「襲名犯」竹吉優輔

 第59回(2013年度)江戸川乱歩賞受賞作です。
 80ページまでは面白かった(・∀・)♪
 今更遅れて読んだくせに、偉そうなことは云えないんですけどね。
 雰囲気はあったと思います。キャラクターも良かったし、会話も普通でした。
 でも、どこかがおかしい。読みづらい、というか。結局、全体的な説得力に欠けるというか。
 プロとアマチュアの違いというのは、言葉で言い表せないような小さな部分に出てくるんだと思います。
 ま、それは後述するとしてとりあえず、あらすじを。

 1999年、茨城県栄馬市及び県境を挟んだ千葉県吾妻市において市民を恐怖のどん底に追い込んだ凄惨な事件、児童を含む7人の殺害及び遺体損壊の罪で極刑が確定していた死刑囚に、刑が執行された。
 最終判決が出てから7年、逮捕されてから14年が経っていた。
 死刑囚の名は新田秀哉、38歳。またの名を、ルイス・キャロルの小説に出てくる怪物にちなんで“ブージャム”と呼ばれた。
 快楽猟奇殺人者、サイコパス、加虐性が高じて7人もの命を奪った鬼畜と蔑まれながら、ミケランジェロのダビデ像のような美形の青年だったブージャムこと新田秀哉は、熱烈に彼を支持する女性と獄中で3度の結婚もし、アンダーグラウンドでは人殺しという垣根を越えたカリスマとして畏敬の念を集め、多くの人々から恐怖だけでなく興味を寄せられていた。
 それは「ブージャミング」と呼ばれる社会現象にもなったのである。
 そして――死刑執行から約ひと月が経ったころ。
 栄馬の悪夢再び・・・市内で女性の惨殺死体が発見された。遺体は鼻だけを鈍器のようなもので潰されており、現場には被害者の血液で描いたとおもわれる落書きが残されていた。
 Im BOOOOOOOJUM!!
 それは新田秀哉の熱烈な信奉者による犯行と思われた。
  恐るべき殺人鬼ブージャムの再来なのである。ブージャムの名を“襲名”した犯人はかつての師匠のように、栄馬市で脈絡もなく殺人を重ねながら遺体を損壊していく。
 一方、栄馬市立図書館で嘱託司書をしている南條仁は悪夢に見舞われた。
 彼と双子の兄だった南條信は、ブージャム事件の7人目、つまり最後の被害者であり、その件が新田秀哉の逮捕に繋がったのだが、それゆえ第2のブージャムは仁の兄を憎み、その代わりに仁を標的にしたのである。
 やがて、栄馬市立図書館の返却用ポストに人間の血液と切り取られた小指が届けられる・・・

 乱歩賞作品読んで面白いのは、巻末に審査委員の選評が載せられていること。
 今は確かね・・・東野圭吾、桐野夏生、京極夏彦、今野敏、石田衣良の5人。そうそうたるメンバーですね。
 だいたい、東野圭吾が一番辛口で、桐野夏生が一番優しい。
 最終選考作品は5作あって、当然ながら委員の好みで採点は分かれる部分があります。
 これはいつものことなんですが、今回は本作を強烈に押す人はいなかったそうです。
 つまり、消極的理由から選ばれたような感じですね。可もなく不可もなくで最後に残っちゃったという。
 なるほど本作には大きな欠点はありません。
 何人かの委員が指摘しているように、警察組織の理解が足りない部分はすぐ目につきますがね。
 地方警察の捜査課の刑事にキャリアはいません。新宿鮫じゃないんだから(笑)
 それに、所轄署に交通機動隊はいません。彼らの本部は別個にありますね。
 それ以外では、東野圭吾がいくら美形の殺人鬼でも人気を集めすぎ、それにブージャムという呼び名の意味もわからん、と書いているのが目につきましたが、確かにそのとおりで、なんかこう、常識とそぐわないところがありますね。
 しかし、惜しいというか、雰囲気はあります。
 出来上がった蕎麦は普通の味だったが、実は最高級のそば粉を使っていたと思われるフシがある、みたいな。
 
 もう一作、読んでみてかな。この作者の評価は。
 60%くらいの確率で、コンスタントに作品を出すプロになれる能力があると見ていますが、どうでしょうかね。
 警察に関する書き方は幼稚でしたが、図書館に関する情報はびっくりするくらい精緻でした。
 図書館はレファレンス(調べ物の手伝い)なんてしてんだ。へぇ・・・


 
 
 
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