「ゴサインタン」篠田節子

篠田節子という作家は私にとってホラー作家であるという印象が強いです。
角川ホラー文庫の創刊は多くの有能な作家を生みました。貴志祐介、坂東眞砂子、新津きよみ、そして篠田節子もそのうちの一人でしょう。
本作は怖くはありません。読み方によっては恐ろしいことなのですが、恐怖小説ではありません。
むしろラストのへんでは切ない恋愛小説的な側面が強くなってきます。
恋愛、民俗、オカルト、宗教、色んな要素を詰め込んだこの長編小説は直木賞候補となりましたが、落選しました。
その後すぐに「女たちのジハード」で同賞を受賞するのですが、こちらの「ゴサインタン」のほうがよほど面白いと思いますね。

ゴサインタンとは、神の住む地というネパール語らしいです。
東京近郊で農業をしている名家の後継ぎの結木輝和は、40歳を目前にしてネパール人女性とお見合いで国際結婚をします。彼女の名前はカルバナ・タミ。しかし輝和は日本風に「淑子」と呼びます。
なかなか「淑子」が生活に馴染めない中、やがて次々と不思議な事件が起こります。
明らかにされる結木家の過去の所業。そして摩訶不思議な「淑子」の行動。彼女はいったい何者なのか――
私は一度ネパールを放浪したことがあって、未開の村に泊めてもらったりしたことがあります。
その経験から言うと、作者は十分な現地取材をしているように感じました。そうとう気合いが入ってますね。
スワヤンブナートの影響も感じられます。第3の眼はこれから着想を得たのではないでしょうか。
ネパールは人の数より神の数が多いと言われる国です。
私は日本人を見るのも初めてというあるネパールの山中の村でしばらくの間、ロキシーという地酒を飲みながらダラダラしておったのですが、ある日、ある祭りを見せてくれました。宴たけなわで踊っている中のひとりの男が突然走りだして草葺きの屋根に這い上がり、村人が、ああ、あれは猿が憑いたのだ、と教えてくれました。ガンジャか酒で酔っていたのだろうと思うのですが、その身のこなしは尋常ではなくちょっと気色が悪かった覚えがあります。
「淑子」は巫女みたいな存在だったのでしょうね。
日本にいる間に彼女に憑いていたものはいったい何だったのでしょう。
読んでいるときは気になりませんでしたが、今になってそれを考えるとやっぱり怖いですね。

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