「闇を照らす なぜ子どもが子どもを殺したのか」長崎新聞報道部

 長崎では近年、悲痛極まる重大な少年事件が三たび起きました。
 2003年7月の、中学1年生の男子生徒が4歳の男児を殺害した長崎市男児誘拐殺人事件。
 2004年6月の、小学6年生の女児が同級生を教室で殺害した佐世保小6女児同級生殺害事件。
 そして記憶に新しい2014年7月の、15歳の少女が同級生を殺害した佐世保市高1女子同級生殺害事件。
 なぜ、長崎でこのような衝撃的な事件が発生したのか。
 本書は事件の舞台となった長崎県の主たる報道機関である長崎新聞が、各事件の経過と背景、加害少年の更生への道筋、被害者や遺族の置かれた状況などを多面的に検証し、事件の深層に迫ろうと試みた長期連載「闇を照らす」を中心に、刊行にあたって長崎市男児誘拐事件の検証会議の報告書などを付録して再構成されたものです。
 内容はハードですが、私だってあなただって明日にでも事件に巻き込まれる可能性はゼロではありません。
 同じ人間として、大人として、一読の価値があります。

 長崎、事件が多いなとは思った記憶があります。
 佐世保市高1女子同級生殺害事件のときでしょうか。確か加害者の父親は弁護士で自殺したと思います。
 しかし事件の記憶はとかく風化しがちであり、特に自分の住んでいる場所から離れた場所であると、どこか他人事になってしまいます。テレビ観て「こええな」と話し合ってそれで終わり。
 ですが、本書を読めば、とても他人事とは思えないほど身につまされるというか、この深い闇の病弊は長崎にとどまるものではなく、日本の社会全体の問題であるということがわかりました。身近な問題であるのです。
 佐世保小6女児同級生殺害事件については詳細に説明されてないのでわかりませんが、長崎市男児誘拐殺人事件と佐世保市高1女子同級生殺害事件の加害者少年は、発達障害を抱えていました。
 基本的には脳の神経ネットワーク機能の障害とされる発達障害という病気が、即非行につながるものではありません。現に程度の差こそあれ発達障害の子どもはクラスに1名以上いる計算になり、彼らのすべてを犯罪者予備軍と見なすことはとんでもない魔女狩りであり、彼らのほとんどは逆にイジメられる側の人間なのです。身体の障害と違って、精神の障害は見てもわかるものではありませんから、周囲からケアされにくいのです。
 では、何が違うのか。
 たとえば素人の私がこれを読んでいても、長崎市男児誘拐殺人事件と佐世保市高1女子同級生殺害事件の加害者少年を、同じ発達障害という病でひとくくりにすることは無理があると思います。なるほどアスペルガー症候群と自閉症スペクトラム障害というように病名は違うのですが、でもそれは結局、結果論でしょ。病気が犯罪を犯すわけではないと思うのですね。
 事件を起こした子どもが、たまたま発達障害という病気を持っていたと考えるべきではないでしょうか。
 佐世保市高1女子同級生殺害事件の加害少年などはとても発達障害ですむような生易しいものではありません。
 語弊があるかもしれませんが、逆に発達障害に失礼ではないかとも思う。
 猫を殺して解体し、給食異物混入事件を起こし、寝ている父親の頭を金属バットで殴りつけて殺そうとし、本人も人が殺したくてしょうがなかったという人間は、どうみても異常中の異常ではないですか。
 それはそもそも「病気」で片付けていいのでしょうか?
 精神科医が「この少女は人を殺す」とその危険性を問題視して、佐世保児童相談所に通報したのはよほどのことですよ。なのに、佐世保児童相談所は、それを無視したのです。放置しました。それから事件が起きました。
 もちろん、児相が対応できたとしても、異常少女の暴走を完璧に止められた補償はありません。
 しかし、無視するということは可能性をまったくなくすということですからね。
 万死に値数するんじゃないですか、佐世保の児相は。具体的には悪いのは課長ですけどね。
 佐世保の児相には、大変問題のある人間が幹部をしており、以前からパワハラが存在したのです。
 もちろん、長崎県庁の監督問題でもある。そのことは長崎新聞の調査によって本書に詳報されています。
 精神科医の通報を無視した課長にも言い訳はあります。ですが、それは所詮、組織的利害(セクショナル・インタレスト)です。県民の利益を第一に考慮すべき長崎県の県職員が、己の差配する佐世保児童相談所の利益立場を優先しました。
 これ、前川ポコチン喜平元文科省事務次官も同じです。
 国益よりも省益、というね、官僚の鏡とでもいうべき国賊です。
 本書では01年の少年法改正にまつわる(08年の裁判傍聴解禁ふくむ)被害者側の状況も詳しく書かれていますが、それは大事だけれど結局、事件が起こってしまって後のことですからね。
 起こる前が問題なんですよ。起こらなければ被害者遺族もいないわけだから。そして、起こらないということは言い換えれば目立たないことでもあります。
 でも、それこそが行政の本来の仕事なのではないですか。
 組織的利害(セクショナル・インタレスト)を廃した、児童相談所、学校、教育委員会、医師(校医)、県庁市町村役所などの速やかな連携こそが、本来ならば何も起こらない地味で無風な“健全な子ども行政”でしょうね。
 子どもが子どもを殺す社会は、世も末だよ。


 
 
 
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