「軍神の血脈」高田崇史

 トーンはラノベっぽいのですが、扱われるテーマは実際の歴史であり、読後は重厚な余韻を残す作品です。
 高田崇史(たかだたかふみ)初めて読みました。メフィストを受賞しているのですね。
 他にも歴史ミステリーを扱った作品を数多く手がけているようです。

 あらすじ。
 元特攻隊員で84歳の早乙女修吉は歴史研究家。
 あるとき、世阿弥作とも云われる能を観ていた彼は、前から少し気になっていたことが天啓のようにひらめきました。
 それは南北朝から江戸、明治いや昭和に至るまでの歴史がドミノ倒しように変貌する驚愕の推理でした。
 しかし彼は、孫娘の早乙女瑠璃に太平記を読ませ、自分が解いた歴史の真相を説明する前に、何者かに襲われてしまいます。正体のわからない毒物を筋肉注射され、意識不明の重態に陥ってしまったのです。
 瑠璃は、修吉が襲われた原因は、日本の歴史の闇の真相に彼が気付いてしまったからだと考えました。
 この世には余人が足を踏み入れてはならない領域がある。その領域の番人が祖父を襲ったのだと。
 そして、その答えは太平記の中にある。修吉が瑠璃に読めと言われたのは、楠木正成に関する部分でした。
 高校の同級生で、フリーの歴史作家である山本京一郎に偶然出会った瑠璃は、彼の協力を得て、祖父の体力が持つ後数時間で犯人に関わる謎を解いて、あわよくば犯人を捕まえて、毒の成分を聞き出して解毒剤を見つけ出す冒険に旅立つのです。
 670年以上も前の話が現代に繋がっていく謎。
 敵兵を薙ぎ、国民を和ぎ、宸襟を安んじ奉る、終戦時の純皇国史観的特攻団体『南木の会』とは何か?
 死後の歴史で名誉が急回復されていった南朝の大忠臣・楠木正成にまつわる驚愕の歴史ミステリー!

 河内の大悪党とも云われる楠木正成。
 後醍醐天皇に絶対の忠誠を誓った彼は、わずか5百~1千の兵で何十万という幕府軍を相手に互角の闘いを繰り広げ鬼神と呼ばれました。そして建武3年(1336)5月25日、衆寡敵せず自害し、その首は伊予の武将大森彦七が挙げたと云われています。
 短い間に共に戦い、そして敵と味方に分かれてしまった足利尊氏にとって正成率いる楠木党は、足に絡みついてくる蔓草であり、目の前の障碍でありましたが、正成や正季が死んだことによって雲散霧消したのです。
 南北朝は軍神を失った後醍醐天皇の南朝が敗れ、以来日本の皇統は北朝をもって正統となりました。
 しかし、敗れたとはいえ天皇に忠誠を尽くした楠木正成は、江戸時代に水戸光圀によって激賞され、明治に入って湊川神社が国によって建立されると、昭和の太平洋戦争では皇国史観に利用されたのです。沖縄特攻である菊水作戦は楠木正成の家紋である菊水から命名されたものですし、特攻隊の鉢巻に書かれた七生報国は、何度も死地から蘇った正成の座右の銘とでも云うべき言葉でした。

 ところが、太平記にある楠木正成に関する真相が事実でなかったとしたら、どうでしょうか。
 なぜあれほど戦が巧く兵の損害を嫌っていた正成が、平地の湊川で必敗間違いない戦い方をしてしまったのか。
 正成の首をとった大森彦七は、太平記に記されているように、なぜあれほどの正成の祟りを受けたのか。
 正成が祟るのなら無謀な戦場に自分を追いやった貴族たちこそ対象であり、彦七は恨むべき相手ではありません。
 また、彦七の伊予国に、筋の違う新田義貞を祀る神社や楠木の菊水寺があるのはなぜか。
 正成の死地である湊川に明治になって急に正成を祀る湊川神社ができたのはなぜか。
 南北朝以来北朝が正統であるのに、皇居外苑になぜ南朝の忠臣である楠木正成の銅像が建てられたのか。
 その銅像を建立したのは、愛媛(伊予)の銅山開坑記念に贈呈されたものでした・・・
 
 ま、読みながら検索したりして少し調べてみましたが、謎に関してはなんとも言い様がありません。
 太平記なんて目を通したことすらありませんしね。南北朝なんて基本的なことすら知りませんでしたから。
 ただ、楠木正成に関しては伝記を読んだこともありますし、戦の天才であったということはよく知っています。
 真相はともかく、義経もそうですし、英雄には伝説が付き物ですね・・・
 しかし後醍醐天皇ってすごいね、バイタリティあるある。

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