「光媒の花」道尾秀介

短編集と思って読んだのですが、6つの物語がうっすらと繋がっている連作小説集でした。
殺人も起こるのですが、厳密に云えばミステリー作品というより、家族小説、ヒューマンドラマなのかもしれません。
ちょっと消化不良、肩すかしでしたね~、意味がわからないところもありましたし。
すべて小説すばるに掲載されたものなんですが、最初と最後の章では2年ほど発表間隔が空いており、刊行にあたって無理に物語を関連づけたという印象もぬぐえません。
タイトルの「光媒の花」とは、「風媒花」(風が花粉を運ぶ花)、「虫媒花」(蜂など虫が花粉を運ぶ花)に対して著者が創った造語なのでしょうが、言葉通りにとれば光が花粉を運ぶ花ということになりますね。
私は、この「光」を時間という意味で捉えたんですが、ちょっと深読みでしたかねえ。あるいは花粉は「幸せ」かなあ。
作中にもこの「光」らしきものが現れる場面があるのですが、どうもいまひとつしっかり理解できませんでした。
6つの章の繋がりも、1冊の本として読ませるかぎり、もう少し工夫してほしかったと思います。
サチ(幸)の話なんて泣きかけるくらい、ぐっときたんですから、ラストにも絡めてほしかったです。

「第1章 隠れ鬼」遠沢印章店の二代目、正文は40半ばにして独身。5年前に痴呆を発症した母と二人で暮らしている。父は30年前に自殺した。正文には忘れようにも忘れられない過去がある。それは、中学生のとき家族でよく行った長野の別荘でのこと。正文はそこで東京出身のウッドクラフトの店をしている30歳の女性と出会う。30年に1度花をつける笹の生茂る森での禁断の秘密。ある日、正文は痴呆の母が色鉛筆で笹の花の絵を描いているのを知って愕然とする。母はどこまで知っていたのか?
「第2章 虫送り」正文が家から見ていた、児童公園で隠れ鬼をして遊んでいた子供は、この章に登場する兄妹の兄のほうである。暮らし向きが思わしくなくて両親がかまってくれない小学生の兄妹は、しょっちゅう川べりの土手で虫を採って遊んでいた。対岸でも同じように虫採りをしているのか懐中電灯の光が揺れており、兄妹はそれを自分らと同じような小学生の淋しい兄妹かもと想像していた。あるとき、川辺で生活しているホームレスに妹が悪戯され、兄妹は橋の上からトラックからこぼれたブロックをホームレスのテントに投げ落とす。
「第3章 冬の蝶」前章の兄妹に罪をなすりつけた、昆虫学者を志望していたこともあるホームレスの男が主人公。男が20年以上前、中学生だったときの話。彼のクラスメイトにどうしようもなく貧乏ですさんだ生活をしていたサチ(幸)という女の子がいた。彼が虫採りをしていたときに偶然顔を合わせた2人は、放課後の河原でいつも会うようになる。サチの生活の謎。本作唯一のたまらないくらい胸がつぶれる物語。彼がクリスマスプレゼントの時計をサチに渡したあと、サチが彼の家にずた袋みたいな贈り物を持ってきた場面は泣けた、マジで。
「第4章 春の蝶」語り手は前章のサチ。彼女が普通に生活しているようで心底ほっとした。ホームレスの小屋が片付けられていることからして第2章の後の話。おそらくサチは30半ばくらい。ホームレスの男とこんなに近い場所で生活していたのに、すれ違っていたのかと思うと残念。物語は、彼女のアパートの隣である牧川さんが外出し、孫で耳が突然聞こえなくなった4歳の由希ちゃんがひとりで寝ているときに泥棒が入った事件からスタートする。
「第5章 風媒花」23歳の亮はトラック運転手。3歳上の姉は小学校の教師をしているが体調を崩して入院する。姉のことを大事に思っている亮は足繁く見舞いに通うが、母の姿を見るたびに身を隠す。母との折り合いが悪い弟の様子を見て胸を痛める姉は一計を案じる。目立たない風媒花と思っていた姉が虫を媒介して作戦を成功させることが物語のオチ。前章の女の子、由希を轢きかけたトラックの運転手は亮だったことで、この章は第4章の3ヵ月後のお話ということになる。
「第6章 遠い光」前章の亮の姉が主人公。彼女は小学校の4年生の担任をしている。トンボの産卵の話を教えてくれた小学生は、第2章で登場した兄妹の兄の方。第3章の昆虫学者のホームレスはその後、警察に自首した。サチは出てこない。母の結婚により苗字が変わる朝代の判子を注文しているのは第1章の遠沢印章店。実の両親を交通事故で亡くし、叔母に育てられた朝代は、叔母が結婚することで混乱してしまう。ラストの大団円の意味がわからない。はっきりいってこの終章にはがっかりした。どうしてサチを出さなかったのだろう。作者の自己満足的もういいやちゃんちゃん、という勝手な幕引きにしか見えない。

謎は残ります。
第2章で兄妹がいつもの川辺と対岸の場所に行ったときに現れた中学生くらいの男は何者だったんですか?
あの登場の仕方は、エキストラじゃないでしょ、伏線ですよね??それがラストまでずっと気になってました。
そして、昆虫学者のホームレスは、なぜホームレスになっていたんですかね??
私はその謎がほどなくして明かされ、彼が贈った時計をまだ付けていたサチとの感動の再会があると信じて疑わず読んでいたので、なーんもなかったのはショックでした。そりゃないわ、道尾さん。
ひょっとしたら白い蝶を追いかけているうちに、人生に迷ってしまったとかいうんじゃないでしょうね。
サチと彼の続きの話が読みたいです、ほんまたのんます(´・ω・`)


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