「空母零戦隊」岩井勉

終戦時所属していた戦闘310飛行隊長であり、元海上自衛隊幹部候補生学校長だった香取氏は、本書の序文で「いわば氏(岩井)は、飛行隊における重鎮であると同時に、神様的存在であった。氏が編隊の中に加わっている限り、真に心強さを感じたものであった」と書いています。
岩井勉は、京都生まれ、昭和10年第6期飛行予科練習生(戦闘機操縦者20名中終戦時生存2名)、昭和14年2月に延長教育を終了後、昭和15年早々に中支漢口の12空に着任し、同年9月13日重慶上空でイ15戦闘機2機初撃墜、太平洋戦争開戦時は筑波空、その後も国内で教員をしていましたが、昭和17年11月空母瑞鳳に戦闘機隊員として乗組み、昭和18年いっぱいをニューギニア、ソロモンの激戦場で死闘し、昭和19年台湾の台南空に着任、同年8月601空の空母瑞鶴戦闘機部隊としてレイテ沖海戦に出撃、沖縄攻撃、本土防空を経て終戦、飛行時間2200時間、飛行回数3200回、着艦回数75回を誇る、まさに日本海軍零式艦上戦闘機の生き字引ともいうべき、屈指の“ゼロファイター”です。

本当に良い本でした。興味深いエピソードも尽きません。
岩井勉のすごいところは、零戦のデビュー当時から中支戦線でそれを駆って戦っていたこと、たぶん11型から52型まで乗っていると思うのですね、ただし52型は武装が重いので翼内機銃外側2門を外して乗っていたと書かれています(どのタイプでしょうか)。そして、空母瑞鶴の戦闘機パイロットとしてレイテ沖海戦に参加した生き残りであること。開戦以来の正規空母である瑞鶴はこの戦いで沈みますが、彼は戦闘機隊のエースとして乗り組んでいたはずです。敵機動部隊に向けて発艦後、グラマンの攻撃を受けこれと戦闘したため、結局フィリピンの北端にあったアパリ基地に着陸するのですが、その経緯は本書で読めて本当によかったと思っています。瑞鶴の最期に乗り組んだ航空隊の生き残りがエースであったというのが素晴らしい。長二飛曹の遺骨を胸に抱いた222ページのシーン、なぜか絆を断ち切り難くという、誰が読んでもぐっとくると思う。泣くと思います。
また、母艦搭乗員だけあって、空母発着の詳細がイラスト付で記されているのも素晴らしいと思いました。
初めに乗組んだ瑞鳳は排水量も少ない小型空母で、飛行甲板幅22メートル、長さ156メートルと狭かったらしくて大変だったらしいです。いかによい着艦ができるかでビールを賭け、そのため艦尾に激突して死んだ者もいたらしいですが……
機銃発射と同時に操縦桿を一振りする、なんてことも書かれています。弾着の範囲を広げる、ということなんでしょうね。
あと、支那戦線の活躍後、郷里に帰って英雄扱いを受けたという微笑ましさ、赤松貞明が婚礼の席に半裸で乱入し妻側の親類に顰蹙をかったこと、台南でいるときにダグラスDC3輸送機のパイロットがおらず、司令に頼まれおっかなびっくりで初操縦、要人を国内に移送したこと、フィリピンに滞在時、特攻機の爆弾は機体にハンダ付けされてるのを見たこと、そして著者が怒っていたのは、昭和12年にはじまった甲種飛行予科練習生と乙種飛行予科練習生では、戦後学歴差別があって、乙種は20年以上も放置されていたらしいです。つまり、乙種は軍隊の予科練で旧制中学の学問を勉強していたのですが、これが認められなかったということなんでしょうね。

最後に、氏の座右の銘を。
生死有命不足論  我従容征大空(生きるか死ぬかを論ずるな、俺はただ大空をゆくのみ)



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