「主審告白」家本政明

2010年5月24日、サッカーの聖地、イングランドのウェンブリーで行われたイングランド代表対メキシコ代表の国際親善試合でその男はピッチに立ちました。日本を代表するレフェリーとして。
私はワールドカップ前にこんなことがあったなんて知りませんでしたが。
あの家本が主審に招待された、それも当時Jリーグにイングランドから招かれていたレフェリーの強い推薦を受けていた、なんてこと夢にも思いませんでした。メディアは報じたのかな?
ともかく、本書はその出来事から始まります。
正直、いやなスタートだなぁと思いましたね。

家本政明というスペシャルレフェリーに対する私個人の感想は差し控えますが、芳しいものではありません。このひとは、2006年9月、Jリーグの判定で一貫性を欠く、と判断され研修措置を受け香港リーグに飛ばされていた時期もあります。
帰国して復帰戦、たしか新春の高校選手権の決勝で現れたときは、驚愕して呆然とした覚えがあります。
そして記憶に新しい2008年のゼロックススーパーカップ広島対鹿島戦においては、試合をコントロールできなくなり、退場者3人、警告11枚、PK戦蹴りなおし2回、サポーター乱入など失態を演じ、日本サッカー協会は無期限に家本主審にJリーグの試合を割り当てないと発表しました。
確か、川渕元チェアマンも激怒していましたね。私もテレビ中継を観ていて唖然としました。
逆にこんなことがあったから、本書があるんでしょうね。
実際、非難中傷罵倒のメールや電話、手紙が殺到したらしいです。家族にも尋常ではない被害が及び、著者も審判引退を真剣に考えたようです。
しかし、人生の師匠であったり理解者であったり家族に支えられて、彼はJリーグのレフェリーとして復活するのです。
本書はゼロックス戦の苦悩からウェンブリーでピッチに立つまでの過程を、家本政明にインタビューする形でスポーツライターの岡田康宏がまとめたものです。
そこには家本主審の反省の言葉もあるし、審判として、人間として成長できた軌跡、審判員の目からみた日本サッカーの課題、はては人間の正しい走り方歩き方まで、なかなか面白いネタが詰まっています。
主審の目からみた世界というのは、我々からすると別次元の視点なわけで、そこが面白かったですね。
一方で現役の審判員がこうした暴露まではいかなくとも赤裸々な告白をするというのはどうなのか、ということも考えながら読みました。
ある新聞に「レフェリー通信」という記事で松崎審判委員長が連載していたのも大きかったかもしれません。
私も楽しみに読んでいましたが、「あれは誤審である」とか内容も明快でフェアなもので、Jリーグの試合を生観戦すると審判に対して憎悪の感情がわき起こることの多かった私も、最近は審判もまた人間であるということが理解できつつあります。だからレフェリングに対する野次はやはり逆効果なんでしょうね。

かくいう私も家本主審のレフェリングをしばらく見ておりません。
きっと根は真面目で正義感が強いタイプなので基本的にはレフェリーに向いていると思います。
ただ、融通が利かなかったのですね。精神的に弱かったですね。
本書で書かれているとおりなら、著者はサッカーを楽しんで穏やかにレフェリングできているのでしょうか。
本書の感想はピッチの彼がコントロールするゲームを一度この目で観てからにします。

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