「処刑までの十章」連城三紀彦

 女性は人生で3度変わる可能性があるという。
 初めて男に恋した時、「娘」
 結婚した時、「妻」
 夫に飽きて他の男と関係を持った時、「女」・・・
 
 2013年10月19日にこの世を去ったレジェンド、連城三紀彦の遺した、傑作ミステリー。


 面白かったあ。
 特に、400ページ過ぎてからの展開は、圧倒的でしたわ・・・
 「小説宝石」に4年に渡り連載されていて、去年の10月に単行本になったばかりですが、時期的に2014年度の各ミステリ大賞の対象になっていたはずですよね?
 「満願」より、よほど優れた作品だと思いましたが、読む人によっては違うのかなあ。
 確かに、冒頭でグッと引き込まれてからは少し冗長で、スタイルもなんか一世代前のミステリーみたいで古くさく、これは最後まで読むのが大変だと思ったのですが、俄然、クライマックスに向けて絶好調! になりました。
 真相がわかりません、最後の最後まで、謎が解けません。誰が誰を処刑したのか?
 むしろ、「もう犯人は俺だってわかってるんだよ、だから、どうやったのかだけがわからないんだよ、はよはよ」なんて思い込んで、先を急いでいた私は、墓穴を掘って奈落に堕ちたね。バカでしたね。きっちり、やられました。
 連城三紀彦という作家は、実はあまり馴染みがなかったんですが、こういうの読むと、亡くなってしまったことが本当に惜しかった、と思います。久しぶりに、すごいミステリー小説を読んだ、という気がしました。

 あらすじは、ネタバレであんまり書けないね。
 それ以上に、本作には、あらすじというものが大して関係ないとも思います。
 導入だけ、触れておきましょう。
 
 東京、国分寺。
 結婚して11年の西村家は、子供がいない。
 6年前に営業から経理課に異動になってから、夫・靖彦は、家庭と職場を定時に往復するだけの単調な生活を続けており、妻の純子は、そんな真面目一本槍の夫を、専業主婦として支えていた。
 ところが、10月28日のその日、夫婦ふたりの人生を大きく変える事件が起こった。
 天気予報を見忘れた以外、いつも通りの朝を迎え、出勤していった夫・靖彦が消えたのだ。
 妻・純子が、夫の蒸発を知ったのは、その夜になって、会社から連絡があったからだった。
 靖彦は無断欠勤しており、しかも取引先への請求書を改ざんして、二百万ほど着服した疑いがあるという。
 携帯も繋がらず、靖彦の行方はわからない。動機も、見当がつかない。
 あまりの突然の出来事に取り乱した純子は、夫の弟で、銀座で音楽教室の講師をしている直行に助けを求める。
 そして、純子と義弟である直行の、捜索行が始まるのだが・・・
 実はこのとき、東京からはるか離れた高知県の土佐清水市で、放火殺人とみられる事件が起こっていた。
 焼け跡からは男性の遺体が発見され、火事が起こる前に女性が逃げたのが目撃されていた。
 ・・・土佐清水市は、何の趣味もなかった靖彦が、唯一のめり込んでいたアサギマダラという、何千キロも渡りをする青く美しい翅をもった蝶に関連して、交流している女性がいた。
 2年前、多摩湖で靖彦は、その翅に、土佐清水市の女性が連絡先を刻印していたアサギマダラを収集したのだ。
 一件、なんの関係もなさそうな東京の会社失踪事件と、高知の放火殺人事件は、リンクしていく。
 多摩湖の旅館で、中年男性と若い女性の痕跡を、純子と直行が見つけてから・・・

 感想と、ちょいネタバレ。
 「小説宝石」にしては、失礼ながら、作品の格調というか、出来栄えが良すぎる気がしましたが、純子と直行の関係は、宝石らしかったと云えますなあ。
 そこまで焦らすんなら、はよやらんかい! と思いました。
 意味があるのかどうか、純子の年齢がわからないままでしたねえ。
 ちょっと推理。
 直行は、何かのとき32歳だったとありましたから、30代中盤くらいだと思います。
 大学の同級生の小瀬に会ったのは、十数年ぶりだったそうですから。
 純子は夫の靖彦を、「靖彦」と呼び捨てにしています。高校のクラスメイトです。
 10年かけて遠回しに口説き続けて結婚、それから11年・・・
 ということは、(16~18)+10+11ですね。37から39歳。
 このへんだと、34か5だと思われる直行の年齢とも矛盾しません。妥当な線じゃないですか。
 まあ、小説宝石らしくて、良かったところもあったということで。
 5時71分といった、時間のトリックだけはイマイチだったと思います。以上。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
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