「チェインギャングは忘れない」横関大

 チェインギャング(CHAIN GANG)とは、鎖で繋がれた囚人という意味ですが、絆で結ばれた集団という裏の意味もあるようです。作者が言うには、ね。私の持っている英和辞典では、鎖で繋がれた屋外護送中の囚人と載っていました。
 ということは、本作では両方の意味で通るということになりますね。
 
 クリスマス前。
 8人の囚人を乗せて東京拘置所を出発し、茨城刑務所に向かっていた護送車が襲撃されました。
 襲撃グループの目的は明らかでなく、彼らは護衛の警官を封じると、囚人たち自身の意思に行動の自由を任せました。その結果、3人がそのまま護送車に残り、5人の囚人が脱走しました。
 逃げたなかに、先々月恐喝および傷害罪で池袋署に検挙された大貫修二がいました。
 大貫は34歳、どこの組織にも属していない西池袋のチンピラですが、不思議に人望があり、彼を慕う水商売の女性や取巻きの連中もいました。しかしわずか1年6ヶ月の懲役で脱走という大罪を犯すのは不自然です。
 池袋署刑事課の神崎隆一もそう思っていました。彼は先々月検挙された大貫修二と面識がありました。
 格別事件もなく、2年連続でクリスマス当日に女性を殺害し、その模様をネット配信しようとしたサンタクロースと呼ばれる殺人鬼の捜査も何ら進展がなく、警視庁の要請で護送車脱走犯を追うことになった神崎と相棒の黒木は、池袋を根城とする大貫の行方をうかがい、ひそかに警視総監賞を狙います。
 同じ頃、34歳の女性長距離トラックドライバーである水沢早苗は、SAで記憶喪失になったという男を拾いました。
 男は、バスのようなものに乗っていたときに事故に遭い、頭を強く打ったというのです。
 病院行きを拒否した男に早苗は捨てるつもりで1万円を渡し、無理やりに住所を書かされましたが返ってくるとは思いませんでした。ところが、男は次の日に1万円を持って現れたのです。
 早苗は小学校4年の航平という息子がいますが、夫は航平が生まれてすぐに亡くなりました。
 冬休みの間、早苗は不規則な勤務状態であるために、子供を預かるボランティア団体に航平を任せていましたが、やってきた男は話すうちに航平と打ち解け、記憶が戻るまで日中は航平の面倒を見ると言い出しました。
 そして、サウナで自分のパンツを見たところ、そこには「大貫修二」と書かれていたと告げたのです。

 さてさて。
 文章が平易でミステリー要素も多いのでサクサク読み進めることができましたが、めちゃくちゃ面白いかと言われれば微妙ですねえ(^_^;)あまり、あとに残るものがありません。余韻が希薄です。
 なぜでしょうか。十数年前の高校時代のはかない初恋の思い出から、記憶喪失というイレギュラーなツールを効果的に駆使し、脱走事件の背後に連続殺人鬼というもうひとつ大きな背景を作りながらも、その完璧なプロットに比べてあまりにも内容が薄く感じます。ボリュームのせいなのか慌てて書いたのか知りませんが、キャラクターにも人間関係にも深みがありませんし、それに物語の流れがうまく出来すぎていて妙です。
 あと百ページほど原稿を余分にもらっておけば違ったかもしれませんねえ。
 修二と黒木の関係があるのなら、脱走なんて危険なバクチ打たずともはじめから黒木にすべて任せてしまう手もあったんじゃないですか?
 それにチンピラの取巻き連中にしては、あまりにも仕事が出来過ぎるでしょうよ。喧嘩もやたら強いし。
 ただ、大貫修二のオチはわかりませんでした。
 どうして早苗は修二に気づかないのか、それがこの物語を読み進める上でのカギであり推進力だったのですが、私は修二は整形しているのではないかと思っていました。ほんとにそんなベタな展開なら本作は二束三文でしたから、素人の予想が外れて本当によかったと思っています。
 ま、次に期待ですか。


 
 
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