「航空母艦『赤城』『加賀』」大内建二

 日本海軍機動部隊の主力であった第1航空戦隊大型空母「赤城」「加賀」。
 大艦巨砲主義からの転換を象徴した両艦の設計構造、繰り返された改造の内容、装備の変遷、艦載機の種類、そして1942年6月5日ミッドウェー島のはるか沖に沈むまでのあまりにも短かった戦歴などが紹介されています。
 
 「赤城」「加賀」が生まれることになった当時の背景なども詳述されていましてね。
 こちらのほうの著者の入れ込み具合が、両艦の戦歴の紹介より大きいかも。
 知らなかったんですが、世界で最初に実戦に投入された航空母艦は日本海軍のものなんですって。
 水上機母艦「若宮」が、4機の水上機を搭載して青島攻略作戦(1914・11~12)に参加したのが世界初だそうです。
 4機の水上機は、合計で49回出撃し、敵陣地偵察や小型爆弾による攻撃を行ったそうです。
 すごいですよね、日本海軍の実行力は。航空機の実用性にいち早く着目していたということです。
 さらに、海軍は世界最初の全通飛行甲板を備えた航空母艦「鳳翔」を1922年(大正11)に完成させます。
 この頃はアメリカやイギリスも航空母艦という新しい艦種を研究、建造に着手していましたが、同じように日本海軍も遅れをとるどころか世界のトップを走っていたのです。
 しかし、時代の趨勢はいまだ大艦巨砲主義にどっぷりひたっていました。
 所詮、航空母艦などまだまだ海のものとも山のものと知れぬ、想定外の実験戦力だったと言っていいでしょう。
 八八艦隊。海軍は、戦艦8隻巡洋戦艦8隻からなる重厚な攻撃部隊の設立を計画していました。
 ところが、軍事費の増大に悲鳴をあげた世界各国は一転軍縮に転じます、これがワシントン条約ですね。
 この条約のおかげで、八八艦隊構想は露と消え去り、建造中であった戦艦と巡洋戦艦から空母に転用されたのが、「加賀」と「赤城」でした。「加賀」は41センチ砲10門を備える予定だった戦艦「加賀」級から、「赤城」は同じく41センチ砲10門を備え30ノットの高速を誇る巡洋戦艦「天城」型から、航空母艦へ変身することになったのです。

 なんと空母になった当初は、両艦とも飛行甲板が三段式でした。昭和2~3年に両艦が完成したときのことです。
 一番上が着艦用で、二段目と三段目は攻撃機と戦闘機の発艦用だったのです。
 びっくりですね。当時の試行錯誤というか、まだ航空母艦はこれという決まった形がないのですから。
 結局、搭載される航空機の性能が上がって重量が増しますから、多段式の甲板は一段式に改められたわけですが・・・
 巡洋艦並の20センチ砲も装備されていました。これは沈むまでずっとありました。
 実際、空母が20センチ砲をぶっ放すことがあるでしょうか? 重量の損にしかならんと思うんですが。
 本書の興味というか読みどころは、空母という艦種の黎明期の試行錯誤と、実戦に通用するべく改造につぐ改造を重ねた「赤城」と「加賀」の変遷にあると思います。
 赤城の甲板には傾斜があって、その理由ははっきりしたことがわからないなんて書かれてあるのを読むと、俄然興味が湧きますよね。中央部分が1~2度盛り上がっていたんです。おそらく着艦後の滑走スピードを和らげるためと、発艦の滑走スピードを助けるためだと思われるのですが、それならなぜ他の空母には採用されなかったのでしょうかね。
 それと、イギリスの空母のスタイルを真似たためらしいのですが、格納庫が密閉式なのですね。
 ちなみにアメリカは開放式の格納庫です。飛行甲板の下にありあすからね、格納庫は。
 格納庫が密閉式であると、飛行甲板に爆弾が落ちて甲板が破られて格納庫で爆発すると、もろ全滅するわけです。
 開放式だと爆風が逃げて減殺されるのですが、密閉式だと威力がすべて船内で破裂してしまう。
 ですから飛行甲板は装甲甲板でなければいけないのですが、日本の空母は当初は装甲がありませんでした。
 このために、ミッドウェーでアメリカの爆撃機に実力以上にやられてしまったらしいのです。
 零戦もそうですが、防御の弱さというか匹夫の勇というか、結局、日本の軍部が戦争に負けたのは自業自得ですね。
 はじめの目のつけどころはいいのです。「鳳翔」だって建造できたわけだし。頭は固くない。
 あとがいかんわ。おそらく貧乏性なのかもしれませんね、資源がないから。

 「赤城」と「加賀」の戦歴は、我々の知っている通りです。太平洋戦争開戦から1年もたずに沈んだわけですから。
 強いて言うなら、「加賀」のほうが日支事変に参戦しているぶん戦功があります。
 あと、本書を読むまで気に留めてなかったのですが、歴代艦長のところでおっと思ったのは、赤城の最後の艦長である青木泰二朗大佐。彼はミッドウェーで沈んだ空母の艦長ではただひとり生き残った人物だったのですが、そのことが内地で責められ、辞職に追いやられたそうです。おいおい、と思う。強いて言うなら悪いのは南雲のハゲと戦闘機バカの源田だろうが。
 生き残ることだって勇気がなきゃできないんだよ。
 こんなんだから、上にアホしか残らないのですね。


 
 
 
 
関連記事
スポンサーサイト

この記事へのコメント

トラックバック

URL :

カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最新記事
カテゴリ
ミステリー (92)
ミステリー短編集 (17)
歴史ロマン・ミステリー (17)
冒険ロマン・ミステリー (14)
サイコホラー・ミステリー (15)
学園ホラー・ミステリー (14)
民俗ホラー・ミステリー (10)
政経・金融ミステリー (18)
ファンタジックミステリー (22)
近代・昭和ミステリー (14)
オカルティックミステリー (7)
青春・恋愛ミステリー (21)
医療小説・ミステリー (22)
伝奇小説・ミステリー (13)
時代人情小説・ミステリー (17)
時代冒険小説・ミステリー (19)
社会小説・ミステリー (15)
スポーツ小説・ミステリー (10)
アーティスティックミステリー (12)
海外ミステリー (28)
海外冒険小説・スリラー (16)
SF・FT・ホラー (26)
SF・FT・ホラー短編集 (13)
海外SF・FT・ホラー (17)
クライシス・パニックサスペンス (12)
警察・諜報サスペンス (29)
悪漢・犯罪サスペンス (29)
中間小説 (24)
青春・恋愛小説 (31)
家族小説・ヒューマンドラマ (31)
背徳小説・情痴文学 (14)
戦記小説・戦争文学 (19)
政経・金融小説 (14)
歴史・伝記小説 (21)
芥川賞受賞作 (19)
直木賞受賞作 (19)
文学文芸・私小説 (24)
海外小説・文学 (12)
文学アンソロジー (54)
歴史・伝記 (30)
戦史・戦記 (31)
海軍戦史・戦記 (148)
物理・宇宙 (26)
生命・生物 (37)
アンダーグラウンド (46)
事件・事故 (37)
世界情勢・国際関係 (25)
スポーツ・武術 (23)
探検・旅行記 (22)
随筆・エッセイ (30)
月別アーカイブ
プロフィール

焼酎太郎

Author:焼酎太郎
FC2ブログへようこそ!

検索フォーム
最新トラックバック
リンク
QRコード
QR
RSSリンクの表示