「私をくいとめて」綿矢りさ

 恋人として仲が深まるために必要な情熱が決定的に欠けていた。
 (*´Д`)ハァハァ

 確かに、仲を少しでも深めようとしたら、パワーがいるわな。
 でもそれをいちいち「面倒くさい」と思うのならば、それはもう恋愛とはいえないんじゃないですか。
 本当に若葉が勢い良く燃え上がるような恋ならば、面倒くさいことはひとつもないはずですから。
 まあ、そんな一目散な恋愛は滅多にないわけですがね。
 性格からして「そんなの無理」という方も多いことでしょう。
 本作の主人公もそうです。黒田みつ子。
 好きな人を見つけよう、見つけようと焦る気持ちはあっても、自分からアクションができない。
 結果、訪れるはずのない幸運を黙って持っている。
 32歳のOLです。
 そしてたまさか仲良くなった男のことを、「好きかもしれない」と思い込んでしまう。
 会社の取引先の営業マン、多田くん。
 幸いにして、多田くんは、みつ子に好意を持っていました。
 みつ子もそれに気づき始めます。
 しかし、一緒にゴハンして、さあこれからのるかそるか!? というとき、
 「恋人として仲が深まるために必要な情熱が決定的に欠けている」と思ってしまうのです。
 まあ、当たり前だわな。実はもっと早くわかってたはずだろ(笑)
 それでも、彼女は・・・
 今までは、一人で生き続けることになんの抵抗もないと思っていました。
 男性も家庭ももはや遠い存在でしたが、そのことに思い詰めることはなかったのです。
 でも、どこかで生き方のバランスを欠きつつあったのでしょう。
 みつ子には、自分の頭の中に、話し相手がいました。
 それは彼女がAと呼ぶ男性。彼はもうひとりのみつ子であり、彼女の深層心理でした。
 健気に生きているようでありながら、みつ子はAの力を借りてなんとか一日を無事に続けてこられたのです。
 みつ子はAと会話し、多田くんのことを諦めないように説得されます。
 情熱だけが恋愛じゃない。平穏なまま、ゆっくりと愛を育む恋もあっていいじゃいか・・・
 はたして、彼女の恋の行方はいかに?

 はい。
 Aという自分の頭の中にいる人物と主人公が会話しだしとき、この小説はやばいんじゃないかと思いました。
 結局、どういうことだったんでしょうね。
 ラストらへんで、沖縄旅行の直前、みつ子は玄関の鍵がどこにいったかわからなくなったでしょう?
 あのとき久しぶりにAが出てきて「ローテーブルの上にある」って言ったじゃないですか。
 でもそこにはなくて、すぐ近くの戸棚の上にあったでしょう。
 あのとき、ちょっと背筋がゾッとしましたね。
 わかるひとにはわかるかな・・・
 まあ、そこまで考えなくても、綿矢りさなりの味わいのある物語でした。
 けっして面白くはありませんけどね。
 醤油をかけていない冷奴みたいな感じで。素材の味が楽しみみたいな。
 共に芥川賞を受賞した金原ひとみとの、同時連載の新聞小説だったわけですが、金原さんの「クラウドガール」のほうが、私は良かったように思います。
 ただし「クラウドガール」は新聞連載のために、昼下がりに子育て中の主婦が自慰をしているところをビル窓清掃員に目撃されるといった金原ひとみの真骨頂である過激性が抑えられていますからね、飛車角落ちといったところでした。
 やはり綿矢さんは調子が悪いというか、何やら考え過ぎているような気がしますねえ。
 もっと主人公を若くしたらどうだろうと思う。いいときを思い出すんじゃないですかね。


 
 
 
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