「オービタル・クラウド」藤井太洋

 2020年12月1日。
 イラン北部のセムナン宇宙センターから打ち上げられたサフィール3は高度500キロメートルに2つの人工衛星を投入することに成功する。
 しかし、燃料を使い果たしたロケットの二段目の残骸は、落ちてこなかった。
 残骸のはずのロケットボディは、大気圏に落ちて流星になるどころか、加速して高度を上げていたのである。
 それを発見したのは、インド洋セーシェル島で悠々自適に天体観測をしている大富豪のアマチュア天文家と、流れ星の発生を予測してメテオニュースというWEBサービスで提供している日本人の木村和海だった。
 そして、ふたりが事態を把握し、軌道上に何が起きているのか解明する前に、北朝鮮独裁政権の首領が、アメリカは宇宙を明け渡せ! 軌道上を開放せよ! せねば鉄槌が下ろされる・・・という意味深なスピーチを始める。
 軌道上。その空間には、無数の人工衛星はもちろん、宇宙ステーション、望遠鏡、GPSなど人類がいつのまにか依存している莫大なインフラが存在しているのだ。それがなくなってしまうと、我々の社会はどうなるのだろうか?

 帯にはテクノスリラーと紹介されていました。
 なるほど、1897年に導きだされたところのツィオルコフスキーの公式(ロケットの法則)が登場する小説なんて初めて読みましたわ。まあ、わけがわかりませんね。
 遠心力なんてほんとはないんだよ、という話もハンマー投げに喩えて聞いたことはありますが、だからといって軌道上を高速で移動する物体を真っ二つにすると、半分はそのまま宇宙空間に飛び出して行って、半分は大気圏に落ちていくという理屈が感覚的にわかりません。ハンマー投げで回っているときに、ひもの先のハンマーを真っ二つにしたら、片方が飛んで行くというのはわかりますが、もう片方は落ちるのでしょうか。そのまま回るような気がするのですけどね。
 これも作者が書いているのがもちろん真実なのですが、こういう小説でネタになっていることが感覚的にわからなくなると、読んでいて楽しくありません。
 スペーステザーなんてのも、空間の電磁場を利用した、推進剤のいらない半永久的な電気推進システム機関というのは空想の想定内なのですが、その形がイメージできないままでした。
 へたにスペースクラフト(宇宙機)なんて書いてあるから、どうしても飛行機の形を思い浮かべてしまうんです。
 肝心なオービタル・クラウド(軌道上の雲)の想像がつきません。なんせ4万機ですからね。
 まあ、和海のシックスセンスとまではいかなくても頭のいい方にはイメージできるのでしょうが・・・
 理系の小説ですね。
 
 でも私にも、心踊る場面がありました。
 いまだ日本の自衛隊で使用されている傑作戦闘機F15ストライクイーグルが、高度7万5千フィート(普通の旅客機の高度の倍以上!)で、謎の物体を攻撃しようとする場面は、迫力ありましたねえ。
 目の前には、青い空ではなく真っ黒な空があるのですよ。
 これは、実用が可能であったのかどうかは知りませんが、現実にあった構想ではなかったでしょうか。
 なんか聞いたことがあるような気がします。
 真っ黒な空。ユーチューブで似たようなのを見つけました。

 

 あと、この小説で気付かされたことは、目にハッキリ見えない高度300キロメートルを超える軌道上に我々の文明社会を支えるインフラが装備されていること。
 小説では日本の情報収集衛星がすべて無能化されましたが、日本政府がノーコメントであったように、この空間で行われることは我々の知られざることなんです。
 これちょっと恐怖じゃないですか?
 

 
 
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