「警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官」梶永正史

 第12回「このミス」大賞受賞作です。
 うーん・・・ハッキリいってあまり面白くありませんでした。
 ペンネームと、タイトルと、カバージャケットの印象で読めば裏切られること間違いなし。
 ペンネーム=渋いおっさんみたいな名前だし、正統派警察小説の期待
 タイトル=女性捜査官が指揮を執って難事件を解決するのだろうという、ある意味スタイリッシュな思惑
 表紙カバー=ダークスーツを着たシルエットにより、女性を主人公としながらも硬派な展開を想像
 こういうふうには、あまりなりません。
 なぜなら、主人公の郷間彩香は腕は立つらしいのですが、「電卓女」とか「半マロ」とか呼ばれているのでね。
 美人ぽいのに、コケティッシュなんですね。
 さらに、渋谷のど真ん中で発生した銀行強盗事件なのに、緊張感がまるでなし。
 これは、まあ、後で少しだけあらすじを書きますが、主犯格の男が敬語で喋るような好人物だからです。
 会話もノリだし随所にコント的な場面も多く、ストーリーは軽快に進むます。読みにくいということもありません。
 むしろ問題は、先ほど書いた先入観からすれば、作品が軽すぎるということなんですね。
 これはこれでわかっていれば、割りきれて読めるかもしれません。ラノベ好きにはいいかも。
 郷間彩香のキャラクターだって、コケティッシュといえどコケてはいません。
 さすが大賞だけあって、脇のキャラクターだって結構立っています。
 だけども、どうして何のために事件が起こったのかという真相までが、物語全体を覆い包む軽さに負けてしまうというのはどうでしょうか。真相は、民族的であって、けっこう重いたぐいのものです。それが、読み終えれば木綿豆腐を食べたつもりが絹ごし豆腐のような歯ごたえのないものなってしまうのは、やはり構成的に間違いであると思います。
 木綿は木綿で絹ごしは絹ごしで、分けて別の作品にすればよかったと思うのです。
 今のままでは、例えていえば、吉本新喜劇で北朝鮮拉致問題を扱うようなミスマッチというか、宝塚歌劇で志村けんの変なおじさん踊りをするような深刻な不一致を、読み手としては感じてしまいます。
 郷間彩香は郷間らしく捜査二課の事件をコメディタッチで、そして、朝鮮王朝の末裔問題はシリアスな国際諜報サスペンスで、というほうがよかったんじゃないかなあ。
 
 少しだけ導入部分。
 渋谷スクランブル交差点から北へ50メートル、☆武デパート1階の銀行で立てこもり事件が発生。
 犯人は、アロハシャツを着た男を筆頭に、目出し帽を被った男がふたりの計3人。マシンガンで武装している模様。
 人質は行員、一般人を含む10人。事件発生時に行員を逃した支店長が犯人グループに殴られ、怪我をしている。
 この事件が発生し、館内放送でそれを聞いたときに、警視庁捜査二課主任代理・郷間彩香警部補は「場所が場所だけど、私には関係ない。でも、お酒を飲むのは不謹慎だから、今日の飲み会はやめておこう」と思った。
 銀行強盗のような強行犯の場合は、おもに捜査一課の特殊犯捜査係(SIT)が対応にあたる。
 対して捜査二課は、主に詐欺、企業犯罪や政治家の汚職などを捜査する部署である。
 庁内で彩香が「電卓女」などと揶揄されているのも伊達ではない。彩香の武器は数字の不正を暴く「電卓」だ。
 30歳で警視庁捜査二課に配属されてから2年、彩香は拳銃なんて共同ロッカーに預けっぱなしである。
 だのに、とんでもないことが起きた。
 銀行に立てこもっている犯人グループが、あろうことか彩香を名指しで交渉役、警察の現場指揮官に指名したのだ。
 犯人は彩香の知っている人間なのだろうか?
 名刑事だった亡父の親友でもあった、警視庁刑事部長の野呂警視監からの要請もあって、彩香は場違いながら覚悟をして(少しはキャリアアップの目論見もあり)、事件の指揮官として現場に向かう。
 現場には、「なんでおまえがしゃしゃり出るの」と不機嫌な、以前から確執のあるSIT隊長の後藤警部がいた。
 これはわかる。しかし、なぜかサッチョウ(警察庁)の吉田という、キャリアの警視長がいた。オブザーブらしい。
 これは解せない。警察庁の人間は、実際の捜査をすることはないからだ。
 さらに、これは後藤も驚いたのだが、吉田は警備部のSATの狙撃手をひとり連れて来ていた。
 これも解せない。SATは武力制圧を念頭に置いた特殊部隊であるが、単独で参加という例はない。
 おかしいことは事件現場だけではなかった。
 亡き親友の一人娘へのバックアップもあって、全体の指揮をとるべく対策本部に入ろうとした刑事部長の野呂が、警察庁の幹部に会議室に監禁されたのである。表向きは銀行立てこもり事件の討議であった。
 これはただの立てこもり事件ではない。何かある。
 野呂と彩香が同時にそう思い始めたとき、事件はゆっくりと動き出した・・・

 えーと、私はほとんど知らなかったのですが、朝鮮王朝の末裔について。
 1910年、日本の韓国併合に伴い、5百年以上続いた朝鮮王朝が消滅しました。
 王族の多くは爵位を与えられ、日本にやって来たそうです。
 事実上、最後の皇太子だったのは李垠という人で、日本の皇族の梨本宮方子と結婚、ふたりの子をもうけました。
 長男は生後間もなく亡くなりましたが、次男の李玖は最後の末裔として2005年に日本で亡くなったそうです。
 子供はいなかったために、王家の血統はこれで絶えました。
 本作は、この出来事というか事象が事件の核心になっているのですね。
 実際、生後間もなく長男が亡くなった件に関しては、日朝双方による陰謀説があるそうです。
 確かにミステリアスですが、もっと真面目な本で読みたかったですね。


 
 
 
 
 
 
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