「ツチノコ 幻の珍獣とされた日本固有の鎧蛇の記録」木乃倉茂

 昭和17年8月21日、長野県埴科郡西条村の山中(上田市よりの標高五百メートルの丘陵地)で、軍(海軍)による大規模な施設工事の最中、掘り起こされた土中から奇妙な生き物が発見された。
 現場で作業をしていた者が、この謎の生物を捕獲。
 報告は鉄道省の役人である山形光朋から、工事をおおもとで管理していた海軍省松代鎮守府に報告され、海軍直属機関で生物化学兵器の研究をしていた大日本理化学研究舎にこの生物は託されることになった。
 本書は、野槌(ツチノコ?)とされるこの謎の生物の、昭和17年8月21日から昭和18年10月21日までの、約一年間にわたる観察記録である。
 観察者は、著者の祖父であり大日本理化学研究舎の研究者だった木乃倉佐之助。
 生態観察、採毒しての成分調査、死後の解剖の詳細など。写真も有り。

 長さ30センチのビール瓶状の形態、最後部にちょろっと尻尾が伸びています。
 ウロコにはマムシのような銭形の斑紋が見られます。
 誰がどう見ても、幻の生物であるツチノコを想像するでしょう。
 木乃倉佐之助によって野槌と名付けられたこの生物の観察記録からその特徴を書き出すと、
 
1,土の中で生活する。飼育槽に盛り土するたびその最深部まで潜る。
2,土中で生活するため眼は退化して小さい。しかし、その眼は蛇のものでトカゲのような瞼はない。
3,カレイやヒラメが泳ぐように体を波打たせて移動する。まれに尺取り虫のようにも進む。
4,60センチほど跳躍できる。
5,性格は極めて臆病。まれに飼育槽の土中から掘り起こされたとき、怒って威嚇行動。このときは俊敏。
6,1年間の観察で1回だけ、体全体を風船のように膨らませて威嚇してきたときがある。
7.ミミズを食す

 さらに、木乃倉佐之助と同じ大日本理化学研究舎の研究者でマムシやハブなどの採毒をしたことがある益岡岩三郎によって、野槌の毒性の成分調査がなされました。
 それによると、マムシと同じポロペプチドトキシン、プロテアーゼなどタンパク質破壊酵素が含まれていたほか、マムシには含まれないムスカリン、リゼルグ酸ジエチルアミドという強い幻覚作用をおよぼす物質が検出されました。
 
 これらのことから、1年にわたり野槌を飼育・観察し記録を続けた木乃倉佐之助は、野槌は日本固有のクサリヘビの一種であると結論づけました。
 理由はクサリヘビ科のマムシにもある銭形の斑紋が野槌にも認められること、毒の成分がマムシと一部同じであること。
 昭和18年9月17日に飼育槽で死んでいることが発見された野槌は解剖され、骨格標本にされました。
 しかし、昭和19年2月に大日本理化学研究舎が解体されると、骨格標本はいったん東京の木乃倉佐之助の知人に預けられましたが、東京大空襲によって焼失したと考えられています。

 うーん。
 なんとも云えませんねえ。
 戦時中とはいえ、科学者がここまで調査したことが闇に埋もれたままだったというのが解せません。
 確かに、731部隊とも関係があったであろう生物化学兵器を研究していた大日本理化学研究所の研究者であったと戦後名乗り出ることは難しかったことは想像できるのですがねえ。
 毒性の成分調査については、別の本で当時でも蛇毒研究が進んでいたことを知っているので「昔にそんなちゃんと調べることができたの?」という疑惑は、私は持ちません。
 せめて骨格標本が残っていればなあ。
 読む限りでは、アオジタトカゲではないと思いますが・・・


 
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