「チーム」堂場瞬一

堂場瞬一さん、ついに某読売新聞東京本社を退職されたそうで。
これで作家一本ですね。
相変わらず面白いんだか面白く無いんだか、巧いんだか下手なんだかよくわからない小説を書いていらっしゃいますが、ここらでひとつ腰を据えて長編にでもチャレンジしてもらいたいです。
もちろんジャンルは、大新聞の秘められた内部を暴いたマスコミエンターテインメントでひとつお願いしたいものです。

さて、本作ですが、箱根駅伝をテーマにしたスポーツ小説です。
箱根駅伝を題材にした小説というと、三浦しをんの「風が強く吹いている」、あれは名作でしたね。
ほぼ素人連中の弱小大学陸上部が巻き起こす波瀾万丈のどたばた駅伝小説でしたが、デタラメなのに面白い、そのバカバカしさかげんとリアルさの微妙なさじ加減がスポーツ小説の醍醐味なのではないでしょうか。
本作で取り上げられているのは、関東学連選抜です。
うん、このへんを選んでくるのが、渋いですよね。
私なんて、だからこそ読んだというのもあります。学連選抜ってけっこう中身は謎ですからね。
今年というかまだ今月か、箱根駅伝での学連選抜の順位は11位か12位くらいじゃなかったでしょうか。
彼らが10位以内に入るとシード権がひとつ減るので、惜しかったですけど健闘したといえる順位ですよね。
でも実は学連選抜の過去最高順位は4位なんですよ。びっくりでしょ?
学連選抜というと地味な存在ですが、まさに本作の物語みたいなことが本当に起こりかけていたのです。
予選会から2カ月余りの急編成で“チーム”として臨まなければならない寄せ集めチーム。
他のチームが4年間、いやOBの歴史を考慮すると長きにわたって培ってきたチームの伝統をかけて戦うのに比べ、学連選抜というチームは、何を目指して走るのか。自分のためなのか、走れない母校のチームメイトの代わりなのか。
駅伝というスポーツが陸上という個人競技の集合体なのか、それとも歴とした団体競技なのか、よくわかる小説です。もちろん、それだけじゃなくて5区の山登りは坂もあるが連続するカーブこそ強敵であるとか、走っている選手の心理状態とか、細かいところまで手が届いています。さらに、先の読めないラストでは手に汗握りましたし、まあ、面白かったです。

10月、箱根駅伝の予選会。
城南大学主将である浦大地の願いは無残に散った。何十年も続く連続出場の記録まで途切れてしまった。
思い起こせば去年の箱根でアンカーだった浦の大失速により城南大はシード権を逃したのだ。自分のせいである。
そのとき、呆然と佇む浦の肩を叩いた男がいた。美浜大学監督の吉池幸三である。
「これで終わりじゃない。俺と一緒に箱根へ行こう」
吉池もまた大学陸上界の名伯楽と言われながら、箱根に縁がないまま今年引退を決めていた。
吉池の言った意味は浦はすぐ理解できた。残り物の集まりにも走る権利はある。学連選抜だ。
出場を逃したチームの中から好タイムを出した選手が選ばれて箱根を走る。
美浜大は予選会11位。学連選抜の監督は11位のチームの監督が務めるのが通例だ。
自分のチームは本戦に出場できない。しかし自分は走る。これをチャンスと考えていいのか仲間たちに対する背信行為と悔めばいいのか。当初は戸惑った浦だったが、参加を決め、監督からキャプテンに推薦されると、これも応諾する。しかしわずか2ヶ月で、寄せ集めチームがまとまることが出来るのか。
苦心する浦の前に、ひとりの超大学級の長距離ランナーが立ちはだかる。
その名は山城悟。東体大の絶対的なエースで、箱根3年連続区間記録を持つ、将来の日本陸上界を背負って立つ逸材だ。しかし、性格は唯我独尊。学連選抜をチームと認めず、己自身の記録のためにのみ走るという。
吉池監督ですら扱いに苦労する、地雷だ。
駅伝はチームスポーツなのか、個人競技なのか。
はたして優勝を目指す学連選抜チームは、ひとつにまとまって襷をつないでいくことができるのか……

襷はタスキです。
カタカナでよかったんじゃないですか。襷と書かれているたびに思わず「ふんどし」と読んでしまいました。
「ふんどし」は褌で全然違うんですけど、なぜなんだろ、私の脳がおかしいんですかね。

大手町で山城が言ったセリフ、これこそが駅伝がチームスポーツであるという証になりましたね。
「負けたのは俺たちだ、俺たち全員の責任だ」
そうなんですよ。これが云えるってことが“チーム”なんです。
どんな団体競技も負けにつながる綻びはひとりのミスから生まれるように見えてしまいます。
そこで俺たち全員の責任だ、と真実を捉えることができるでしょうか。
スポーツの真髄はそこにあると思いますね。





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