「殺人犯はそこにいる」清水潔

 本書の内容が事実ならば、17年の間に5人の幼女が姿を消したというのに、この国の司法は無実の男性を17年半も獄中に投じ、真犯人を野放しにしたあげく、己等の組織を守るために真実にフタをしているということになります。
 殺人犯はそこにいる。罪を問われず、贖うでもなく、平然と、平和に暮らしている。
 あなたもこの魔物と、過去のどこかですれ違い、いつかの未来に出会うかもしれません。

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 まず、著者が名付けるところの「北関東連続幼女誘拐殺人事件」の概要から。
 栃木県と群馬県の県境を挟んだ半径10キロ圏内の一帯で、3年から6年のスパンをおいて17年の間に5人の幼女が誘拐されています。
・福島万弥ちゃん事件 79年8月、栃木県足利市で5歳の万弥ちゃんが自宅近くの神社で姿を消したあと、河川敷で遺体で発見される
・長谷部有美ちゃん事件 84年11月、栃木県足利市で5歳の有美ちゃんがパチンコ店から姿を消す。1年4ヶ月後、市内の畑から遺体で発見される
・大沢朋子ちゃん事件 87年9月、群馬県太田市で8歳の朋子ちゃんが公園から姿を消した。河川敷で遺体が発見される。
・松田真実ちゃん事件 90年5月、栃木県足利市で4歳の真実ちゃんがパチンコ店から誘拐され、翌日河川敷で遺体発見。
・横山ゆかりちゃん事件 96年7月、群馬県太田市で4歳のゆかりちゃんがパチンコ店から姿を消し行方不明。防犯カメラに不審な男の映像。
 
 5つの事件の共通項は、「幼女を狙った犯罪であること」「3件の誘拐現場はパチンコ店」「3件の遺体発見現場は河川敷のアシの中」「事件のほとんどは、週末などの休日に発生」「どの現場でも、泣く子供の姿などは発見されていない」。
 犯人は捕まっていません。というのも、この5件はつい最近まで、連続事件として捜査機関に認識されていませんでした。県境を跨いでいるとはいえ、これだけ狭い範囲で、似たような事件が起こっているのにですよ?
 なぜなら、それは1990年の松田真実ちゃん事件だけが、解決されていたからです(足利事件)。
 犯人が捕まっているのに、その後に横山ゆかりちゃん事件が起きています。これでは連続性は問えません。
 捕まった容疑者は、同じ足利市の他の2件についても追求されましたが、こちらは証拠不十分で不起訴になりました。
 ところが・・・この無期懲役囚として服役していた人間が、DNA型再鑑定で一転して無実釈放になったとしたら?
 この冤罪事件が我々の記憶にも新しい、菅家利和さん(62)の件。元幼稚園送迎バス運転手だった菅家さんは、45歳のとき「自供」と「DNA型鑑定」が決め手となり、松田真実ちゃんを殺害したとして逮捕されました。
 それから17年半。晴れて無実が明かされ、2009年6月4日に刑務所から釈放されたのです。日本中が激震した冤罪事件でした。昔の科学捜査に取り込まれて間もない「DNA型鑑定」は、人を裁くための根拠として適切ではなかったのです。さらに、警察庁から解決への圧力を受けて焦っていた栃木県警は、気の弱い菅家さんに無理やり自供を強制したのでした。

 菅家さんは犯人ではなかった。すると、どうなるでしょうか?
 すでに犯人逮捕、解決済みの一件があるとして連続事件として認識されなかったこれらの事件は、一挙に黒の碁石が裏返り盤面は白一色、「北関東連続幼女誘拐殺人事件」へと変貌したのです。未だ見つかっていない同一犯の犯行ではないか、と。真実はどこにあるのか。菅家さんの釈放は、真相究明の真のスタートになりました。
 防犯カメラに捉えれた、アニメのルパン三世にそっくりな男。
 果たして彼が5人の幼女を誘拐して殺害した真犯人なのでしょうか。
 著者はその実像に迫るのですが、開けてはならないパンドラの箱を開け・・・

 著者の清水潔は、日本テレビ報道局記者。
 「私は殺される・・・」と警察に告訴しながら勝手に書類を改ざんされて放っておかれ、本当に殺されてしまった「桶川ストーカー事件」の真相報道で名を馳せた、辣腕ジャーナリストです。
 彼は、未だ未解決の闇の中にあるこの連続事件の真相にどうせまるのか。
 結論を言わせてもらえば、著者は“真犯人”を特定しました。会話もしています。
 道程は読んでのお楽しみです。
 しかしまあ、福岡の「飯塚事件」についても詳述されていましたが、冤罪事件はホント怖いですね。
 でも、これでもね、日本の警察、司法機関は世界的に見て格段に優秀なのですよ。
 外国の警察なんて、マジでエグいですからねえ。
 それに、旧来のDNA型鑑定に比べ、最近の技術は段違いに精密になっているようですから。
 もちろん、それによって過去の冤罪事件の被害者に対する司法機関の責任が消えるわけではありません。
 それどころか、永久に消えませんから。人の一生が台無しですからね。家族までも。
 セクショナル・インタレストもある程度は仕方ないですし当然なのですが、本末転倒はいただけません。
 改めてマスコミの力を見直したというか、著者みたいなジャーナリストはもっとたくさん必要だということでしょう。



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