「家族シアター」辻村深月

 血が繋がっているからといって、仲がいいとは限らない。
 でも同じ家に暮らしていれば、喧嘩をしてもいつの間にかまた口を利くようになる。それが家族というもの。
 姉と妹。弟と姉。母と娘。父と息子。姉と妹。祖父と孫娘。曾祖母と曾孫。
 直木賞作家・辻村深月がおくる、家族七景、家族シアター。

 ミステリーかと思って読みましたが、違います。
 家族の絆をテーマにした7篇の短編小説集。それぞれの作品の繋がりもほぼ皆無(セブンス・クライシス以外)。
 ハッキリ言って、はじめと次の2作品が、まあ、私は辻村風のミステリーを期待していただけになおさら「なんじゃこりゃ?」と腰が砕けるような、面白みのない小説に仕上がっており、もうこれは最後まで読めないなと思いました。
 せめて長編だったらなあ、と思いながら。
 ところが、3作目からキッチリ名誉回復(≧∇≦)/ 以後、ラストの物語まで一貫して良かったと思います。
 特に私がいいと思ったのは、ラストの「タマシイム・マシンの永遠」。短いながらも、奥が深かったと思います。たぶんこうなるだろうという想定以上の締め方でしたね。作者の実力を感じる一作でした。
 そういや、辻村さん、ドラえもんファンでしたっけ? タマシイム・マシンね。
 ほか、語り手の立場が姉になったり弟になったり、父になったり祖父になったりするんですが、違和感ないですね。
 「孫と誕生会」の祖父目線での小説、特に気にして読みましたが、けっこう良かったと思います。
 辻村深月というと、どうしても学園や青春舞台のミステリーという印象が強いのですが、もうすっかり守備範囲の広いオールラウンドプレイヤーになられたようです。ミステリーだけじゃないよ、という作者の主張にも思えました。

「『妹』という祝福」
 姉である由紀枝の結婚披露宴。妹の亜希の席には、姉からのメッセージが。「亜希へ。中学校時代の私にとって、唯一の・・・」 1つ上の年子である姉は、真面目一本槍でダサかった。妹の亜希からみてもブスだった。学校の勉強だけを誇った姉に対し、亜希はそれを反面教師として女を磨いていった。姉のようにはなりたくない、と。

「サイリウム」
 サイリウムは棒状の発光ペンライトのこと。アイドルオタクである尚弘と、バンギャ(ビジュアルバンドの追っかけギャル)の姉・真矢子とは仲が悪い。仲が悪いのに、家で顔を合わす度、姉は尚弘を挑発しようとする。

「私のディアマンテ」
 これはホコっとするいい話。元キャバクラ嬢で、公務員の夫とできちゃった婚をした母とその娘のドラマ。
 その母、豊島絢子は、学校の成績がよく特待生でもある娘のえみりとは、そりが合わない。母は娘がもうちょっと女の子らしく青春をエンジョイすればいいのにと思っているが、娘は勉強絶対主義で、オシャレにも興味がない。
 しかし、とんでもない事件が起こって、母と娘はやっとわかりあえる時がくるのです。
 ありそうでなかった設定というか、元キャバ嬢の母というのが新鮮。母は母なんだよね。

「タイムカプセルの八年」
 水内孝臣は、私大の准教授。一人息子の幸臣がいるが、学者という世間一般のイメージ通り、その父親ぶりはズレていた。誕生日やクリスマスなどのイベントをきちんと祝わない。運動会や授業参観をよく忘れる。父と息子の関係も、仲のいい親子というわけではなかった。しかし、親父会というPTAの男親限定版みたいな会合の会計を強引にやらされることになり、知らず知らず学校行事に深入りしてしまう。そして、8年後の自分に手紙を送るという、タイムカプセルのイベントで子どもたちの心を傷つける不祥事が起きてしまうのだが・・・

「1992年の秋空」
 はるかとうみかは、年子の姉妹。しかし、小6と小5のふたりは、外見も中身も似ていない。
 はるかにとって妹のうみかは個性的で生意気で小しゃくである。うみかは、「学研の科学」を面白がるセンスがある。風変わりで強く、人の目を気にしない。宇宙飛行士になるのが夢らしい。
 そんなうみかが、鉄棒の逆上がりができない。姉ちゃん教えて、と言う。

「孫と誕生会」
 長く連れ添ったばあさんを失くしてすでに10年近く経った今、70歳近くなった俺のもとに、「日本に戻ることになったから一緒に住まないか」とアメリカの長男から連絡があった。先祖代々の家に住み、農業をしてきた俺のところには空いている土地があった。そこに新居を建てたいという。年寄り扱いは癪だったが、俺はその申し出を受けた。
 孫の実香は小学3年生になっていた。実香は、誰とでも仲良くできない性格で、アメリカのインターナショナルスクールでは友達ができず、こちらの学校に行くに当たってもうまく馴染めるか心配しているという。
 見ていると実香は、白米をまったく食べない。かなりの偏食である。俺は、親の甘やかしすぎではないかと思った。
 祖父と孫の、ジェネレーションギャップを乗り越えた微笑ましい交流がスタートする。

「タマシイム・マシンの永遠」
 居酒屋で聞こえた声。ドラえもんの道具はどこまで実現可能か、という討論に、藤子ファンの僕は参加している飲み会から心が離れて聞き入ってしまう。そして、タマシイム・マシンの話が始まった。その話をしたのは・・・
 タマシイム・マシンとは、のび太が赤ちゃんのころの自分の中に、魂だけ入れ替わって入る話。大きくなるにしたがって、自分が粗末にされてる気がするからといって、赤ちゃんの頃を見にいくのだ。
 タマシイム・マシンは実現可能か!?

 改めて振り返っても、タマシイム・マシンが一番かと思います。
 魂とは何なのか、命の繋がりとは何なのか、これほどうまく説明した小説は滅多にないんじゃないですか。
 覚えているうちは、その人は生きているというもんね。
 ということはね、曾祖父や曾祖母といったところが限界なんですよね。見たこともない人のお墓では祖先といってもイメージわきませんから。
 でも続いているから子孫ができる。そこでまた「覚えていてね」を繰り返す。
 これが家族、家系ひいては魂なんですね。


 
 
 
 
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この記事へのコメント

- 藍色 - 2017年03月10日 12:04:22

やすらぎや感動があり優しい気持ちになれて、よかったです。
色々な視点から家族を見つめ直すことができました。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。

トラックバック

粋な提案 - 2017年03月10日 11:54

「家族シアター」辻村深月

お父さんも、お母さんも、おじいちゃんも、おばあちゃんも、娘も、息子も、お姉ちゃんも、弟も、妹も、孫だって―。ぶつかり合うのは、近いから。ややこしくも愛おしい、すべての「わが家」の物語。 同じ中学校に通う姉は、「真面目な子」。 褒め言葉のようだけど、実際は「イケてない」ことの裏返し。 こんな風には絶対になりたくない――だけど、 気にせずにはいられなかった。 (「妹」という祝福) ...

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