「鬼はもとより」青山文平

 新聞に大きく“藤沢周平の再来か!?”と広告されていた、新進気鋭の時代小説家・青山文平さん。
 新人といっても、ええ年したオッサンですけどね。
 浮世から離れた小説家という商売は、18でデビューしようが90歳でデビューしようが、新人は新人です。
 そして、面白ければ、ベテランも新人も年齢も性別も関係ありません。
 本作が面白かったかどうかはともかく、少しあらすじから。

 宝暦8年(1758)、江戸のどん詰まり浅草山川町。
 ここの裏店(うらだな)に、万年青(観葉植物)を商う浪人が住んでいた。
 名は奥脇抄一郎。30歳過ぎの美男であり、裏店の女房や後家の胸を熱くさせるが、本人に女を構う様子はない。
 実は、たまに3千石の旗本である深井藤兵衛が彼の元を訪ねてくるように、抄一郎の本業は万年青商いではなかった。
 彼の生業は、藩札の万(よろず)指南、つまり今でいう経営コンサルタントである。
 8年前、北国で藩主を間近に護る御馬廻りの藩士だった抄一郎は、名うての女たらしであり、挙句の果てに女に刺されるという不祥事をしでかし、勘定方の藩札掛に回された。閑職である。抄一郎のほかにも全員で5人の不良藩士が藩札頭である佐島平右衛門の下に集められた。もうすぐ70になろうかという頭の佐島そのものが、変人の評判高いはみだし老人である。
 ところが、行く末の案じられたこの藩札掛は、北国の貧乏藩の内証を立て直し、1万2千両の備え金に対して3倍にあたる3万6千両刷られた藩札は、“佐島札”と呼ばれて信用され、大層な評判をもたらせた。
 槍働きが生きていた慶長から150年が経った宝暦の、最大の敵は貧しさである。
 その敵と戦いうるのは、死と寄り添う武家しかありえない。商人はいくら儲けても、己の命を賭して民衆を救うようなことをしない。抄一郎は、己の死に場所は御馬廻りではなく、藩札掛にあると信じた。
 しかし、佐島が亡くなり、抄一郎が藩札頭になってからの宝暦5年に、大飢饉が起きた。
 財政はたちまち悪化し、筆頭家老から藩札の大量刷り増しを命令された抄一郎は、その効果を疑問視して、藩札の版木を持ったまま、生まれ育った藩を欠け落ちたのである・・・
 やがて藩の財政は、抄一郎が見立てた通り破綻して、藩札を大量発行した筆頭家老は打首となった。
 江戸にやってきた抄一郎は、当初こそ本当に万年青をひっそりと商って糊口をしのいできたが、やがて「版木を持って脱藩してまで藩の財政を救おうとした義士」としてその名前が高まり、旗本の深井藤兵衛を仲介に、日本各地の貧乏藩の財政相談に乗り、藩札発行を指南してきたのだった。
 そして、抄一郎の前に、また新たな瀕死の国が救いを求めてやって来た。
 北の海に臨む、1万7千石の島村藩。家老でさえ75石の扶持しかなく、めぼしい大店は福田屋という干鰯などを扱う1軒だけで、盛り場もなく、あまりにも深閑とした城下町しかない。客人である抄一郎に対しても、救荒食である芋粉汁しか出ない。終わってるこの藩で、救いは執政の筆頭家老である梶原清明の、なんとしても切るに切れぬ旧弊を断ち切り、これまでの国の成り立ちを大元から変えようとする、御主法替えの鬼気迫る気迫のみだ。
 はたして抄一郎は、島村藩を救い、目標とする御金蔵に5万両の正貨を積み上げることができるだろうか・・・?

 まあ、こんな感じですかね。
 時代経済小説ともいえる作品ですが、それもそのはず、作者は元経済誌のライターのようです。
 目新しいですが、といっても、それほど複雑な話はでてきません。
  藩札というのは、今の日本銀行券の地方版みたいな感じですか。当時、小判のような正貨を発行していたのは幕府そのものですが、なんせ使い道が江戸、大坂や京都など都会に限られて、地方の藩にはお金が回ってこないんで困っていたのですね。
 おや、なんだか今の日本にもどこか似てる(・_・;)!?
 まあ、江戸時代の経済政策を興味深く、適度にうかがえるほどよいバランスでした。
 バランスが悪かったのは、情絡みの話しのほう。
 女たらしというか、ネチネチと書き方がしつこかったですね。必要なかったと思います。
 経済と剣劇の2つを主流に、情事はお飾り程度でよかったのではないですか。
 おそらく続編があるのでしょうが、話をシンプルに面白くするために、そのへんは切り捨ててほしいですね。
 まあ、ラストの一文は、なんともいえない味があったわけですが・・・そのためだったのかなあ。
 正直いって、藤沢周平の再来とは思えませんでしたが、甘目で80点かと。


 
 
 
 

 
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