「首折り男のための協奏曲」伊坂幸太郎

 相変わらず私にとっては、何を書いているのか何が書きたいのかわからない作家です。
 ハッキリ言って面白くないし、合わない。
 フワフワっとさせてオサレ(おしゃれ)にまとめようとするのも、おっさんのくせに気色悪いって思います。
 それでも、たまに嫌いな人間に無性に会いたくなるのと同じように、1年に1冊くらいは読むようにしています。
 なんたって、売れっ子ですからね。
 根が一方通行であり狷介にできてる私ですが、かといって読まず嫌いはできません。
 1年に1冊ちゃんと読み切って、「やっぱり嫌いだな」と確認してホッとする、儀式のようなものです。
 それでもね、本作は連作というか短篇集とも云えるのですが、最後の作品「合コンの話」は相当、面白かったです。
 今まで私が読んだ伊坂幸太郎の小説の中では、図抜けて楽しかったと思います。
 これは収穫でした。

「首折り男の周辺」
 この3年で5件、一瞬のうちに人間が背後から首をひねり折られて殺されるという事件が起こっている。
 被害者は中年から若い女性まで、中には俳優や刑事もいる。場所は西から東、全国に広がっている。
 年金生活をしている若林夫妻は、隣のアパートの1階に住んでいる男が怪しいと思っていた。
 パン工場で働いている小笠原稔は、待ちを歩いているときに、「大藪」という男に間違えられ、奇妙な頼み事をされる。
 実は「大藪」こそ、世間を騒がしている首折り男であったのだ。
「濡れ衣の話」
 3年前、女が丸岡直樹の息子を車で撥ねた。それ以来、彼の人生は閉ざされた。
 女のマンションで偶然本人と出会った丸岡直樹は、女が事件のことなど忘れた様子で安寧に暮らしていることに愕然とし、首に刃物を突き刺して殺害してしまう。帰りに物騒な男に襲われた丸岡直樹は、田中という刑事に救われる。
「僕の舟」
 ガンにかかり、寝たきりで意識もない夫の順一を介護している、若林絵美。
 彼女は黒澤という探偵に頼み事をした。それは、50年前にたった4日間味わっただけの、淡い恋の行方。
 銀座で偶然知り合った男との短すぎる出会いと別れ。もしも彼と人生を共にしていたならば・・・
「人間らしく」
 仙台で探偵と空き巣をしている黒澤。釣り堀仲間から仕事を依頼される。内容は、義理の弟の不倫の証拠を押さえてくれというもの。一方、作家をしている窪田という男の家を訪れ、黒澤はそこでクワガタの世界を見せられる。
 人間のいじめがどうして起きるのか。それは、生物的に仕組まれたものだという。
 ケースの中のクワガタの世界と、塾でイジメられている少年の世界がリンクするとき、そこには神の手が現れる。
「月曜日から逃げろ」
 釣り堀で針を垂らす黒澤のもとに、久喜山という東京の制作プロダクションの男がやって来た。
 常に他人より優位に立ちたいという、嫌な男である。
 久喜山の頼み事とは、盗まれてニュースになった絵画が、なぜか自分の家にある、なんとかしてくれというものだった。
 動画は逆回転なら話も逆回転。
「相談役の話」
 仙台の作家、窪田の学生時代に同じクラスだった男の話。
 彼は、窪田に“山家(やんべ)清兵衛”の話を聞きに来た。山家清兵衛とは、伊達政宗の家臣であり、秀宗が宇和島に移るときに相談役として付いていったが、藩政改革を疎まれて殺害された能臣である。この事件のあと、清兵衛の祟りとも云われる怪事件が相次ぎ、関わった多くの人間が不審な死を遂げた。
 窪田のクラスメイトが社長を務める会社でも、同様のことが起こっているというのだが・・・
「合コンの話」
 無理やりに“首折り男”とエピソードを関連付けられていますが、これ単独で面白いです(・∀・)
 男3女3で始まった合コン。ところが、男3人はまったく面識がない。
 それどころか、尾花弘にいたっては、昔の恋人が混じっていたという、まさかの展開。
 おしぼりサインとか、会話と心理とか、合コンはネタにあふれていますねえ。
 展開も軽快で読みやすく、ラストも綺麗に決まったし、伊坂幸太郎を見直しましたよ。
 万人好みの好作品だと思います。

 結局、首折り男はなんのこっちゃわかりませんでした。
 仙台の黒澤という謎の空き巣も、過去の作品に現れたキャラなのかな、私は知りません。
 あとがきで作者は、それぞれ別に作られた短篇を少しアレンジして連作の雰囲気を出した、みたいなことを書いていましたが、「合コンの話」とか「僕の舟」(着想は素晴らしくも伊坂が台無しにしてしまう)は、単独のほうが良かっただろうと。
 逆に読む方が首折り男が気になりすぎて、構えて読んでしまうので、この作戦は失敗でしたね。
 中吊り広告とか新聞で大袈裟に宣伝されてましたが、どっかの販促書店員の感想文や北朝鮮の演説と同じで、本当は面白くないのにこの作家だから面白いみたいな、真実を覆い隠した煽りはやめていただきたいと思います。
 首折り男にこだわるかぎり、たいして面白い小説ではありません。


 
 
 
 
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この記事へのコメント

- 藍色 - 2016年06月14日 12:50:16

好き嫌いが分かれる作品ではないかと思いますが、
私には短編として読んでも面白かったです。
今回も存分に楽しむことができて全体的に満足でした。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。

トラックバック

粋な提案 - 2016年06月14日 12:37

「首折り男のための協奏曲」伊坂幸太郎

首折り男は首を折り、黒澤は物を盗み、小説家は物語を紡ぎ、あなたはこの本を貪り読む。胸元えぐる豪速球から消える魔球まで、出し惜しみなく投じられた「ネタ」の数々! 「首折り男」に驚嘆し、「恋」に惑って「怪談」に震え「合コン」では泣き笑い。黒澤を「悪意」が襲い、「クワガタ」は覗き見され、父は子のため「復讐者」になる。技巧と趣向が奇跡的に融合した七つの物語を収める、贅沢すぎる連作集。 「首折り男の...

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