「コンビニ人間」村田沙耶香

 「ピークが落ち着いたら、冷たい飲み物の補充をしてあげてください。アイスも、暑くなってきたらさっぱりした棒アイスのほうが売れるので、売り場を直してあげるといいですね。それと、雑貨の棚が少し埃っぽいですね。一度、商品を下げて棚清掃を行ってください」私にはコンビニの「声」が聞こえて止まらなかった。
 「それと、自動ドアにちょっと指紋がたくさんついてしまってますね。目立つところなのでそこも清掃してあげてください。あと、女性客が多いので、春雨スープがもっと種類があるといいですね。店長に伝えておいてください。それと・・・」


 第155回(平成28年度上半期)芥川賞受賞作です。
 細胞全部がコンビニのために存在している“コンビニ人間”のような女性のお話。
 彼女は、子供の頃から、かなり変わっていました。
 普通の感覚からは、かなりずれていたのです。
 両親から「治さなくちゃならない」と聞いていながら、自分では何を直したら普通の人間になれるのかわかりませんでした。
 そしてそのまま、彼女は大学1年生のときにオープンしたコンビニでアルバイトを始めて、18年も経ってしまいました。
 恋愛もせず処女のまま、両親や妹が心配するなか就職活動もしないでずっとコンビニ店員として働き、朝も昼も夜も勤めるコンビニの期限切れ間近のパンや弁当を買って食べ、たまには「餌」と称する鍋で煮ただけの野菜と白飯を食べ、六畳半のアパートに敷きっぱなしの布団で寝るという生活を、変化のないまま18年も続け、彼女は36歳になっていました。
 その間に店長は8人も変わりました。もちろん、アルバイトでずっと続いているのは彼女だけです。
 普通の人間になれない彼女にとって、コンビニのマニュアルは完璧でした。
 なぜなら、その通りにしてさえいれば、どうやら社会に適応できない自分を出さなくていいまま、コンビニの店員という立場を演じられるからです。コンビニで働いている間、彼女は別の人間になれるのです。しかも仕事は完璧です。
 しかし、人手不足から彼女以上に変人であるひとりの男性アルバイト店員が雇用されたことにより、彼女のコップの中の平穏は乱されてしまうのです・・・

 映画化してほしいなあ。
 白羽役は、アンガールズの田中かと一瞬思いましたが、オードリーの若林でもハマるかもしれません。
 鼻の穴に鼻水で膜が張れるかどうかはわかりませんが、それは絶対に張ってほしいですね。
 主人公の古倉恵子役はちょっと思い浮かばない。
 おそらく作者の確信犯ですが、この小説で一番奇妙なところは恵子の外見が一切描写されていないところ。
 もちろん、白羽のセリフによれば美人ではないということはわかるのですが、どうだろう。
 恵子は完璧に仕事こなしているのですが、飲み会にまったく呼ばれていないということは、店のみんなは彼女はどこかおかしいと思っていたということですよね。18年同じ店で働いているというのがウザいということだけではないでしょ。
 でも妹の対応を見ていると、姉ちゃんにそれほどすべてを諦めたような感じではないんだよなあ。
 いないものとして扱うのではなく、やればできるかもみたいに姉ちゃんの可能性を信じている感じで。
 うーん、ハリセンボンの痩せたほうかとも思いますが、情緒のある顔ではいけない気がします。
 原作とは異なりますが、ひょっとしたら美人すぎるような女優を持ってきたほうがハマるかもしれません。
 でもどうかなあ、難しいなあ。能年玲奈でもいけるような気がしますが・・・・あ、のんか今は。年さえなんとかすれば。

 私も学生のときはコンビニでバイトしていたので、雰囲気はわかります。
 コンビニはけっこう、人間臭いところです。色んな人間の交差点です。
 作者の村田沙耶香さんは36歳の今も現役のコンビニ店員ですが、そういう、実は人間臭いのに画一性のマニュアルを求められるコンビニという題材を逆手にとったのではないでしょうかね。
 恵子はマニュアル完璧なのに浮いていた、それは彼女に人間臭さがなかったからであってね。
 それは当然、彼女はコンビニ定員を演じていただけなのですから。それが店のみんなにはわかっていました。
 それでもそのマニュアルのおかげで、彼女は18歳から36歳になるまで生活できていたわけでしょう。
 ある意味、社会というものと私生活のメタファーといえるかもしれません。
 社会人マニュアル。社会から脱落した白羽。白羽によって、気付かされた恵子。
 しかし、人間にとって社会は広いことが必ずしもいいことではないのです。
 普通ってなんでしょうか?
 恵子は恵子のままでよかったと思います。朽ち果てるまで、いつまでも・・・コンビニの中で。


 
 
 

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