「ま、いっか。」浅田次郎

20~30代の女性をターゲットにしたファッション誌「MAQUIA」(マキア)に連載された「男の視線」を中心に、単行本未収録のものを加えた気楽に読める長さのエッセイ61篇で構成されています。
時期はだいたい2004年から2008年までのもの。テーマはそのものずばり「男の視線」という女性向けのものから、旅、日本語(言葉)、人生哲学など、考えさせられたり笑わされたり、エッセイの名手である浅田次郎のよさが十分にでてる作品集であると思います。
では、印象に残ったものを、軽く紹介。

「黄昏の恋」人生三回結婚説。二十歳になったら全員が四十歳の異性と結婚し、そのまま二十年間結婚生活を送り、四十歳と六十歳で離婚する。そして間髪をいれず四十歳の男女は二十歳の男女とそれぞれ二回目の結婚をする。六十歳で二度目の離婚をした後は、同じ境遇の六十歳の異性と三回目の結婚をする。これを法律で強制したら?
「デブの語源」「でぶ」の語源はなにか。発達、成長の英単語developmentの略か。あるいは「でっぷりとした」という形容詞が元か、double chin(ダブル・チン=二重あご)のなまり説、「出不精」という言葉が由来ではないか、など4人のデブが語り合う。
「福袋の秘密」かつて著者が経営していたアパレル会社は、デパートが主たる取引先であった。だから著者は福袋に詳しい。福袋を買うにはコツがある。まず、専門店の福袋ではなくデパートのプロパーを買うこと。次に「松」「竹」「梅」のランクがあればまよわず「松」をチョイスする。つまるところ、有名デパートの初売り福袋は出入り業者の涙の賜物なのだから、価格的には間違いなくお得である。
「肌か心か、心か肌か」多くの日本人女性が敵としている紫外線であるが、欧米人の女性は紫外線を愛する。なぜだろう?太陽はひたすら内向する精神を回れ右させてくれる。心が変わるのである。欧米人が求めているのはこれではないか。だがしかし、日本人女性の肌は世界一美しい。
「花実双美」京都の古いお茶屋に「花実双美」なる軸がかかっていた。読み下せば、「花も実も双つ美し」である。われわれの社会は実を求めて花を忘れてしまった。
「私と旅」五十を過ぎてはじめてつかった道後の湯で、日本の温泉が好きでたまらぬアメリカ人に出会う。
「独眼流の子孫たち」仙台はすばらしくおしゃれである。なぜだろう?かつての仙台伊達藩の藩祖、伊達政宗は相当な洒落者であった。江戸の仙台藩士たちが発信するファッションは、江戸っ子の注目の的であり、ジャケットは彼らの着る「伊達羽織」が最もカッコいいとされ、ボトムは「仙台平」の袴に限るともてはやされた。ひいてはおしゃれを「伊達男」と呼ぶようになった。これが流行に最も早く反応する地方都市、仙台の由来である。
「丸文字の起源」今や中国語も韓国語も、印刷物はほとんど横書きになった。縦書きを堅持しているのは日本だけといっていい。日本語はそもそも漢字もひらがなも縦に続くようにできている。実は横書きは書法的にありえず、そこで登場したのが丸文字なのである。
「万歳三唱」61篇中、これが一番面白かったです。自衛隊時代の同期生の退官パーティに出席した著者。お開きの万歳三唱で壇上に上がった三等陸佐が、「これより僭越ながら、明治十二年太政官布告に基づく、正しい万歳三唱を行います」とやった。太政官布告の万歳三唱とはなにか。自宅に帰ってからも著者はその謎に挑む。
「礼とは何か」「礼」とは社会を維持していくための、生活規範の総称である。法律は全能ではなく、「礼」を失した物を罰するための補助装置でなければならない。礼は国の幹なり。
「正体」作家になってからもしばらくブティックを経営していた著者。浅田次郎の本はほぼすべて読んでいる私ですが、初めて知りましたね。平成十五年に閉めたというから、「壬生義士伝」のころはまだ店を持っていたということになります。つごう、婦人服業界には三十年近く身をおいたらしいです。


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