「金色機械」恒川光太郎

 第67回日本推理作家協会賞受賞作「金色機械」を読みました。
 ジャンルは時代ファンタジー。大河的です。あまりホラー感やミステリー臭はありません。
 恒川光太郎という作家の作品を初めて読んだので、あまり偉そうなことは言えませんが、非常に読みやすいですし、フワフワと足が浮くような不思議な感覚のなかで読み進むのはこの作者独特の世界なのでしょうか、それでいて先の展開が気になるスリリング感もありますから、分厚い本ですがあっという間に読み終えることができました。
 大河的と書きましたが、各チャプターには年代が書かれており、冒頭1747年に始まったこの物語は、途中200年ほど歴史を遡る場面もあって、背景には滝のような時流の存在が濃厚に感じられます。因縁ともいいますかね。
 その大きな時代の移り変わりのなかで変わらないもの、それがタイトルの「金色機械」です。
 途中で拾えた言葉から考えれば、1400年代から、それは存在していたことになります。
 外見は変わっていません。金ピカですが、その時によって声が変わったりするようです。
 戦闘になれば、それは恐ろしい強さを発揮しますが、普段はじっと書物を読んでいたりもするようです。
 金色機械とはいったい、何なのか。何者なのか。どこからやってきて、何が目的なのか・・・

 簡単に導入、あらすじ。1747年。
 大遊郭の創業者である、しなの屋楼主・熊悟朗は心眼(相手の殺意、嘘などを見破る能力)を持っている。
 子供の頃、実の親に殺されかけて家を飛び出た熊悟朗は、山賊に拾われ、彼らの住処である山奥の極楽園で育った。
 下働きから始まり、武術を習い、攫われてきた遊女たちと交わり、実力者として成り上がった熊悟朗は、里に下りてやがて莫大な利益を生む遊郭の経営を任されるまでになった。
 極楽園は、関ヶ原の前にできたと云われ、隠田、隠畑を持っていた昔の頃から、藩の役人と裏で結託していた。
 今では、熊悟朗の管理する遊郭から莫大な裏金が、藩の幹部に流れている。
 それでいて、極楽園のある場所は、山奥深くに鬼御殿があるという伝説があるのみで、関係のない誰にも知られていなかった。相変わらず、人知れず里に降りては童女を攫って、遊女に仕立て上げているが・・・
 ある日、熊悟朗のもとに、ひとりの娘が面談に現れる。名は遥香、16歳。
 熊悟朗の異能である心眼が警告を鳴らす。彼女は遊女になるべくやって来たのではなかった。
 やがて遥香は滔々と長い物語を語りだした。それは、胸に手を当てるだけで人間の魂をあの世に送ってしまう、恐るべき能力を生まれながらに持った、とある娘の物語だった・・・

 うんうん、楽しみましたよ。
 太閤殿下の宝物庫にもいたかもしれないという、金色様はいったい何だったのでしょうか。
 一番ヒントになったのは、181ページですかね。
 「天の船が爆発して以後、私たちは数世代を重ねて・・・いつの日か天の船が迎えに来ること。それまで、天の技術、天の民の文字や、知識、〈天器〉の数々を外界の者から守りぬくこと」と、あります。
 このことから、ツキカラキタのかどうかは知りませんが、異星人に関係しているに間違いありません。
 そして、他のメンバーが人間的特徴を持っているのに比べ、ただ一体だけである金色様はご飯を食べず、日光によってエネルギーを得ているようです。体の中からピコピコ音がしています。
 金色様は、声音は性別のみならず、個人や故人のものまでそっくりに真似ることができます。
 さらに、世襲された一族の棟梁の命令を忠実に守るようにできているようです。
 このことから、金色様はコンピュータと記憶媒体が内蔵された、太陽光発電で半永久的に作動するロボットであり、用途は護衛役を含む忠実な下僕であると思われます。
 
 そして、この物語は金色様だけが主人公ではありません。
 金色様がけっして血縁を成すことはないロボットならば、熊悟朗が山賊に世話になったとき、同時に攫われてきていた紅葉という童女と、その娘である真子(遥香)の母娘の物語は、濃厚な血の繋がりの物語です。
 そこに、柴本厳心という秘密の過去を持つ正義の奉行所同心が織り込まれ、幾重にも想いの重なりあった味のある人情譚に仕上がっています。
 大したことではありませんが、熊悟朗と遥香に異能力があったのはなぜなのでしょうね。
 そこも絡めて、ラストにももう少し工夫というかひねりがあれば、と思いました。
 まあでも、けっこう良かったです。


 
 
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