「リバース」相場英雄

 警視庁捜査二課知能犯係通称“ナンバー”捜査員の活躍と苦闘を描くシリーズの第3弾。
 「ナンバー」「トラップ」ときて、「リバース」です。
 前作「トラップ」のラストは衝撃的でしたな。
 一刻も早く続編である本作を読みたいと思っていました。
 前作で西澤属する三知(第3知能犯捜査係)は、捜査二課開闢以来という、大失態を犯してしまいました。
 東京地検のゴタゴタに巻き込まれたのは不運でしたが、送検を焦ってミスをしたのは自業自得です。
 結局、捜査員は詰め腹を切らされ、西澤は目白署に、清野は麻布署に転属となり、入院していたとはいえ筆頭警部の真藤は出世を取り消され、ミスを犯したキャリアの小堀はなんとか辞職を思いとどまり、三知に残りました。
 ほぼ、栄光ある三知は解体されてしまったのです。
 三知OBの大岩に電話したとき、真藤は悔し涙を流していたといいます。
 しかし、真藤は誓いを立てたのです。もう一度この面子で、三知を復活させることを。
 一敗地に塗れた男たちは、はたして失地を回復することができるのでしょうか――

 物語は、それぞれの章で異なる三知の捜査員が繰り広げる連作になっています。
 6章あって、西澤、清野、大岩、小堀、真藤、そして大団円になりますが、行き着く先はひとつです。テーマはフクシマ、そして三知の失地回復。
 まず端緒を掴んだのは西澤。2ヶ月前に目白署という新宿署と池袋署に挟まれた比較的穏やかな署に配属された西澤は、万引き犯などを取り締まっていましたが、そのときに60歳を過ぎた万引き初犯の女性に出会いました。彼女は高級住宅街に住んでおり、とても書店で万引きなどしそうもありません。事情を聞くと、どうやら詐欺にあって4千万という大金を騙し取られ、心ここにあらずの状態でした。彼女の遭った詐欺は、福島県の山林が除染を経て近く国有林にされる計画があり、なにぶん国の費用だけではすべてが賄えないので、福島の復興に寄与すると思って投資してくれないか、というものでした。
 3年以上経ってなお、15万人以上の方が生活の基盤が取り戻せないというのに、福島をダシにして違法な金儲けをする輩がいる。怒りに燃えた西澤はこれを「被災地支援詐欺」と名付け、高齢者などから6億円超を集めたNPO法人の経営者を摘発しました。しかし、主犯格の男はこううそぶいたのです。
 「もっとデカイ獲物を狙いなよ。俺なんか金魚だぜ。大きなマグロがうようよしているぜ」と。
 福島にはカネが埋まっている・・・
 
 そしてこの後、麻布署で課長補佐になった酔っぱらいの清野が福島絡みの汚職事件を追い、二課の生き字引だったOBの大岩が知り合った関東電力(東電のこと)の補償担当チームの係長が、大岩に虚偽の賠償申請の相談をした後、元暴力団員に刺殺される事件が発生。この殺された関東電力の社員は被災者に真っ向から向き合う誠実な人間であり、実は自分の会社と福島原発の事故に関わる何事かを追っていたのです。
 その謎を解いたのが、若手キャリアの小堀でした。彼は着々と証拠を固め、真藤に話を上げるのです。
 それは、想像以上のデカイ獲物でした。海外の大手企業と中央官庁の絡む一大事件です。
 そして真藤筆頭警部。定年まであと6年。残念なことに前作で胃潰瘍と言われていた彼の体はガンに蝕まれ、余命が宣告された状態です。彼が入院していた間に、三知は大失態をしてしまいました。己の命が尽きる前に、やり遂げねばならないこと。それは、解体される前の三知の面子で、巨悪を暴き、かつての栄光を取り戻すことです。
 西澤、清野、大岩、小堀ら旧三知の捜査員全員が待っています、真藤のその一言を。
 「総員、着手せよ」

 東日本大震災から4年以上経過したわけですが、復興はまだまだのようです。
 そのことばかりに気を取られていましたが、よく考えると、こういう言い方はあれですが、確かにカネは埋まっていますよね。
 復興需要というのはある。そして本作で出た原発の廃炉費用、5兆円なり。
 5兆円ですよ。そら、どこで接待しようと金をばらまこうと元は取れますわな。
 廃炉利権という言葉が本当にあるのかどうか知りませんが、東電はほんと罪なことしたなあ。
 ま、いまさら言っても仕方ないんですが、いまさらに腹が立つね。
 で、本シリーズですが、次作があるならば、まず間違いなく真藤はいません。
 清野のグラビア好きのネタバレなど三知捜査員各自の過去を振り返ったような構成もありましたし、ひょっとしたら、これでこのシリーズは完という可能性も高いですね。


 
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