「さあ、地獄へ堕ちよう」菅原和也

ミチル22歳。SM嬢。
『ロマンチック・アゴニー』というSMバーで働いて2年になる。
茨城から東京に出てきた彼女は、短大のころ友達に誘われてこのバイトを始め、特に辞める理由もないし他にやりたいこともないのでやっている。
鏡に映ったケバイ化粧。両耳に開いた12個のホール。眠剤。抗不安剤。鎮痛剤。
ステージのショーでは、荒縄で縛られ、バラ鞭で打たれて、お芝居の吐息を漏らす。
わたしは人形だ。頭がからっぽで、中身なんて求められていない。

ある日、薬局でミチルは6年ぶりに幼馴染の男に出会う。彼の名はタミー。これがすべての始まりだった。
宿なしの彼を自分のアパートに泊めてやったミチルは、タミーの携帯に死体の写真を見つける。
タミーが言うには死体は同棲相手で、彼が殺したという。そして、タミーは《地獄へ堕ちよう》というアングラサイトの存在をミチルに教える。そこに載っている人間を殺して証拠に写真をサイトに送ると報酬がもらえるというのだ。
殺人請負サイトではないかとミチルが問い詰めると、タミーは、殺す人間と殺される人間が知り合う出会いの場であり、殺すか殺さないかはユーザーの自由であるという。ミチルには今ひとつ理解できない。

一年前に働いてたリストというSM嬢が帰ってきた『ロマンチック・アゴニー』でトラブルが起きる。
常連の会社社長にキレてしまったミチルは、リストと一緒に店を飛び出して逃げてしまう。
リストのマンションに連れて行かれたミチルは、彼女の全身に彫られたタトゥーやピアス、頭蓋骨にまで開けられたブレインピアスを見せられ、自分も乳首に針を通される。
後日、《地獄へ堕ちよう》のサイトを見たミチルは、死体写真に見覚えのあるタトゥーを発見する。
あわててリストの部屋へ向かうミチル。そこに待っていたものは全身の皮を剥がれた肉塊だった。
この無残な殺人は誰の仕業か?そして消えたタミー、警察の不可解な対応。
ミチルは《地獄へ堕ちよう》の謎を自ら解くことに挑戦する――

とまあ、こんな感じのアングラな、よく理解できない世界のミステリーでしたが、これほど痛い!!小説を読んだことありません。私は注射も苦手なので(好きな人はいないか)、ミチルが乳首に針をぶすりと通されたところで思わず目を背けましたよ。こりゃ最後まで読めるのかなと思いましたね。作者の名前は忘れましたが(有名な文学者だったと思う)、頭が痒くてたまらんわという小説あったじゃないですか、アレの痛い版ですよ。気色悪くて最後までは無理な方もいらっしゃるでしょうね。
3Dアートインプラントといって皮膚を剥いで下に金属を埋め込んだり、スカーフェイスを作るスキンリムーバル、自らの性器を改造するサブインシジョンなど、きっとリアルにあるのでしょうね、こえええ。
いったい作者はどういう人なのか。いちおう、本年度(2012)の横溝正史ミステリ大賞受賞作ですよ。
略歴には1988年生まれ、高校中退19歳で上京、バーテンをアル中になりかけたので辞め、キャバクラのボーイをしているという、菅原和也。だからまあ、本人がどMかどうかはともかくアンダーグラウンドの世界の素養はありますわな。客でも業界の人間でも女の子でも、知り合いやすい環境にはありますよ。経歴が本当ならね。
それと物語のテーマや背景はともかく、文章は普通に巧いですよ。はじめての小説とは思えないですね。
だからネタを作るために夜の世界にいるのかもしれません(笑)
ただ、ミチルという人格の輪郭が曖昧で、この女の子が普通なのかモンスターなのかよくわかりません。探偵の真似事をするような人間でもないし、知り合いを拷問のすえ殺してしまうような人間にも見えないのです。主人公のキャラ作りに失敗しましたね。どうもその点がしっくりこないので、物語全体がぼやけてしまいました。
でもこういうアンダーグラウンドミステリは、なかなか滅多に読めるものじゃありませんし、筆力もあるので、一発屋で終わるにはもったいない書き手だとも思います。
本作の続きはもう、お腹いっぱいですけどね。






関連記事
スポンサーサイト

この記事へのコメント

トラックバック

URL :

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
カテゴリ
ミステリー (92)
ミステリー短編集 (17)
歴史ロマン・ミステリー (17)
冒険ロマン・ミステリー (14)
サイコホラー・ミステリー (15)
学園ホラー・ミステリー (14)
民俗ホラー・ミステリー (10)
政経・金融ミステリー (18)
ファンタジックミステリー (22)
近代・昭和ミステリー (14)
オカルティックミステリー (7)
青春・恋愛ミステリー (21)
医療小説・ミステリー (22)
伝奇小説・ミステリー (14)
時代人情小説・ミステリー (18)
時代冒険小説・ミステリー (19)
社会小説・ミステリー (15)
スポーツ小説・ミステリー (10)
アーティスティックミステリー (12)
海外ミステリー (28)
海外冒険小説・スリラー (17)
SF・FT・ホラー (26)
SF・FT・ホラー短編集 (13)
海外SF・FT・ホラー (17)
クライシス・パニックサスペンス (12)
警察・諜報サスペンス (29)
悪漢・犯罪サスペンス (30)
中間小説 (24)
青春・恋愛小説 (32)
家族小説・ヒューマンドラマ (31)
背徳小説・情痴文学 (14)
戦記小説・戦争文学 (19)
政経・金融小説 (14)
歴史・伝記小説 (22)
芥川賞受賞作 (19)
直木賞受賞作 (19)
文学文芸・私小説 (24)
海外小説・文学 (12)
文学アンソロジー (54)
歴史・伝記 (30)
戦史・戦記 (31)
海軍戦史・戦記 (150)
物理・宇宙 (26)
生命・生物 (37)
アンダーグラウンド (46)
事件・事故 (38)
世界情勢・国際関係 (25)
スポーツ・武術 (24)
探検・旅行記 (22)
随筆・エッセイ (30)
月別アーカイブ
プロフィール

焼酎太郎

Author:焼酎太郎
FC2ブログへようこそ!

検索フォーム
最新トラックバック
リンク
QRコード
QR
RSSリンクの表示