「不発弾」相場英雄

 あれから20数年。
 水面下で膨らみ続けてきたバブル期の負債が、ついに爆発する!?
 社長から社長へと密かに受け継がれきた“不発弾”の行く末・・・
 戦慄の金融ミステリー( ゚д゚ )彡
 
 ちなみに、読めばわかりますが、三田電機は東芝、ゼウスはオリンパス、ノアレはヤクルトがモデルです。
 内外情報通信社の相楽は、実在した闇のフィクサー・石原さん(「黒幕 巨大企業とマスコミがすがった裏社会の案内人」伊藤博敏)がモデルで間違いないかと思います。
 東芝やオリンパスはともかく、ヤクルトは生々しかったですわ。
 覚えている方もいるかもしれませんが、堅実経営で借金がなかった会社が、バブルで財テクに狂い、確か大蔵省から天下った金融のプロが1千億円もシコって(損して)しまったのは厳然たるノンフィクションですからね。
 ああ、こういう感じで相場での負けが認められずに、どんどん雪だるま式に負債が積もっていったんだろうなと。
 博打は負けを認めた瞬間に地獄に落ちる、ならば負けを認めず続けたらいい。
 いやあ、怖いね。
 最後の方は、ここでも書かれていますけども、自分が何をしているのかわからなかったんじゃないですか。
 でもまあ、ヤクルトはまだましですよ。
 思い切って清算して、「こんだけ損しました。すみません」ってそのときは地獄だけれども、立ち直れたじゃないですか。
 もちろん、あの頃は潰れた会社や銀行が続出しました。
 問題は、負けを認められずに損失をひた隠して、何かの拍子に爆発して周囲に多大な迷惑をかける巨大な不発弾を抱えたまま、現在に至っている会社です。どうしてこんなことがあり得たのか? 本作の肝はそこでしょうね。
 ごまかせるものは、ごまかそうという風土。
 クール・ジャパンなどと偉そうなこといっても、この国は一面でそういう風土も持っているのですよ。
 私が社長のあいだにこんな恥をさらせられない、私が財務責任者のうちは表に出せるわけない、先へ先へと順送りした不発弾の行方は・・・

 物語の進行ですが、視点はふたりいます。
 ひとりは、ナンバーシリーズに登場した、警視庁捜査二課第三知能犯捜査係統括管理官の小堀秀明。
 34歳のキャリア警察官です。彼のミスにより、ナンバーシリーズの第三知能犯捜査係はいったん解散したこともありました。彼が二課にきて2年半と書かれているので、「リバース」からしばらく経ったころでしょうか。
 ナンバーシリーズの主人公だった西澤はでてきません。今井春彦巡査部長と島本という元SITのベテラン女性警察官が出てきますが、私の記憶にはありません。いたかな? まあ、シリーズは関係ないですけどね。
 小堀は、三田電機(東芝)の不適切会計を巡る騒動を見て「何かがおかしい」と思い、立件すべく捜査を開始します。
 普通ならば上場廃止されるはずの粉飾決算なのに、どうしてそういう声が上がらないのかと。
 その過程で浮かび上がったのが、もうひとりの主人公である金融コンサルタントの古賀遼こと古賀良樹。
 九州の寂れた炭鉱町出身である彼は、幼い頃に父を落盤事故で亡くし、自堕落な母親の元を離れ、妹を呼び寄せるべく東京の証券会社に就職して懸命に働いていました。しかし、母に売春を唆されるなど劣悪な環境に耐えられず妹は自殺してしまいます。憤怒に燃えた古賀ですが、やがてバブル期に入り、豊富な経験と人脈も得て業界で成功します。
 そして先見の明のあった彼は、バブル崩壊をいち早く感じ取り、落ち込む証券業界を逆手にとって、金融コンサルタントとして独立し、似合わぬ財テクですっかり財務が傷んでしまった企業を相手に“債務掃除人”というべき金融界の闇の住人として君臨していくのです。その手法は・・・

 今だと時価総額とかよく聞きますけど、あの頃は日本は時価会計ではありませんでした。
 株を100億円で買って、値段が下がって50億円になって50億円の含み損を抱えても、帳面では買ったときの100億円の有価証券のまま仕分けすることができたのです。
 もちろん、帳面ではそれでも調べればすぐわかりますから、財務責任者は「どうしたもんかいの」と悩みます。
 損は損だからね。いずれバレる。
 そこで、これに目をつけた外資が、その負債を飛ばす方法を有価証券評価損を抱えた企業に伝授したのです。
 私は頭が悪いのでよくわかりませんが、その損をしている口座をそっくり外資の口座に移し、新しいファンド(仕組債)の中に組み込んでわからなくしてしまうのです。例えるならば、腐ったネギでも鍋料理に入れてしまえば目立たず食えてしまったみたいな。
 運用損単体ではすぐわかりますが、複雑なデリバティブ商品、金融派生商品に紛れ込ませることによって、発覚を遅らせることができるということではないでしょうか。
 それでもいずれ破裂する、ならば、企業買収に巻き込んでしまうというのもアリですか。
 本来ならば500億円の価値しかない企業を、運用損50億円を紛れ込ませて550億円で買えばいいのです。
 これも調べればバレますが、調べなくちゃわからないでしょう。表面上は。
 今朝の新聞にオリンパスのことが載ってましたが、似たようなことをしていたんじゃないですかね。
 バブルが弾けて20年以上経ちますが、いまだに日本のどこかで不発弾に怯えながら余生を送っている方がたくさんいらっしゃるのかもしれません。爆発させていたほうが、後腐れなくてよかったんじゃないですか?
 タイムリーな本でした。面白かったです。


 
 
 
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