「孤島の鬼」江戸川乱歩

江戸川乱歩全集(3)に所収されたものを読みました。
昭和44年に刊行された全集ですが、原文そのままであろうと思われます。
それをそのままここに書けばピ――が入ります。
よくこのような筋を思いついたと不思議なんですが、どうやら「鷗外全集」の中に2,3行、中国の○○製造という恐るべきネタを見つけたらしいのですね。そこから膨らました物語らしいですよ。

時代は大正末期。
三十歳にもならぬのに、髪の毛が1本残らず真っ白な主人公の箕浦と、右側の太腿の上部のところに恐ろしく大きな傷の痕がある、その妻。ふたりが経験した奇怪至極な事柄とはなにか?
ことの発端は、箕浦の恋人であった初代が後生大事に持っていた“家系図”にありました。
それは、二月ばかり間をおいて起こった二件の殺人事件を引き起こしてしまったのです。
そして、事件の謎を追う箕浦とその妖しい友人である諸戸道雄を、紀州の離れ小島、岩屋島に向かわせることになるのですが……
それは、とてつもない冒険劇のはじまりであったのです。
土蔵に幽閉された“もの”の正体はいったいなにか?隠された財宝は存在するのか?
近代の鬼才・江戸川乱歩が昭和4~5年に「朝日」に連載した、今読んでも、今読むからこそ恐ろしい、傑作ミステリーです。いや、当時読んだ人も度肝を抜かれたんじゃないかな。

大正、昭和初期という時代ですが、物語内には、場末のホテルに恋人同士で入ったり、ラストまで貫かれている妖しい同性愛もあったりで、やや驚きました。
その反面、池袋の駅から半里離れると淋しい場所になると書いてあって、時代を感じたりするところもあります。
禁止用語が多々使われているところもそうですが、それでもこの小説がなぜこんなに怖いのか、と考えてみたときに、やはり時代性というのが大きな役割を果たしていると思いますね。陳腐が、陳腐じゃなくなっている。
中途半端に古ければ腐っているのですが、この作品くらいになると、いい具合に発酵してしまって、書かれたときよりも味わいが深まっているのではないでしょうか。
今では、書けない内容ですよ。とてつもない、驚愕の内容です。本当に驚きました。
近代ミステリーの醍醐味とは、そういうところにあるのかもしれません。
ふたりが手にした百万円。今の価値に換算すると、6億円くらいになるようです。

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