「愛の夢とか」川上未映子

 思ってたより、良かったです。
 特に最後の、死に別れた仲のいい夫婦の話はすごい良かった。感動しました。
 もっとも、いかにも川上未映子らしい、いくら読んでも活字が脳に入ってこない理解不能な作品もあります。
 短編集ですからね、それは仕方ない。
 それでも、最後の「十三月怪談」は、私の川上未映子観を覆す作品でしたね。
 私の川上未映子観というのはですね、この方、へたに美人でしょ?
 それも、川上弘美や髪を伸ばした桜庭一樹のような、作家然とした物書き美人ではないと思います。
 前に歌手だったこともあって、川上未映子の美しさはタレント的なものです。
 だからね、書いたものに対しても色眼鏡で見てしまうんですね、悲しいかな。
 わざと奇をてらって、難解な作品にしてるんじゃないか、みたいな疑惑もありました。
 たまにふつうのものを書けば、下手というかつまらないというか、メッキが剥がれたような感じもありましてね。
 つまり、そういうのが今回で一新されたということです。
 いろんな文学賞を受賞した実力は伊達ではなく、やはり日本の文学界をリードしていく逸材であり、それがわからなかったのは、読み手である私の感受性及び読解力が至らなかったあるいは酒の飲みすぎで脳が溶けているということになります。

「アイスクリーム熱」
 序文「まず、冷たいこと。それから甘いこと」 彼がアイスクリームを買いに来るにようになって2ヶ月、アルバイトで接客している私は、ひとめみたときから彼を好きになった。彼は規則正しく、二日おきにアイスクリームを買いに来る。ある日、意を決して私は、4時に上がるので、一緒に帰りませんかと声をかける。

「愛の夢とか」
 第49回谷崎潤一郎賞を受賞した表題作。仕事もしておらず子供もおらず趣味もない専業主婦が、隣の家から漏れ聞こえてくるピアノの音をきっかけに、隣家を訪問すると何が起こったか、というお話。そこには60代の婦人がいて、自分をテリーと名乗って、リストの名曲「愛の夢」をつまらずに弾けるようになるまで週に2日来て欲しいと言われる。
 きっと最初からつまらずに弾けたのではないですか。もう来てほしくなくなったか飽きたのでしょうね。はい。

「いちご畑が永遠につづいていくのだから」
 理解不能というか、非常に読みにくい作品。一緒に暮らしている男女が喧嘩するのですが、よくわかりません。
 ひょっとしたら、怖い話なのかもしれませんね。

「日曜日はどこへ」
 朝起きたときにスマホのニュースで、ある著名な作家の死を知った私。その作家の本はすべて持っているが、好きになったきっかけはクラスメイトの雨宮君が薦めてくれたからだった。雨宮くんとは高3の終わりに付き合いだして21歳の夏に別れた。作家が死んだことで、そのことを思い出した私は、14年前にした彼との約束も思い出す。
 これも好き。こういうのいい。覚えているわけもないし、いるはずもないんだけどね。
 覚えているほうと覚えていないほう、これを社会からドロップする側としない側のメタファーとして表していると思います。


「三月の毛糸」
 これだけは語り手が男性。仙台に住んでいる夫婦が、妊娠8ヶ月の妻の実家島根に出向き、帰りに京都で觀光をする。男性は、妻が妊娠してから、なぜか睡魔に襲われるようになった。
 ふと思ったのは、ふたりとも実は死んでるんじゃないかということ。理由はありません、直感です。

「お花畑自身」
 読み終えたころには、タイトルの意味がわかる。50も半ばを過ぎた私。少し年上の夫が共同経営者をしていた建設会社が破綻、家を売却する。その家は、子供がいない私が、子供を育てるように慈しみ、長い年月をかけて作り上げた空間だった。何もかも失くし、夫はベンツから国産の中古車に乗り換え、ウィークリーマンションに住むようになった。
 家を買い取ったのは、作詞家だという女性だった。ある日、私は公園から家を覗き見ているうちに、精魂込めて世話した庭園が荒れていることにどうしようもなくなり、敷地に入り込んでしまう。

「十三月怪談」
 名作かもしれないね。まだ若い夫婦を襲った悲劇。血液検査で偶然見つかった進行性の腎臓病で、妻は39歳の夫を独り残し先立った。ひとりぼっち、残された夫のショックは癒えない。死ぬことは、見えなくなることだという。気がつけば、妻は部屋に取り憑いて、夫の先行きを見守っていた・・・
 どういうことかと言いますと、これは怪談ではありません。
 死に別れたふたりが、それぞれ違う世界に入ったのでもありません。
 人は死ぬ瞬間、走馬灯のようにこれまでの人生を振り返ると聞いたことがあります。
 潤一が亡くなる場面にネタバレがあります。つまり、そういうことです。
 脳が違うので、世界も違ったものになります。それはともかく、少しウルっとくる話でした。



 
 
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