜあなたは神様がサイコロ遊びをしないとわかるのですか」と反論し、ボーアが勝ちました。目に見えないミクロの世界では相対性理論は通用しません。

 実は偉そうなことを言うわけじゃないですが、似たようなことは私も考えていました。
 飲み会などで会って初めて友達はそこに存在しているのであって、実は私の世界には彼はいないんじゃないかと。
 二次会の前に別れて、道を曲がって見えなくなった瞬間に彼は消えているのではないかと。
 会うまでの彼は波なのだと思います、もちろん、彼にとっては私も出現するまでは波なのです。
 こういう考え方はおかしいですかね? 私はでも真理だと思いますよ。体も心も電子ですから。

 まあそれはおいといて、私がたまげたのは、この我々の住む三次元世界が多次元世界の投影なのではないかということ。
 つまり、私たちの目にする、二次元の影みたいなものです。
 影は三次元にはなりません。常に二次元で人間について回っていますね。
 ところが、四次元世界の影は三次元であり、我々がそうなのではないかというのです。
 それも、その発信元がミクロの世界からというのですから、この発想は私にはありませんでしたから、新鮮でした。
 読みながら、ああそうかもしれないと思わされてきましたから、不思議です。
 問題は時間なのです。これが一方通行だから、この世は三次元で不便なんですよね。死にますし。
 でも時間が双方向である四次元世界の影だから、この世は時間が制限されているのだと言われれば、煙に包まれながらもなんだか納得してしまう(笑)
 単純に考えれば、二次元の平面を組み立てたのが三次元の立方体ですから、四次元体は、立方体で組み立てられた世界ということです。三次元に住む我々の理解と想像の範疇を超えています。
 今、ダークマターとダークエネルギーがこの宇宙の大方を占めるといって、宇宙物理学の最大の謎となっていますが、あんがい、ダークなのは我々目に見える少数派の物質側なのではないでしょうか。
 おそらく、この世界は見えない世界から見ると宇宙の辺境であり、我々はものすごく不便極まりない、限定された一生を送る不幸な電子の集合体なのかもしれません。
 きっと見えない世界とは、想念の世界なのでしょう。


 
 
 

 

 
 
 
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