「大山倍達の遺言」小島一志・塚本佳子

生前、大山倍達は「私が死んだら極真は割れるよ」と公言していたそうです。
誰もが知っている極真空手の創始者である大山倍達が逝去して二十年近くの月日が経ちました。
そして、ものの見事に、現在、極真空手は分裂しています。
松井派極真会館、新極真会、極真連合会、極真館……
カリスマであった創始者の死後、何が起きたのか。危急時遺言は法的に認定されませんでした。
しかし、そこに書かれていた極真会館継承者の名前は松井章圭、当時31歳。17歳で全日本デビューし、全日本大会連覇、世界大会制覇の天才で、誰よりも大山から目をかけられていました。
そして、大山の生前は公然の秘密でしたが、大山と松井は在日韓国人という強固な絆がありました。
最高顧問として大山時代からの高弟である郷田勇三、盧山初雄を押え役としてスタートした松井体制は1年をもたず暗礁に乗り上げます。
松井より一世代前の極真トップクラスの選手である三瓶啓二を中心とする古参支部長のクーデターが起きるのです。
支部長協議会は、「極真会館の私物化」「独断専行」「不透明な経理処理」をしているとして、松井を解任しました(解任の権限はない)。出席44支部長中、38名が解任に賛成したとされています。
そして、極真会館は大きく分裂してしまうのです。松井を認めていたはずの大山の遺族の突然の反意もありました。
結局、大山倍達の一年祭(神式。仏式なら一回忌のこと)は松井派、支部長協議会派のそれぞれの組織によって2日にわたって行われるという前代未聞の事態となり、あろうことか1995年の「第12回全日本ウェイト制選手権」と銘打つ“極真会館主催”の大会は日本で三ヶ所にわたって行われるという始末でした。
いったい、なぜこのような醜態を極真会館は晒してしまったのか。
ましてや、大山倍達の墓は4年間建てられず、遺骨は自宅の押入れに仕舞われていたといいます。
本書は、問題となった遺言の経緯から、直後の極真分裂、松井派のK-1などプロ格闘技団体への接近、フランシスコ・フィリォのK-1参戦裏話などを含め、分裂から現在までの極真空手の歴史を知る上で格好の一冊となっています。

根が短気ながら臆病にできてる私は、今でこそ猫といっしょにゴロゴロしながら本を読んで酒を飲んでいますが、ちょっと前まではけっこう真剣に武道格闘技に打ち込んでいました。隠れて違うのをふたつやっていたので、黒帯は2本持っています。もちろん、才能はまったくなかったので素人に毛が生えた程度のレベルでしたけど。
もう筋トレはまったく止めましたが、今でも晴れてたら必ず6キロはジョギングします。逃げ足が一番大切ですから。
だから、極真空手についてもある程度の知識はありますが、はっきり云って、どうして分裂したのかとか、どういう系統の道場があるのかとか知りませんでした。
改めて、私の住んでいるところの極真の道場を調べてみると、あまりにも増えてた(笑)
そして、なるほど松井派と緑派で住み分けされていますね。連合会の道場もあったりするし。ただ月謝は高いなあ。
本書にも書かれていましたが、松井館長は発足時、門下生の月謝を本部で管理するという今では当たり前、当時は画期的な改革が既得権益の権化である支部長の反発を招いたのですね。
そして、一番若く、支部長として末席であった松井章圭が抜擢されたことに、先代からの弟子である古参支部長たちは、縦社会における凝り固まった年功序列の因習的思考によって感情的拒否感を抱いてしまった。
気持ちはわかるなあ。今と当時は違うといっても、武道団体は縦社会そのものですよ。
健全な精神を育み……など高尚なことを云ってもね、なかなかどれだけ強くなっても人間はしょせん煩悩の塊ですよ。
私なんて仲良くするどころか、いつも殺してやりたい奴が1人は常に道場にいましたね。
そりゃ、そもそも武道自体が分裂して発展してきたものでしょうからね。いわんや団体をや、ですよ。
なんで武道なんて習うのでしょうか。昔は、刀や槍という武器を持っていましたからね、体術もありましたが、無手の武術の実用性は低かったでしょう?現代だからこその無手の武道、格闘技ですよね。そこに何を求めるのか、門下生の老若男女それぞれ個人次第でしょうね。スポーツであったり、護身であったり、ダイエットであったりというふうに、昔と違って今は道場やジムの構成員からして向いてる方向が違うんですから、団体自身の性格は変わって当たり前だし、責任者が新しくなれば何かしら変更するのも当然でしょう。
大山倍達がなぜ松井章圭を指名したのか、本当のところはわかりませんが、保守的な年寄りではなく、攻撃的な若手を起用したというのは、私は大山倍達という人をまったく知りませんが、分裂という痛みを伴いながらの新たなる発展を期した英断だったと思います。安定を決して望んだわけではなかったでしょう。
ただ、本書、直接関係ないとはいえ、数年前に起きた松井館長の脱税事件に一行たりとも触れられていないのは、ちょっとおかしいと思いましたよ。





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