「ダイバージェント 異端者」ベロニカ・ロス

 海外SFの大作ですな。本作を含む三部作になっているようです。
 作者はまだ若い、1988年生まれのシカゴの女性です。
 物語の舞台はおそらく、三部作の冒頭である本作だけでは推測しかできませんが、近未来の地球かと思います。
 面白いかどうかはともかく、まあ、あらすじと感想をまじえながら振り返ってみます。

 都市の名前はわかりません。
 50名からなる評議会によって治められている、都市(あるいは街)が舞台です。
 あまり大きくは感じられません。列車が走っています。食糧は不足しがちのように書かれています。
 街はフェンスに囲まれて守られています。科学的水準は高度に思われます。
 一番、印象的であるのは、市民が5つの異なる行動規範、価値観によって区別されたグループに分かれていること。
 5つのグループとは、「勇敢」「無欲」「高潔」「平和」「博学」。これを派閥といいます。
 「勇敢」は、街を囲むフェンスを守る戦闘的な派閥。ピアスやタトゥーをいれた人間が多い。
 「無欲」は、自分よりも他人を優先する利己主義に則り、生活は地味で禁欲的。政治的なリーダーとなります。
 「高潔」は、何より正直であることを重んじる派閥で、法律部門を任されています。
 「平和」は、思いやりのある相談役、世話役となったり、芸術家もいます、争いを好まないやさしい人間の派閥。
 「博学」は、知識の探求に余念がなく、教師や研究者を輩出しています。
 厳密に言えば、社会から切り離された「無派閥」という、路上で貧しく暮らす落伍者もいるのですが、おおよそすべての市民がいずれかの派閥に属し、その繋がりは血より濃いと言われています。
 つまり、家族よりも派閥が居場所なのですね。上なのです。
 どうしてこんなことになったかというと、何十年も昔、祖先はこの世界で争いが絶えないのは、政治的なイデオロギーや宗教的な信念、人種、国家主義が原因でないと悟ったそうです。戦争はむしろ、人格的な欠陥に起因する・・・どんな形であれ人間は悪に染まりやすく、その邪悪性を排除するために、祖先は複数の派閥に分かれたというのです。
 よく、わからないねえ(笑) そして侵略を非難する者は「平和」に、無知を非難するものは「博学」に、不誠実な行為を非難する者は「高潔」に、利己主義を非難する者は「無欲」に、臆病を避難する者は「勇敢」に分かれたのです。
 とまあ、こんな具合の世界ですね。
 本作の主人公であるベアトリス・プライアー(トリス)もそうでしたが、16歳になると選択の儀式というのがあって、それまでは両親の派閥で暮らしていましたが、儀式では誰もがこの世界でどの派閥に属するか選ぶことができるようになっています。
 建前ではね。実際、この世界は、少しずつうまくいかないようになってきています。「博学」と「無欲」が仲が悪くなったりとか。
 だんだんと自分の派閥の美徳を誉めそやす一方で、よその派閥の美徳についてあれこれあげつらうようになってきた。
 昔と違うようになってきました。そしてベアトリスが選択の儀式を終え、彼女は「無欲」から転向して「勇敢」を希望したわけですが、その時分に、ついにこの世界の対立が爆発してしまうのです。「博学」が政治的リーダーであった「無欲」の抹殺を謀るのですね。しかし、「博学」は武力を持たない。そこで唯一の戦闘力である「勇敢」と手を組んだのです。

 ちょうど、ベアトリスは「勇敢」の正式なメンバーとなるためのテストを受けていました。
 10人しか受からないのです。落ちたら「無派閥」。格闘術や射撃の訓練の他、恐怖心を克服するためのセラム(導入剤)シミュレーションなど過酷な訓練をくぐり抜けた者だけが、誇り高い「勇敢」のメンバーになれます。
 ところが、この脳の知覚を利用したセラム・シミュレーションというのが、クセモノだったのですね。
 これは「博学」のリーダーであるジェニーンが仕組んだ罠。実は心を操るマインドコントロール兵器であったのです。
 セラムによって脳を操られた「勇敢」の戦闘員は、「博学」と「勇敢」の陰謀者の命じるままに動くのです。
 だがしかし! マインドコントロールを受けない人間の存在が知られていました。
 それが人呼んで「異端者(ダイバージェント)」。「異端者」は派閥のくくりに左右されない、超越した人間です。
 その存在は忌避され、正体が知れたら殺されると言われていました。
 そりゃ、為政者にとってはマインドコントロールが効かないからね・・・
 沈黙を破り、世界を救うために闘うことになった「異端者」であるベアトリス。そして同じく異端者でありながら「勇敢」のインストラクターであり、政治的権力者マーカスの息子であるフォー(トビアス)、ベアトリスの兄で「博学」に転向したケイレブ。彼らは、再び生きて相まみえることができるのでしょうか・・・
 勇敢であり、無欲であり、かつ賢く、かつやさしく、かつ正直でありたい・・・ダイバージェント。

 続編を読むかどうかわかりませんが、キャラをメモして備えておきます。
 ベアトリス(トリス) 両親が戦闘の過程で死に、トビアスとケイレブと共に、「勇敢」本部にあったコンピュータを破壊し逃げた。ウィルを射殺した。16歳。異端者。
 トビアス 政治的権力者マーカスの息子。トリスの恋人。異端者。18歳。
 エリック 「勇敢」のリーダー的存在。陰謀者。
 トーリ トリスが異端者であることを知っている「勇敢」の女性。
 ピーター トリスの同期。性格異常者。ラストでトリスに腕を撃たれるが死んでいない。
 クリスティーナ トリスの同期で仲良し。ウィルの恋人。ラスト不明。


 
 
 
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