「被差別のグルメ」上原善広

 路地のアブラカス、アイヌのキトピロ、粟国島のタンナー、在日の焼肉・・・
 食事から見えてくる、差別されてきた人々の「食文化」、営み。
 そして、消え行くソウルフードの残影を、上原善広が追う。

 フライドチキンが奴隷だった黒人のソウルフードというのは聞いたことありました。
 白人が食べずに捨てた手羽などを齧って食べられるようにディープフライしたのが最初らしいです。
 まあね、食べ物には悲しい歴史とか付き物ですからね。
 そういう意味では少し違いますが、コメだって被差別のソウルフードだと思いますよ、私は。
 あまり日本人は意識していないかもしれませんが、白人の黄色人種に対する差別は依然、根深いです。
 「アジア人は米でも食ってろ」とかね「コメツキバッタめが」とか、コメに絡められるパターンが多いです。
 私は一般の方より渡航経験があるほうですが、何度も嫌な目にあいました。
 これでも武道格闘技の黒帯を2本持っている暴力主義者ですから、一度カンボジア行きだったかな機内でうっとうし白豚がいたので空港を出たところで叩きのめしてやろうとしたこともありますが、その男をある国の国旗をつけた車が迎えにきていたので、逃げました。危険な国です、命あっての物種ですからね。
 中国なんかだと今はどうか知りませんが、反日ドラマをよくテレビでやっていましてね、それに出てくる日本軍の兵隊が「メシ!」っていつも怒鳴るんですよ。すると、その兵隊の前にドカッと大盛りの白ご飯が置かれる。兵隊はそれをおかずもなしにうまそうにむしゃむしゃ喰うのですが、毎日出てくる、この兵隊が。「メシ!」って。これはとんでもない偏見を生むと思いましたね。
 本書はもちろん、そういう視点からは書かれておらず、どちらかというと日本人に差別されてきた側からの視点で書かれているわけですが、私に言わせれば、世界で差別されている黄色人種、さらにその黄色人種の仲間から差別される日本人という構図もあると思うのですね。

 さて、能書きはおいといて本作。
 タイトル通り食べ物がテーマとなっていますが、別段、食欲をそそるようなものは出てきません。
 フク(肺)の天ぷら、菱の実、ヌク(鹿肉)、イラブー(海蛇)、タンナー(ソテツ)、などなど。
 肺は私も食べたことあるわ、福岡の中洲で。赤福って名前だったと思う。美味かった。
 鹿肉やイノシシなど野獣食は当たり前のように食べていますが、これは血抜きが上手に出来ているかどうかで、全然違いますから。臭かったらとんでもなく不味いですが、最近は、みんな地の抜き方が上手いというか、川で晒したりしますからね。
 イラブーやソテツなんかは、想像もつきません。きっと食べずに死ぬと思います。
 むしろ本書で興味深いのは食べ物ではなく、これまで知らなかった被差別の対象でしょうか。
 特に、北海道にアイヌとは違う少数民族がいたことを知りませんでした。びっくりした。
 ウィルタ(オロッコ)、ニブフ(ギリヤーク)といいます。元は樺太の北方少数民族です。
 彼らは、日露戦争の後で日本領になった南樺太に住んでおり、そのときに日本人になりました。
 ところが第二次世界大戦の敗戦で、南樺太は再びソ連の領域となり、彼らはその帰属を問われることになったのです。
 樺太に残るものが大部分だったでしょうが、中には日本人として生きていくことを選び、北海道に移住した者がいるのです。
 新天地で学歴のない彼らを待っていたのは、思いもかけぬ差別と肉体労働でした。
 ウィルタ(オロッコ)の最後の生き残りの老人に著者は会いにいきますが、最後まで本当の身分を明かすことを拒否されました。相当、ひどい目にあったのだと思いますねえ。
 ニブフ(ギリヤーク)は、3世紀頃から始まり13世紀頃に消滅したオホーツク文化の担い手であった可能性が指摘されています。
 彼らのソウルフードは、翻弄されたその民族の運命と共に、消え去りました。

 あとは韓国の被差別対象である白丁(ペクチョン。屠殺業者)の話とかかな、まったく知らなかったので勉強になりました。
 日本の焼肉は、在日と路地の食文化の融合の結果である、というのも著者が言うのならばその通りなんでしょう。
 この方、大阪体育大学卒業なんですが、なにを専攻していたんでしょうかねえ。
 書き物が特別上手とは思えませんが、その行動が妙に気になる方ではあります。



 
 

 
 
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