「アイス・ハント」ジェームズ・ロリンズ

 北極海。氷島。ZCI(接近困難ゾーン)。
 アメリカの調査潜水艦が氷中探査システム(ディープソナーアイ)によって発見した倒立氷山の中味。
 それは、第二次世界大戦時のロシアの氷下基地だった。
 グレンデル・アイスステーションと名付けられた謎の施設には、廃棄された大昔のロシア潜水艦、そして死体の山が残されていた。60年前にこの場所で何が起こったのか?アメリカのオメガ・ドリフトステーション(漂流基地)の科学者、海軍が秘密裏に基地内の捜索を行った結果、まさしくこの場所は秘密を隠した氷の廃墟だった!
 敵には渡せぬ秘宝とともに永遠に葬るべき秘密が眠っていたのである。
 元グリーン・ベレーのアラスカ魚類野生動物庁監視員マット・パイクは、3年前に離婚したアラスカ州の保安官ジェニファー・クラーク、不時着機から救出された新聞記者クレイグ、そして忠実な部下であり仲間である狼犬ベインらとともに、吸い寄せられるように北極海へ決死の冒険行へと旅立つ。そして同じ頃、ロシアからも海軍提督ペトコフの座乗する原潜ドラコンが北極海に向けて不気味に進撃を開始した・・・
 凍結した異形の生物。殺到する隠密部隊デルタ・フォース。すべての通信を阻む北極圏の磁気嵐。
 そしてZクラスの核焼夷弾。いま、地球存亡をかけた戦いが秘密裏に遂行される!

 いやあ、B級。楽しい(・∀・)
 なんか、映画を小説で読んでいるみたいでしたね。アメリカ原潜、ロシア原潜、アメリカの基地、グレンデル・ステーションと頻繁な場面転換は極めて映画的な手法でした。
 最初は冒険小説だと思い、途中からSFホラーかなと思い、結果はやはり冒険小説だったと思います。
 なんの影響か知りませんが、私は子供の頃から半年に一度くらい、海を泳いでいるところを恐竜に喰われるという悪夢を決まって見るので、サメとかワニとか苦手なんですが、これは小説なのでいまいちグレンデルの姿格好がハッキリしない。体重千ポンドとかいわれてもピンときません。
 で、ググってみた。結果、
 キモッ!( ´Д`)
 気色悪い奴でしたわ。→アンブロケトゥス・ナタンス(歩くクジラ)
 こいつは化石が見つかっていて本当に実在した生物です。こんなのがいたんだから、本当に生命は不思議ですねえ。
 この他にも、本作はお気楽なB級を背景としながらも、巧みに現実が散りばめられています。
 北極の極地氷床の崩壊が地球環境に与える壊滅的なダメージもそうです。北極海の氷が溶けても、グラスの中の氷が溶けるのと同じで水面(海面)は上昇しないのですが、地球の気候に深刻な危機をもたらすのです。結果として5万年ぶりに再び氷河期がやってくると言われています。
 カエルの凍結システムも作者の想像ではありません。凍結してから蘇生する生物は、細胞内に糖が分泌されることにより細胞が凍らないのです。その遺伝子は実はすべての脊椎動物にあるらしいのですが・・・いまのところ人間が凍結すると細胞も破壊されるので生き返ることはありません。
 そして肝心なところでは、冒頭の創作の新聞記事、1937年のエスキモー蒸発事件も、現実に起こった事象がヒントになっています。1930年にカナダで村ごとエスキモーが消えたという事件が本当にありました。いまだに真相は不明です。
 
 肩肘張らずに、気軽に楽しめる上下巻でした。
 ふつう、出てきて5秒で死ぬ脇役とかが最後まで渋い活躍をしたりとかも、なかなか良かったと思います。
 なんや、コワルスキー生きとったんかい! とかね。
 それに振り返ってみれば、ヒーローとヒロインは死なないという安心感の中で読んでいても、どこか不安を感じさせられる工夫がありました。味方と敵の逆転もありましたし、そういう一筋縄ではいかない緊張感が、やはりただのB級ではない一流のエンタメと云えるでしょう。
 ただ、いかにも映画映画、アクションアクションしているので、「深み」を求める方には耐えられないかとも思いました。


 
 
 
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