「Another」綾辻行人

 再読です。4年くらいまえに読んだのかなあ。見事なくらいに内容を覚えていませんでした。
 ですから、情けない話ですが、とっても新鮮な気持ちでワクワクしながら読み進めることができました。
 そして、あらためて本作が学園ホラーの屈指の名作であることを再確認した次第です。
 著作は半分も読んでいませんが、綾辻行人の代表作といってもいいんじゃないのかなあ。面白いですよねえ。
 来月でしたっけ?続編が出ると聞いています。「AnotherエピソードS」、だったかな。
 Sとは何なのでしょうか。それも少し気にしながら読みましたが、思い当たるようなところはなかったですね。
 生徒として一番最初に犠牲となった桜木ゆかりのS、物語のクライマックスの舞台となった合宿所「咲谷記念館」のS。どれも関係ないんだろうなあ。ひょっとしたら、本作の内容には直接的な関連がないのかもしれませんし。
 
 まぁ、それはおいといて、本作『Another』はどうしてこんなにドキドキさせてくれるのでしょうかねえ。
 恩田陸が書きそうなテーマでもあるのですよ。学園が舞台で、あるクラスが呪われていて、次々と不思議なことが起こり、生徒が死んでいくという。でも恩田陸が書いていればどこかでストーリーが破たんしたに違いないと思うんです。ラストであんな思い切ったことも出来ないでしょうし。綾辻行人だから、プロットもしっかりしており、伏線の張り方もさりげなく絶妙で、クラスに紛れ込んだ“死者”はいったい誰なのか?という鳥肌が立つような謎を読者に追いかけさせてくれたのだと思います。ひとりだけ死者がクラスに紛れ込んでいるんですが、関係者の記憶や知識、実存する書類などが事実と歪曲されて、誰も、肝心の死者である本人さえわからないのです。実は、私、うっすらとですが誰が死者であるのかを覚えていたんですが、それでも面白かったです。逆に自分の記憶のほうを怪しんだくらいです。
 もちろん、クラスに死人がひとり紛れ込んでいる、そのことによってどうして災厄が次々起こるのか、また25年前から夜見北の3年3組にだけ祟っているこの呪いだが毎年起こるわけではない、それはなぜか、という疑問に対する答えはありません。それはそれで別にいいのです。エピソードSで明らかになるかもしれないし、その次の続編で、もしくは永久にほったらかしかもしれませんが、それは本作を読んで面白いと感じた読者が突き詰める話題ではありません。なぜなら、本作が面白いのは、学園ホラーとしての王道パターンといえる“制約”が存在しているからです。
 いわゆる学園の七不思議もそうですね。順繰りに卒業していくから流動的でもありますが、基本的に学園というのは閉鎖的なんです。外界とは一線を画した世界なのです。ですから、今回の謎にしても、呪われている3年3組の面々はそれを自分たちの手で防ごうとします。ここで警察が出張ってきたら話はぶち壊しですから。
 具体的には、呪いが発生したのは25年前ですが、対処法が見つかった10年前から夜見北中の3年3組は申し送り事項として後輩たちに伝えていることがあるのです。それは、誰にもわからずに死者が4月から紛れ込むのだから員数合わせとして誰かひとりを徹底的に無視していないものとしてしまう、というものでした。
 これで実際に呪いのある年の4回中2回は阻止に成功しているのです。対策係やクラス委員、担任の先生を中心とした3年3組の生徒たちは真面目に取り組むのですが、ほころびが出て破たん、苦闘の闘いが始まってしまうのです。一見、バカらしいと思える仮定ですが、そういう学園ストーリーならではの“縛り”があるからこそ、面白いのですよ。
 1年の途中で災厄を止める方法を見つけた15年前の生徒が、教室の清掃道具を入れるロッカーの天井に秘密を吹き込んだカセットテープを隠したなんていうエピソードも、学園ならではの仕掛けで最高でした。

