「ばらばら死体の夜」桜庭一樹

なんだかなあ……本当にバラバラなのはこの小説ではないのか?と思ってしまいました。
桜庭一樹は、ソラマメみたいな顔をしていらっしゃいますが、笑顔のかわいらしい女性で、いつみても好感が持てる美人作家なのですが、最近少し仕事をし過ぎているんじゃないでしょうか。
もう少し腰を落ち着けて、自分の本当に書きたいものに取り組んでもらいたいものです。

東京、神保町の古本屋。泪亭。
この歪んだ建物の2階に、白井沙漠(しろいさばく)は下宿しています。
夏は暑い、冬は寒い、風呂もない、下には大家の佐藤がいて姿を見られず自由に出入りできない、こんなところに27歳の見てくれのいい女性がラーメン屋で皿を洗いながら、なぜ住んでいるのか。
それは、10年前同じ部屋に家賃1万円で住んでいた吉野解(よしのさとる)にも最後まで謎でした。
解は、40歳手前、英米文学の翻訳家で、大学の講師もしており、資産家である妻と結婚しました。
しかし、妻の家系のもつ華やかさは彼にとっていつまでも異世界であり、義父にも受け入れてもらえることはありませんでした。彼には背中にけぶる呪いのような貧しさが付き纏っていたのです。
沙漠と解の共通点。それは、消費者金融に少なからぬ債務を抱えていること。
2009年が背景の物語なので、1年後に施行された改正貸金業法を巡る社会の動きが詳しく書かれています。
翻訳の仕事が当たりまとまった金の入る解と、どうしても300万欲しい沙漠。
突風のような逢瀬を重ねたふたりは、それぞれの思惑を抱えて解の故郷である鉞(まさかり)半島、青森の下北半島に最後の旅に出ます。
安田美奈代(33歳)を殺したのはどっちなのでしょうか。
彼女をばらばら、にしたのは、誰、なのかな?

マルチテーラー好きですね、この人は。プロローグは2009年10月、そこから2009年12月(惨殺場面)を挟み、沙漠、解、里子(解の大学の同級生)、佐藤(泪亭の主人)と語り手を変えながら、ひとつの真実、未来に向って物語が進行します。
ただ、深いようで浅いんだなぁ。見てはいけない人間のダウンタウンまでは良かったんですけどねえ。
人間の奥深さを表現した文章が巧いだけに、逆に読み手のほうが求めすぎたのかもしれないですね。この作品に裏はありません。まとまっていますが“芯”もありません。ただの犯罪サスペンスです。
どうして、解は沙漠に惹かれたのでしょうか。
それは、沙漠の前の顔が自分のママに似ていたからで間違いないでしょう。一瞬だけ書かれていましたね。
つまり、表面ではなく自分もわからないままに奥底を覗いていたのでしょう。
そこをもっと時間を使って追求していれば、桜庭一樹の代表作になりえた着想であったと思います。




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