「かわいそうだね?」綿矢りさ

綿矢りさと金原ひとみ、2004年に芥川賞を同時受賞したこの2人が私はどうしても気になります。
たぶん私の青春の時期と重なっているからなのでしょうが、デビュー当時から読んでいてこの2人は本当に天才だと思ったし、その才能に畏れも抱きましたし、私には絶対に不可能な言葉を紡ぎ出す能力に人間として嫉妬しました。
歴代の芥川賞を受賞した作家たちと比べても、2人の能力は頭一つ抜けていると思います。
だから今でも何を書いているのか常に気にしています。どのような人生を送っているかはどうでもいいのです(金原ひとみが結婚したのには驚愕しましたが)、デビューしたときから書くものが変化しているのか、変わったとすればなぜなのか、これからどの方向へ進んでいくのか。
金原ひとみの「マザーズ」(カテゴリー中間小説参照)は、私を感動させるのに十分すぎる作品でした。金原ひとみはぶれていません。大衆に迎合もしていない、自分の書きたいものを書いてしかもそれが彼女にしか紡ぎ出せない世界を創ってしまいました。「マザーズ」は彼女自身の人間としての確かなレベルアップもみせてくれました。
対して綿矢りさはどうかというと、私は、この作家はしばらく迷いがあったと思っています。
そして、どうだろう、大したことない恋愛小説書いてるうちにひょっとしたら消えていくかもね、とまでうっすら思っていました。デビューのときは女神の光臨とまで云われたのに、妙に早熟型だったなと。
しかし、それも本作を読むまでは、でした……
表題作の「かわいそうだね?」はともかく、カップリングの「亜美ちゃん美人」が凄すぎました∩( ・ω・)∩ 
*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!! という感じです。
さすが、綿矢りさ、彼女もまた自分本来の持ち味を十分に発揮したうえにレベルアップしていました。
「亜美ちゃんは美人」は、デビュー以来の路線を継承した、この作家のアップグレード作品です。綿矢りさ、復活です。

「かわいそうだね?」大江健三郎賞受賞作。ごきぶりが出ても地震が起こっても悲鳴をあげてはいけない役割の女、樹理恵は、28歳、池袋の百貨店(たぶん東武)でハイブランドショップのチーフをしています。インポートっぽいです。恋人の隆大とは付き合って数ヶ月。彼は子供のときから仕事をリストラされて日本にやってくるまでアメリカで暮らしていました。アキヨは、隆大のモトカノ。7年付き合って隆大と一緒に日本にやってきてから、ふられました。無職です。そしてこの女、元彼である隆大の安アパートに居候をするのです。
馬鹿な小説だな、と思いながら読んでいましたが、キャラクターが活きてきて(特にアキヨ)目が離せなくなります。隆大はちゃんと私を愛していて私を苦しませるのも辛くて、でも優しい人だから昔の恋人が困っているのを放っておけない、と樹理恵は無理矢理納得して自分を押さえ込もうとします。その一方で、愛してるといわれて抱かれて幸せにひたる半面、私はだまされているんじゃないかと戦々恐々しながら毎日を送りたくないとも思っています。あるとき、もやっとした感じを解消するため、樹理恵は隆大のアパートでアキヨと対面するのです。そこで樹理恵は、隆大からもう愛してないからと放り出され、就職口もないまま東京をさまよい、ついに家賃が払えないところまできたアキヨを、“かわいそう”と思ってしまいます。
困っている人はいても、かわいそうな人はいない、これ名言でしたね。

「亜美ちゃんは美人」これは凄く感動しました。ラストが少しだけ残念でしたが、あそこをもーちょっとなんとかしていれば、私は号泣したかもしれません。それでも、この物語はとてもいい作品で、さすが綿矢りさだと改めて感じ入りました。メディアミックスじゃなくて小説というスタイルだから、これだけいい話になるのだと思います。映画のほうが原作よりいいと云われる作家もどきの多い中、小説家の面目躍如ですよ。
亜美ちゃんとさかきちゃん(坂木蘭)は高校に入学して以来の親友?です。
亜美ちゃんの傍らには常にさかきちゃんがいますが、いつもさかきちゃんは亜美ちゃんの盛り立て役でしかありません。亜美ちゃんが美人すぎるのです。実はさかきちゃんは亜美ちゃんが少し苦手です。しかし、亜美ちゃんは天然キャラなのでそのことに少しも気付いていません。さかきちゃんがはるかに賢いので大学は別々になりましたが、亜美ちゃんはさかきちゃんの大学にいつもやってきて、同じサークルに入りました。新歓コンパで亜美ちゃんのマネージャー扱いされても、さかきちゃんはじっと堪えていました。やがて2人は社会人となり、転機を迎えます。
これって、現実にこれと近い話があったのかもしれませんね。いや、よくある話で、女子のニコイチって必ずといっていいほど大人になるに随って仲が冷え切っているもんですよね。別に女子に限らず人間関係は“腐る”ものですから。
でも、これは腐らないってとこを魅せてくましたね。その手法が良かった。どうして、亜美が崇志のことを好きになったのか、さかきがわかった瞬間に、実は私も同じようにその瞬間わかったのです。もうぼろぼろ涙がこぼれてきました。
崇志はさかきだったんです。すべて理解したさかきのスピーチは素晴らしかった。
ラストはもう少し感動させてほしかったですが、亜美と崇志のこれからを思えば、あれくらいのノリでよかったのかもしれません。

「かわいそうだね?」「亜美ちゃんは美人」両作とも続編を読んでみたく思います。
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この記事へのコメント

- 藍色 - 2013年06月28日 15:25:58

どちらも面白くてテンポが良く、どんどん読めてしまうので、
読み終えるのがもったいなかったです。
これからの作品がますます楽しみになりました。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。

Re - 焼酎太郎 - 2013年06月29日 18:22:58

こんにちわ(・∀・)
「亜美ちゃんは美人」は綿矢りさの最高傑作ですね。

コメントありがとうございました☆

トラックバック

粋な提案 - 2013年06月28日 15:08

「かわいそうだね?」綿矢りさ

私の彼は元彼女と同棲中……週刊誌連載時から話題を呼んだ表題作と、女子同士の複雑な友情を描く「亜美ちゃんは美人」の2篇収録。 同情は美しい、それとも卑しい?美人の親友のこ...

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