 物語の触り。
 山間の地方都市・夜見山市にある夜見山北中学3年3組は呪われていると云われる。
 ことの起こりは、26年前の1972年だった。学業優秀でスポーツ万能しかも容姿端麗な人気者の生徒ミサキ(夜見山岬)が、3年3組に上がって15歳の誕生日を迎えて間もない1学期に航空機事故で死んでしまったのである(事実は原因不明の火事。隕石説アリ)。ショックを受けたクラスメイトたちは、「ミサキは生きている」というフリを卒業までし続けた(このときの担任・千曳辰治も協力)。その結果、卒業式のあとで撮ったクラスの記念写真にミサキが映り込んでしまったのである。呪いと云われる現象は次の年から起こった。
 クラスに誰なのかわからない一人の人間が増えてしまうのだ。そうしたら毎月、クラスの生徒や家族が死に始めた。1973年には3年3組の生徒や二親等以内の家族が16人も死んでしまったのである。
 毎年あるわけではない。しかし、いったん始まれば毎月クラスに災厄が振りかかるのだった。
 15年前の1983年には夏休みにクラスで合宿を張り、夜見山の神社にお参りをしたが惨事は止まらないどころか帰途に悲惨な事故が起こった。そして10年前、誰かが見つけたという秘策。それはクラスの一人をいないもにしてしまうということだった。人数の帳尻を合わすことによって紛れ込んだ一人=死者が招き寄せるその年の災厄を防げるのだ。この“おまじない”が代々の3年3組に言い伝えられてきた。
 いないもの、にされた生徒には絶対にいるものとして接してはいけない。イジメとは違う儀式的な完全無視である。しかし、この年、1998年はイレギュラーだった。榊原恒一という生徒が東京から転校してきたのである。しかも、彼は気胸という肺の病気を抱えており学校に出てくるのがゴールデンウィーク明けにずれ込んだ。
 このため、クラスで決められた秘密の伝達事項を説明するタイミングが失なわれてしまったのである。
 いないものにされたのは見崎鳴という義眼で眼帯をした女子だった。しかし、恒一は偶然に病院で鳴を見かけていたために、初めて登校するやいなや、クラス委員や担任、対策係が事情を説明するより早く、いないはずの鳴に話しかけてしまったのである・・・
「気をつけたほうがいいよ、もう始まっているかもしれない」
 見崎鳴の言うことは恒一にとって謎だった。しかし、5月末の中間試験の最中、家族の訃報を受けた女子のクラス委員長桜木ゆかりが慌てて階段を駆け下りる途中に足を滑らせ亡くなってしまう・・・
 おまじないの効果は解け、3年3組の恐怖の1年が始まったのだった。

 榊原恒一 東京の有名私立中学の生徒、1年間の期限付きで母方の祖父母がいる夜見山に転校。母は15年前死亡。
 見崎鳴  人形師麗果の娘(実は養女)。左目は義眼で、死者の色を見抜くことができる。藤岡未咲とは実は双子。
 三神怜子 恒一の亡くなった母の11歳下の妹。夜見北の美術教師で3年3組の副担任。1985年の3年3組。
 千曳辰治 第2図書室の司書。1972年の3年3組担任。その後の災厄の観察者。
 風見智彦 クラス委員長。 勅使河原 茶髪でお調子者。 望月優矢 美術部。
 水野沙苗 恒一が入院していた病院の新人看護師。3年3組の水野猛の姉。
 松永克己 15年前合宿に参加。死者を死に還す方法をカセットテープに収める。
 
 
 
 
関連記事
スポンサーサイト

この記事へのコメント

トラックバック

URL :

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
カテゴリ
ミステリー (92)
ミステリー短編集 (17)
歴史ロマン・ミステリー (17)
冒険ロマン・ミステリー (14)
サイコホラー・ミステリー (15)
学園ホラー・ミステリー (14)
民俗ホラー・ミステリー (10)
政経・金融ミステリー (18)
ファンタジックミステリー (22)
近代・昭和ミステリー (14)
オカルティックミステリー (7)
青春・恋愛ミステリー (21)
医療小説・ミステリー (22)
伝奇小説・ミステリー (14)
時代人情小説・ミステリー (18)
時代冒険小説・ミステリー (19)
社会小説・ミステリー (15)
スポーツ小説・ミステリー (10)
アーティスティックミステリー (12)
海外ミステリー (28)
海外冒険小説・スリラー (17)
SF・FT・ホラー (26)
SF・FT・ホラー短編集 (13)
海外SF・FT・ホラー (17)
クライシス・パニックサスペンス (12)
警察・諜報サスペンス (29)
悪漢・犯罪サスペンス (30)
中間小説 (24)
青春・恋愛小説 (32)
家族小説・ヒューマンドラマ (31)
背徳小説・情痴文学 (14)
戦記小説・戦争文学 (19)
政経・金融小説 (14)
歴史・伝記小説 (22)
芥川賞受賞作 (19)
直木賞受賞作 (19)
文学文芸・私小説 (24)
海外小説・文学 (12)
文学アンソロジー (54)
歴史・伝記 (30)
戦史・戦記 (31)
海軍戦史・戦記 (150)
物理・宇宙 (26)
生命・生物 (37)
アンダーグラウンド (46)
事件・事故 (38)
世界情勢・国際関係 (25)
スポーツ・武術 (24)
探検・旅行記 (22)
随筆・エッセイ (30)
月別アーカイブ
プロフィール

焼酎太郎

Author:焼酎太郎
FC2ブログへようこそ!

検索フォーム
最新トラックバック
リンク
QRコード
QR
RSSリンクの表示