「キャッチャー・イン・ザ・ライ」J.D.サリンジャー

 村上春樹の訳のほうです。
 けっこう楽しかったですね(・∀・)
 昔の「ライ麦畑でつかまえて」も持っていたはずで、訳の具合などを比べたりしてみたかったのですが、部屋のどこを探しても見当たらず、1万回くらい本棚の周りをウロウロしてみても痕跡すら見つからず、イライラしだしたところに猫の玉がやって来て、「おなががすいた」とクソ暑いのに足に擦り寄ってきたりするので、探すのは諦めました。
 読んだのはずいぶん昔ですから、すっかり忘れているのですが仕方ありません。
 おそらくだいぶ違うと思うんだけどなあ。
 捨てた覚えはないんですけどねえ。1日中腹が減っているデブ猫が食べたのかもしれないですねえ。

 ストーリーはすべて独白式です。
 場所はアメリカ東海岸、時代はこの小説が発表された1950年代初頭と同じくらいだと思います。
 主人公である17歳(物語当時16歳)のホールデン・コールフィールドの、わずか数日間の物語。
 彼は、自身4つ目の学校(!)となるペンシルヴェニア州のペンシー・プレップスクールを退学処分になりました。
 選択した5科目のうち得意な英語を除く4科目を落第したのです。
 彼はバカではありません。不良でもありません。イジメられてもいません。
 勉強が嫌いなんですね。学校も嫌い。いや、すべてのことが嫌いなんです。少年特有の厭世観。
 もうね、周りがすべてバカに見えて、神経に障って仕方ありません。
 そのくせ、女の子と酒とセックスの話ばかりだと同世代の少年らの悪口を言いながら、自分もまったく同じことをしているのですがね。童貞ですが、無神論者ですし、彼は頭がいいのです。そのぶん生きづらくて仕方ないと。
 何はともあれ、クリスマス休暇を前にして、彼は伝統校であるペンシーを放校になることが決まりました。
 クリスマス休暇は水曜日からなので、それまでは寮にいてもよかったのですが、ちょっとした事件が起こります。
 一昨年、彼はメイン州の別荘の隣に住んでいたジェーン・ギャラガーという少女に恋をしたのですが、なんと彼女が寮で彼と同室である1学年上のストラドレイターというナルシストのキン肉マンとデートをしてしまうのです。
 土曜の夜、車の中のふたりを想像するとホールデンは頭がおかしくなってしまいそうでした。
 そして夜遅くに帰ってきたストラドレイターに、デートの首尾を聞く前に殴りかかってしまうのです。
 結果、背は高いのですが痩せているホールデンは、このルームメイトにボコボコにされてしまいます。
 こういうわけで、荷物をまとめると彼はそのまま夜中に寮を抜け出し、夜行列車に乗ってしまうのです。
 行き先は、実家のあるニューヨーク。彼の父は顧問弁護士をしており、裕福な家庭でした。
 しかし、火曜日か水曜日かに学校から退学通知が家族の元に届くだろうと思うと、ホールデンはそれまでに家族に会おうとは思いませんでした。そうしたショッキングな知らせが吟味された上で、あらためて実家に帰ろうと思っていたのです。
 だから、ホールデンはニューヨークのホテルや知人の家を泊まり歩くのです。
 あるいは、ステディな地元の女の子とデートしたりとか。未成年なのにバーで酒を飲んだりとか。
 しかし、行く先々でトラブルが起きたりするのですね。最悪なのは、ホテルのエレベーター係に買春を斡旋され、ちょいの間5ドルと言われたのを、後から10ドルだったと因縁をつけられたり・・・美人局ですな。
 または、サリー・ヘイズという女の子とデートしてる最中にどうにもムカついてきて「このスカスカ女」と罵倒してしまって険悪になったりとか。結局、金持ちのボンボンだから、小遣いをけっこう持っていたのですが、ほとんどなくなってしまうのです。
 それもあって、こっそり実家に帰るのですね。この世で一番気に入っている10歳の妹、フィービーに会うためもあって。
 フィービーは“天使”です。ある意味、この小説の真の主人公かもしれません。

 読みやすかったし、楽しかったです。
 なんといってもホールデンの毒舌というか、大げさな比喩が最高。
 「とんちき」とか「インチキ野郎」とか「スカスカ女」とか「退屈死する」とか、その場その場で一番適切な罵詈雑言が吐かれていましたが、なかでも私が気に入ったのは「抜け作(ぬけさく)」。抜け作って言葉いいでしょう、ウケる(笑)
 「この学校はホント抜け作ばかりだなあ」みたいに使われたり。原文が気になりますが、ここらへん村上春樹の才能ですよねえ。村上春樹の翻訳作品は、アンソロジーとレイモンド・チャンドラーのロング・グッドバイを読んだことがありますが、けっこういいですよね。本人曰く、創作と翻訳はチョコレートと塩せんべいみたいな間柄なんですって。
 ま、かわるがわるにいいのを世に出してくれたら、ファンとしては嬉しいですね。翻訳だって作品ですから。
 最後に、キャッチャー・イン・ザ・ライというタイトルの語源ですが、これは、18世紀のスコットランドの詩人ロバート・バーンズの作中の言葉とのことです。
 どこの国でも、どの時代でも、生きづらい少年の苦悩というのは、同じようですね。


 
 
 
 
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